宮田 珠己,ちくま文庫(2015/1).
この表紙カバーのデザインではケバい紫の使い方に目を奪われてしまう.しかし本文を読んでからなら,階段が右に傾いていることに目が行く.
斜面を這い上がるように建増しに建増しを重ねた温泉旅館 (中には安政年間からというのも...) では,とんでもないところに階段があり,廊下は広くなったり狭くなったりしながら,鋭角・鈍角に折れ曲がり,たやすく迷子になって自分の部屋に戻れない.その自分の部屋も不等辺四角形だったり.この本は,タイトル中の「四次元」の文字も示しているように,こうした迷路建築がテーマである.
著者の文章は面白いが,図面は下手くそで,各章に挿入されたイメージ図 (旅館の平面図) はさっぱりわからない.まあ四次元を二次元のペーパー上に再現するのが不可能なのは解るけれど.
ピントが合っているのにボケた感じがする写真は悪くない.
著者は子どものときから風呂嫌いで,「わざわざ服を脱いだのに,あがってからまた着るのが,強制労働キャンプ的な徒労感が漂う」というところに激しく共感した.それもあって「いくぶん自嘲的な気分で書きすすめていたこの温泉紀行だった」,しかし「出来上がってみると,少々枯れた具合が,今の自分にぴったり」だそうだ.
別府温泉の「地獄蒸し」で自炊ができる「貸間旅館」が面白そう.露天風呂の底に落ち葉が溜まってチクチクするとか,サルと混浴してサルのウンチを見つけてしまうところとかが印象に残る.
旅館の名前はアルファベットの頭文字だが,ネットでたやすく同定できそう.ちなみに表紙カバーは伊豆長岡 N 荘こと南山荘.
古書で購入.でも単行本刊行もまだ 2011 年なので,大部分の建築はまだ残存していると期待する.
この表紙カバーのデザインではケバい紫の使い方に目を奪われてしまう.しかし本文を読んでからなら,階段が右に傾いていることに目が行く.
斜面を這い上がるように建増しに建増しを重ねた温泉旅館 (中には安政年間からというのも...) では,とんでもないところに階段があり,廊下は広くなったり狭くなったりしながら,鋭角・鈍角に折れ曲がり,たやすく迷子になって自分の部屋に戻れない.その自分の部屋も不等辺四角形だったり.この本は,タイトル中の「四次元」の文字も示しているように,こうした迷路建築がテーマである.
著者の文章は面白いが,図面は下手くそで,各章に挿入されたイメージ図 (旅館の平面図) はさっぱりわからない.まあ四次元を二次元のペーパー上に再現するのが不可能なのは解るけれど.
ピントが合っているのにボケた感じがする写真は悪くない.
著者は子どものときから風呂嫌いで,「わざわざ服を脱いだのに,あがってからまた着るのが,強制労働キャンプ的な徒労感が漂う」というところに激しく共感した.それもあって「いくぶん自嘲的な気分で書きすすめていたこの温泉紀行だった」,しかし「出来上がってみると,少々枯れた具合が,今の自分にぴったり」だそうだ.
別府温泉の「地獄蒸し」で自炊ができる「貸間旅館」が面白そう.露天風呂の底に落ち葉が溜まってチクチクするとか,サルと混浴してサルのウンチを見つけてしまうところとかが印象に残る.
旅館の名前はアルファベットの頭文字だが,ネットでたやすく同定できそう.ちなみに表紙カバーは伊豆長岡 N 荘こと南山荘.
古書で購入.でも単行本刊行もまだ 2011 年なので,大部分の建築はまだ残存していると期待する.