もともとは WEB 小説だが,4 作目までが角川文庫からシリーズ化されている.iPad で読んだのは無料の第 1 作だけだが,それなりに満足した.しかし紙の本で読んだら印象が変わるかもしれない.
語り手は高校生の「僕」だが,ヒロインは横柄な口をきく美人のお嬢様.彼女は骨フェチで,骨が欲しいために死体も好きらしい.豊富な法医学的な知識を活かして,探偵的に行動する.舞台は旭川.3編連作で,それぞれちゃんとしたミステリとしての骨格を持っているとは言えないが,そんなもんでしょう.おいしいものを食べる場面が多く,グロテスクな場面はない.ボク的ベストは降霊会を扱った「第参骨 薔薇の木の下」.
ビブリア古書堂...,珈琲屋タレーラン...,思い出のとき...などの,まんがカバーのシリーズ・ジャンルを何と呼ぶのだろうか.こうした中で櫻子さんものは平均点以上と思う.
タイトルは「櫻の樹の下には屍体が埋まつてゐる...」で始まる梶井基次郎の短編 (散文詩?) を下敷きにしているが,こちらも青空文庫でただで読める.
一段落したかと思ったら,自身の論文に疑義とかで理研STAP調査委員長が辞任を表明したらしい.
この一連の騒動は週刊誌のネタにはなったし,リケジョ割烹着,理研ノート,守護霊インタビュー等は,消費税で冷えている経済をささやかに暖めたとは思われる.首相は彼女に感謝すべし.
一億総科学評論家と化した感があり.それは悪いことではないだろう.小生も黙っていられなくて.3/23 の当ブログの他にも,二 三 FaceBook に書き込んだ.抜粋すると
4/10 *****
彼女はユニットリーダーだそうだが,他にメンバーはいないの? というのも疑問.メンバーは実験に参加したの? なぜ Nature に共著者として名前を並べないの? それともリーダーひとりだけのユニット?
さっさと割烹着を持って嫁に行けばいい…といった暴論が聞こえないのは,日本の社会が進歩した証拠かも.
4/15 TA さんへの「コメント」として*****
STAPは異分野ですが,私の周辺,つまり理工系人種と世間一般とは受け取り方に温度差があるようです.
問題点は 1)論文中の2枚の写真 2)内容そのもの の2点.英文のコピペは不問とされています.
1) 論文誌の読者でもたいてい文章は斜め読み.しかし写真は眺めます.今度の場合は例えて言えば,お見合い写真の1枚はレタッチされており,1枚は他人だった,という感じ.これに関わったのは論文の著者数人のうちで彼女だけというのもうなずけます.科学の世界ではこれは論外.
2) 内容 すなわちSTAPが存在するか? という問題は,論文の著者のひとりが実験条件に対して疑義を示している状態で,現在は藪の中.しかしSTAP存在が明らかになれば,1) の問題を吹き飛ばして,彼女の名前は残るでしょうから,それで良いのではありませんか?
この問題をなおさら不愉快なものにしたのは,会社(じつは独立行政法人)が最初にアイドル仕立てで彼女を宣伝に利用したからでしょう.
*****抜海はここまで.その後 4/16 に笹井氏が記者会見した.
問題の発端となった論文は
このサイトから自由にダウンロードできる.タイトルにさえ私には分からない単語があるが,そんなもんでしょう.
第2著者若山氏は実験もやったらしいが (教授というご身分なので実際に手を動かしたかどうかは疑問),小保方さんから受け取ったサンプルに疑問を呈している.第3著者笹井氏はその後の会見で「合理性の高い仮設」と言っているところを見ると,実験そのものを否定しているのだろう.この論文は写真の入れ替えだけでは済まないと,おふたりは判断しているということだ.
笹井氏が「実験ノートを見せなさい」などという失礼なことは言えない...と釈明している.子供扱いしないのはひとつの見識だが,それなら彼女に研究費や研究室や大きな自由度を与えた「任命責任」が問題だ.
理研の若い研究者を使い捨てにする政策に批判が集中している.でも,この政策は理研・ひいては研究の世界だけのことではない.世の中全体に余裕がなくなってきているのだから,理研のブラック企業化も仕方のないこと?
関係者が記者会見ばかりするのはいかにも劇場的.笹井氏の説明にはもっともと思える反論もある.理研あるいは然るべき学会が,このテーマで専門家を集めてシンポジウムを開催すべき.
小保方さんは,「百年後に役に立てば...」と言っていたが,それ (だけ?) は正しい認識ではないだろうか? これがすぐお金になると妄信して,秘密主義に走ったり,それを黙認したり・利用したりするのが馬鹿馬鹿しい.
岡崎 琢磨,宝島文庫 (2014/03).
シリーズ 3 作目だが,初めての長編らしい.小生は2作目はパスした.
舞台はバリスタのコンテストで,出場者 6 人.ここで豆がすり替えられるなどの競技妨害が起こるのだが,登場人物が多過ぎ.せっかく会場の平面図があるのだから,人物リストもほしかった.
ミステリとしては,手品ネタ応用のコーヒー容器とか,揺すると鍵が開いてしまう窓とか,かなり陳腐.
バリスタ大会なるものの種目・運営については知らなかったのでおもしろかった.このシリーズは日常のミステリ路線かと思っていたら,血も流れるし,けっこうどろどろした内容.シリーズ懸案と思われる,彼と彼女の関係も棚上げ.京都らしい雰囲気とも無縁.カバーのイラストも,「心を乱す... 」というサブタイトルも,このストーリーからは遠い.
新幹線の友にと購入した目的は一応果たした.
しかし実時間で進行した,STAP ミステリの方がよほど面白かった.
シリーズ 3 作目だが,初めての長編らしい.小生は2作目はパスした.
舞台はバリスタのコンテストで,出場者 6 人.ここで豆がすり替えられるなどの競技妨害が起こるのだが,登場人物が多過ぎ.せっかく会場の平面図があるのだから,人物リストもほしかった.
ミステリとしては,手品ネタ応用のコーヒー容器とか,揺すると鍵が開いてしまう窓とか,かなり陳腐.
バリスタ大会なるものの種目・運営については知らなかったのでおもしろかった.このシリーズは日常のミステリ路線かと思っていたら,血も流れるし,けっこうどろどろした内容.シリーズ懸案と思われる,彼と彼女の関係も棚上げ.京都らしい雰囲気とも無縁.カバーのイラストも,「心を乱す... 」というサブタイトルも,このストーリーからは遠い.
新幹線の友にと購入した目的は一応果たした.
しかし実時間で進行した,STAP ミステリの方がよほど面白かった.
ゴジラの公開当時は中学生.生意気盛りだから口では馬鹿にしていたが,正直言って白黒画面に最初に登場する場面は衝撃だった.怪獣映画は白黒の方が良いんじゃないかな,と今でも思っている.
伊福部昭作曲のゴジラのテーマは,ラヴェルからの借用だと,学生時代にクラシック通の友達に聞いたのを思い出して,YouTube を漁ってみた.
ピアノ協奏曲の第3楽章.萩原麻未さん (広島出身) が 2010 年,ジュネーブ国際音楽コンクールピアノ部門で優勝したときの動画.
33 秒あたりからそれらしくなってくる.好意的に解釈すればラヴェルへのオマージュかな? でも,STAP 問題みたいにネット告発が常識となっている現在だったら,どうだろうか,
このページ,およびその続きには,ゴジラ音楽の変遷が詳しく解説されている.われわれがゴジラのテーマと思っているものは,最初の映画ではゴジラを攻撃する自衛隊の進軍マーチだったのだそうだ.そう言われてみると,そんな気もしてくるから,我が記憶は頼りない.
大学で,いわゆるゴジラのテーマのジャズ化を「研究」中.
ジョン・カスティ,寺嶋 英志 訳 (2004/11).
これも古書市でゲットした.小生にとって古書を買うのは読むためであって,蒐集するためではない.最近は新本は書店に出現したかと思うとすぐ消えてしまうのが困る...とは言え,古書が安いのはありがたい.この場合,新本 2310 円のところが 700 円だった.
主な登場人物は,フォン・ノイマン,アインシュタイン,ゲーデル,オッペンハイマー,ストラウス.最後のストラウスは元銀行家で,原子力行政の方向を決めた.タカ派で学者たちとの間に軋轢がある.他にもパウリ,ベーテ,ウィグナー,ボームなど.詩人の T・S・エリオットもちょっと登場.すべて実在の人物だが,そこは小説 (著者によれば novel ではなく fiction) だから,実際のできごとが起こった時間を全部 1946 年春に寄せ集め,話をおもしろくしている.
路上でゲーデルがアインシュタインに教授昇進のために口をきいてくれと口説く場面から始まる.この昇進問題と,ノイマンのコンピュータを研究所に作るか,というふたつの現実的な問題が縦糸だが, 横糸はお茶を飲みながら,あるいはパーティでの物理学者・数学者たちの,知識の限界に関する高邁な哲学 ? 談義.教授昇進の布石としてオッペンハイマーがゲーデルに行わせる一般向け講義,研究所評議会でノイマンがPRの為に語るシミュレーションの可能性等,いかにも実況中継みたいな描写である.
量子論の不確定性を感覚的生理的に受け入れることができないアインシュタインの悩み.物理学者の核兵器への対応,さらにはオッペンハイマー夫人までネタにされている.
訳文は意図的にかもしれないが生硬で,原文を読んでいる気分に浸れる.
原題は The One True Platonic Heaven. この邦題はつまらない.
これも古書市でゲットした.小生にとって古書を買うのは読むためであって,蒐集するためではない.最近は新本は書店に出現したかと思うとすぐ消えてしまうのが困る...とは言え,古書が安いのはありがたい.この場合,新本 2310 円のところが 700 円だった.
主な登場人物は,フォン・ノイマン,アインシュタイン,ゲーデル,オッペンハイマー,ストラウス.最後のストラウスは元銀行家で,原子力行政の方向を決めた.タカ派で学者たちとの間に軋轢がある.他にもパウリ,ベーテ,ウィグナー,ボームなど.詩人の T・S・エリオットもちょっと登場.すべて実在の人物だが,そこは小説 (著者によれば novel ではなく fiction) だから,実際のできごとが起こった時間を全部 1946 年春に寄せ集め,話をおもしろくしている.
路上でゲーデルがアインシュタインに教授昇進のために口をきいてくれと口説く場面から始まる.この昇進問題と,ノイマンのコンピュータを研究所に作るか,というふたつの現実的な問題が縦糸だが, 横糸はお茶を飲みながら,あるいはパーティでの物理学者・数学者たちの,知識の限界に関する高邁な哲学 ? 談義.教授昇進の布石としてオッペンハイマーがゲーデルに行わせる一般向け講義,研究所評議会でノイマンがPRの為に語るシミュレーションの可能性等,いかにも実況中継みたいな描写である.
量子論の不確定性を感覚的生理的に受け入れることができないアインシュタインの悩み.物理学者の核兵器への対応,さらにはオッペンハイマー夫人までネタにされている.
訳文は意図的にかもしれないが生硬で,原文を読んでいる気分に浸れる.
原題は The One True Platonic Heaven. この邦題はつまらない.
これは角川文庫版のカバー.こうしてみると「二流の人 = 白痴」だが,そうではない.カバーデザインも二流の人とは関係がない.
角川版は絶版らしいので (本当はは絶版でなくても有料なので),「二流の人」だけを青空文庫(2007)でダウンロードした.単行本の刊行は 1947 年 九州書房.
アマゾンの内容紹介によれば「すぐれた知略を備えながら二流の武将に甘んじた黒田如水の悲劇を描く」.
小説というより,著者の官兵衛以下の戦国武将像や歴史観を講釈口調で聞かされている感じ.マンガの筋書きのようでもある.「第一話 小田原にて」「第二話 朝鮮で」「第三話 関ヶ原 」という構成.読み進むにつれ,どんどん主人公の二流ぶりが冴えてきて,かわいそう.
主人公のカサ頭・チンバという外見からして,NHK 大河ドラマに水をさす内容...と言いたいが,大河ドラマの方は視たことがありません.
角川版は絶版らしいので (本当はは絶版でなくても有料なので),「二流の人」だけを青空文庫(2007)でダウンロードした.単行本の刊行は 1947 年 九州書房.
アマゾンの内容紹介によれば「すぐれた知略を備えながら二流の武将に甘んじた黒田如水の悲劇を描く」.
小説というより,著者の官兵衛以下の戦国武将像や歴史観を講釈口調で聞かされている感じ.マンガの筋書きのようでもある.「第一話 小田原にて」「第二話 朝鮮で」「第三話 関ヶ原 」という構成.読み進むにつれ,どんどん主人公の二流ぶりが冴えてきて,かわいそう.
主人公のカサ頭・チンバという外見からして,NHK 大河ドラマに水をさす内容...と言いたいが,大河ドラマの方は視たことがありません.
中央公論社(1937/12).
復刻 ほるぷ出版 (1976/4).
箱入りハードカバーが古書市で500円だったが,持ち帰るのに重くて閉口した.この種の復刻版をよく二束三文で見かけるが,どうなってるんだろう.
少年少女小説集とあるが,表題作を除く8編は少女小説.
その表題作を,ミステリを期待して読んで「なんだこりゃ」.理科の実験道具を生徒が壊したらしいと,先生が級長に犯人探しを命じる.このプロットに腹が立った.生徒を何だと思ってるんだ! 犯人は校長だった,めでたしめでたしというのも人を馬鹿にしている.
でもこれがいちばん出来が悪いようで,あとは可愛い小説で気持ちよく読めた.たいてい学校が舞台で,先生がたくさん登場するが,みな女生徒にはやさしい.最後の「学校の花」はほかの4-5倍の長さがあるが,ストーリーは陳腐.
装幀・絵 深澤章三・紅子.旧かなのルビとか,右から左への横書きとか,懐かしい.男子生徒を「男生」などと略すのが変な感じ.
原本の定価は二円五十銭.いまの感覚では五千円くらいかと思う.でも庶民の所得は低かったと思うので,良家の子女だけが手に出来る本だったのだろう.
大阪児童国最文学館のホームページ,日本のこどもの本100選,戦前篇には,『名著複刻日本児童文学館第二集解説書』の引用として,この復刻の出版依頼に川端は「いやです」と返事し『あなたもあの内容をいいとは思はないでしょう」と述べた,とある.
ではなぜ復刻したのかな?
復刻 ほるぷ出版 (1976/4).
箱入りハードカバーが古書市で500円だったが,持ち帰るのに重くて閉口した.この種の復刻版をよく二束三文で見かけるが,どうなってるんだろう.
少年少女小説集とあるが,表題作を除く8編は少女小説.
その表題作を,ミステリを期待して読んで「なんだこりゃ」.理科の実験道具を生徒が壊したらしいと,先生が級長に犯人探しを命じる.このプロットに腹が立った.生徒を何だと思ってるんだ! 犯人は校長だった,めでたしめでたしというのも人を馬鹿にしている.
でもこれがいちばん出来が悪いようで,あとは可愛い小説で気持ちよく読めた.たいてい学校が舞台で,先生がたくさん登場するが,みな女生徒にはやさしい.最後の「学校の花」はほかの4-5倍の長さがあるが,ストーリーは陳腐.
装幀・絵 深澤章三・紅子.旧かなのルビとか,右から左への横書きとか,懐かしい.男子生徒を「男生」などと略すのが変な感じ.
原本の定価は二円五十銭.いまの感覚では五千円くらいかと思う.でも庶民の所得は低かったと思うので,良家の子女だけが手に出来る本だったのだろう.
大阪児童国最文学館のホームページ,日本のこどもの本100選,戦前篇には,『名著複刻日本児童文学館第二集解説書』の引用として,この復刻の出版依頼に川端は「いやです」と返事し『あなたもあの内容をいいとは思はないでしょう」と述べた,とある.
ではなぜ復刻したのかな?
トカゲは壁を登ることができないが,ヤモリは登れるのだそうだ.今年も暖かくなったと勘違いしてか,網戸の向こう側に出現したのはヤモリということになる.勝手にアニエス君と呼んでいたが,アニエスベーのロゴの方はトカゲとのこと.
絵のアニエス君は毎年現れるが,何代目だろうか.
オリーブという色の絵具をつかってみた.
reading
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