先日有志で,インド文献学?がご専門で,音楽にも造詣が深いO崎先生のお話をうかがう機会があった.
(I)おはなしから,音律に関する部分を要約すると
a) アラブの影響を受ける以前のインドの音律は22である.
b) これから(最低音を0とすると),0,4,7,9,13,17,20,(22)番目の音をひろうとシャドジャという7音階になる.まずこの音階ができた.
c) 0,4,7,9,13,16,20,(22)番目の音をひろうとマッドヤマという7音階になる.シャドジャの5番目の音を1単位下げて,この音階ができた.(ここでは以下ふたつの音階を「シャド音階」「マッド音階」という.)
d) ただし
1) 22分割といっても,1オクターブを分割したものかどうか分からない.また
2) 22分割は等分割かどうか (22音律は平均律かどうか) も分からない...
とのことである.
(II) そこで上記のふたつの疑問には目をつむり,計算機で,1 オクターブを 22 等分割して,そこから 7 音階を抽出して聴いてみた.結果は,
a) マッド音階はほとんど純正律のドレミファ...である,「ほとんど」と言うのは,12音平均律よりも純正律に近いと言う意味である.ただしよほど耳を澄まして聴かないとシャド音階とマッド音階の違いはわからない.
b) ぼくの耳では,22音律の,隣り合う音の高さの違いは定性的にはわかるが,定量的にはわからない.
計算機で曲も演奏してみたので,いずれ公表したい.
(III)まず, (I)d)のふたつの問題に関する個人的見解だが,
22の幅はやはりオクターブであろう.
また22を分割するとすれば,まず平均に分割せざるを得ないだろう.分割幅に大小を付けることは,測定器でもないと不可能に近い...もっとも,昔のひとは平均的に,小生よりずっと音感が鋭かったとすればはなしは別だ.また弦楽器のばあいは,いったん調弦してから,より響きが良くなるように「微調」することはあり得る.
つぎに,トップのシャド音階ではなく,2番手のマッド音階がドレミファ...に合致するというのはおもしろい.O先生のおっしゃるように,シャド音階の方はディスジャンクト・テトラコルドという民族音楽音階に固有の構造を持っている.まずシャド音階ができ,これがマッド音階に改良されたのだろう.ただし,インドではマッド音階のはシャド音階ほど生き延びなかったということである.
音楽ではオクターブを12より大きい数で分割した音律を広義の微分音律という.狭義の微分音律は12音平均律の半音をさらに2分割した24音平均律だ.
いっぽう,ハモることを評価の基準とすると,音律には最低音との周波数比が簡単な整数比に近い音が多く含まれるほうが良いことになる.
22音平均律と24音平均律とを比べると,このハモり基準では22音平均律に軍配が上がる.24音平均律では12音平均律同様,短3度,長三度がきたないが,これが22音平均律ではきれいになる.