絲山 秋子「神と黒蟹県」文藝春秋 (2023/11).
出版社による長ーい紹介
*****「黒蟹とはまた、微妙ですね」
微妙、などと言われてしまう地味な県は全国にたくさんあって、黒蟹県もそのひとつだ。
県のシンボルのようにそびえたつのは黒蟹山 (すこし省略)。県庁や裁判所を有し、新幹線も停まる県のビジネス拠点の役割を担う紫苑市と、かつての中心地で歴史的町並みや重要文化財・黒蟹城を擁する灯籠寺市とは (省略) 仲が悪い。 (省略) 巨大な敷地を持つショッピングモールの先には延々と荒れ地や牧草地が続き、廃業して解体されて (省略) 今はもう (省略) どこだかわからない百貨店に由来する「デパート通り」はいつまで経っても改称されず、同じ姓を持つ住民ばかりの暮らす村がある。
微妙、などと言われてしまう地味な県は全国にたくさんあって、黒蟹県もそのひとつだ。
県のシンボルのようにそびえたつのは黒蟹山 (すこし省略)。県庁や裁判所を有し、新幹線も停まる県のビジネス拠点の役割を担う紫苑市と、かつての中心地で歴史的町並みや重要文化財・黒蟹城を擁する灯籠寺市とは (省略) 仲が悪い。 (省略) 巨大な敷地を持つショッピングモールの先には延々と荒れ地や牧草地が続き、廃業して解体されて (省略) 今はもう (省略) どこだかわからない百貨店に由来する「デパート通り」はいつまで経っても改称されず、同じ姓を持つ住民ばかりの暮らす村がある。
つまり、わたしたち皆に馴染みのある、日本のどこにでもある「微妙」な県なのだ。
この土地に生まれ暮らす者、他県から赴任してきた者、地元テレビ出演のために訪れた者、いちどは故郷を捨てるもひっそり戻ってきた者、しばしば降臨する神(ただし、全知全能ならぬ半知半能の)。そういった様々な者たちのささやかでなんてことないが、ときに少しの神秘を帯びる営みを、土地を描くことに定評のある著者が巧みに浮かび上がらせる。*****
8編の連作.黒蟹の県名こそあり得ないが,出だしに登場するのはどこにでも居そうな人たち.しかし2編目・第4編目と「神」が現れ,次第に連作の常連化し,物語もねじれてくる.
最後の「神と提灯行列」から4行ほどを縮めて引用すると*****
傍に緑色のワンピースを着た女が立っているので,神が小声で「あの,もし」と囁くと,にこりともせずに「妻である」と答えた.*****
この妻の正体は ?
冒頭に海に面し,宝来県・棚元県に囲まれた黒蟹県り地図.各編の末尾には「黒蟹辞典」.見出し語に続く,四角に「架」は架空のもの,四角に「実」は実在するもの... などと遊んでいる.
ぼく的ベストは「赤い髪の男」.
白けつつ楽しんで書いているらしい著者のスタンスが良い.06 年の芥川賞受賞作とやらも読んでみようか.
図書館で借用した.
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