小沼丹「春風コンビお手柄帳 未刊行少年少女小説集 推理編」幻戯書房 (2018/7).
図書館で借用.他に同時刊行の「お下げ髪の詩人 未刊行少年少女小説集 青春編」がある.
推理編は「モヤシ君殊勲ノオト」「春風コンビお手柄帳」ほかの3部構成.モヤシ君が探偵役の5編は旺文社 高校時代,シンスケ君がワトソン役・ユキコさんがホウムズ役の春風コンビ5編は旺文社 中学時代3年生に連載された.
中学生向けと高校生向けを,著者は意識的に区別していないようだ.
残り5編は必ずしも少年少女向きではなく,推理ものとも言い難い.
「青いシャツの死体」「消えた時計」「指輪」「秋の湖」あたりがミステリ色が強い.日常の謎ものばかりではない.でも殺人があったとしても表面を撫でるだけでそこに至る経緯に深入りすることはない.
「消えた猫」では母が溺愛する猫を,息子と女中が共謀して殺して埋めてしまう.現在では有り得ないはなし.北村薫は巻末エッセイで,こんなの有り か! 二度と読めないと書いている.ぼくは...こんなのも有りでいいとは思うが,小説としての出来は悪いと思う.
手すさび感はあるが,読後感は悪くないのは思った通り.川端康成「級長の探偵」にくらべればずっとまし.でも青春編は,もう読まないつもり.
装幀 緒方修一,装画 金子恵.カバー右上 縦書きの「小沼 丹」の文字は要らないと思う.