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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

妻と私

2015-09-30 08:55:15 | 読書
妻がブックオフ階下の古着リサイクル売り場からなかなか出てこないので,
私は本来の古書売り場で 200 円の散財.

江藤淳「妻と私」文藝春秋(1999/7).

発行時にこの本を意識したことはなかったが,手にとって装幀 (中島かほる,装画は渡辺明) に惹かれた.ジャケ買いみたいなものだ.薄い本で,帰りの電車で読んでしまった.

「BOOK」データベースより*****
「治癒不能のガン、三ヵ月の命」宣告はある日、突然下った。死と競うように、付き切りの看病が続く。告知は? 介護は? 苦悩の日々と、その合間に訪れる甘美な思い出。ついに妻を看取った時、自らも病魔に冒され、死の淵に立つ。生と死の深淵を見据えた感動的作品。*****

あとがきによれば,著者が書いた文章のなかで,これほど短期間でこれほど大きな反響を生んだものはないそうだ.掲載された文藝春秋の読者の年齢層にあったテーマだったのだろう.歳をとると次第に介護と闘病を話題にするようになる.嫌だ嫌だと言いながら,実はこうした話を聞くのも読むのも好きになるのだ.

著者には威張ったことばかり書く,いけ好かないお方という印象を持っていたが,ここでは素直な文章.Wikipedia によれば,夫人の死後気力を失い,最後は自らを「形骸」とし (この意味するところ不明) 本書刊行と前後して,自宅で自殺した.子供はいない.理解できる選択
しかしこれと逆の,夫に死なれた妻が自殺という例はあまりないようだ.
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ご隠居さん

2015-09-29 08:36:33 | 読書
野口卓「ご隠居さん」文春文庫(2015/4).

「BOOK」データベースより
*****
腕利きの鏡磨ぎである梟助じいさんは、落語や書物などの圧倒的な教養があり、人あたりもさわやか。さまざまな階級の家に入り込み、おもしろい話を披露し、ときにはあざやかに謎をときます。薀蓄は幅広く、情はどこまでも深い。このじいさんの正体やいかに…。江戸の“大人”を描く、待望の新シリーズ誕生!
*****

6編から成り,最初の2編「三猿の人」と「へびジャ蛇じゃ」は落語の解説みたいだったが,尻上がりにおもしろくなった.
次の「皿屋敷の真実」では梟助じいさんの話の聞き手と,講釈の登場人物が重なる.「熊胆殺人事件」は文字通りミステリで,「椿の秘密」は強いて言えば SF ファンタジー? 

最後の「庭蟹は,ちと」は人情噺ふうで,このじいさんの正体が明かされる. 「熊胆...」は,じつはあまり面白くなかったのだが,この中の話し相手である旗本の推理が「庭蟹...」でものを言う.
正体をバラしてシリーズ化が可能なんだろうかと思うが,書店には2冊目「心の鏡」が出ていた.

文庫書き下ろし.解説 柳家小満ん.参考文献リストあり.

著者は 67 歳で「軍鶏侍」で小説家デビューしたとのこと.
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調性音楽を読む本

2015-09-28 07:52:12 | 新音律
アンリ・ゴナール,藤田茂 訳「理論・方法・分析から 調性音楽を読む本」音楽之友社 (2015/8).

出版社による内容紹介
*****
フランスの学問的伝統に立ち、「調性音楽とは何か」を読者とともに見つめ直す思索の書。これから調性音楽の思索に入ろうとする者が、是非、知っておくべき基本的事項(音程と協和、長調と短調等々)が綿密に再検討され、そうした知識を踏まえ、ベートーヴェン、ショパン、シューマンの楽曲について、論理的・分析的探求がスリリングに展開される。読者は本書を通じて、感覚的理解と知的理解が橋渡しされる特権的な場所としての音楽、そしてそれを可能にする音楽の理論的・分析的考察の重要性を再認識するであろう。かのデカルトを生んだ国の著者ならではの、「数字付け」の規則の明晰な説明、反行短調から見た「ナポリの六」の斬新な解釈など、読みどころ満載。わたしたちにとって最もありふれた音楽でもある調性音楽を正面から取り上げた本として、音楽に関心のあるすべてのかたに自信をもってお勧めする。
*****

ラモー以前は理論が先行していたが,ラモー以降は理論が実践を追いかけた,とか...
調性の存在自体が問題視されるに至ってはじめて理論も活性化した,とか...
シェーンベルクの無調音楽は調性を破壊したと見ることができるが,調性を拡大・拡張したものと見ることができる,とか...

こうした指摘が「ご高説」にとどまらず,(ある程度だが) 楽譜とともに説明されている.名曲も登場するので,Youtube で楽再生しながら,行きつ戻りつして読める.

あとがきにも書いてあるように,原題 Introduction a la musique tonale を直訳すれば「調性音楽入門」だが「...を読む本」は名訳だ.

ジャズの人はこういう理屈が好きだ.しかし感じるのは,ジャズと正統音楽との言葉の違い.ちゃんと音楽を勉強してからジャズに入った人には問題ないが,そうでない人のためにジャズ語に本書を「翻案」し,ついでに楽譜もスタンダードで置き換えたら,読者層が広がるのに.
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ジャダジャダ ジンジンジン

2015-09-27 08:27:47 | ジャズ


学齢前期は Occupied Japan だった.Ja-Da はその頃かもうちょっと後で覚えたようだ.サビの英語はさっぱりわからなかったが,大半は「ジャダジャダ ジンジンジン」を繰り返していれば良い.
カウント・ベイシーが良くやる曲と知ったりのはずっと後のことで.記憶にあるイメージは動画のイーディ・ゴーメの歌唱に近い...ただし占領時代には彼女はまだデビューしていなかったかもしれない.

Wiki で調べたら,1918 年の曲だった!!

Ja-Da を思い出したのは,Cannonball の Things are getting better が,昔聞いた曲と似ていると思ったから.Cannonball Adderley (as) の他には,Milt Jackson (vib), Wynton Kelly (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds).



Things are getting worse の時代だけど,能天気にやりましょう.
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天井の光と影

2015-09-26 08:40:32 | 科学


もと教師としては「この現象を説明せよ」という問題を出すことを想像してしまう.
正解は/採点は...答案を見てから考えるのだ.
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難民文学「さようなら、オレンジ」

2015-09-25 08:45:21 | 読書
岩城けい「さようなら、オレンジ」 ちくま文庫 (2015/9).

出版社からのコメント
******
異郷で言葉が伝わること―
それは生きる術を獲得すること。
人間としての尊厳を取り戻すこと。

オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の子どもを育てている。
母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。
そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。
******

大江健三郎賞受賞...つまらないかな (大江文学を面白てと思ったことがない),でも太宰治賞受賞なら面白いかも,と思って,上記カバーの惹句も読まずに読んだら,面白かった.ちょっとミステリ的で,舞台がオーストラリアというのがなかなか分からない.「ハリネズミ」が日本人だというのもすぐには分からない.最後の手紙に,サリマは物語の中でハリネズミが与えた名前だと書いてあったりする.
出だしは純文学的だが,朝ドラ的にストーリーが展開する.
女性の間の友情を垣間見る感じで,素直に読めば素直に感動できる.

カバー折り返しのプロフィールによれば,著者は在豪 20 年だそうだ.ハリネズミは著者の分身だったと納得.
テーマは「異郷で言葉が伝わること」らしく,母語 (母国語という言葉はここでは使われていない) が日本語であるハリネズミの場合はうまく描かれているが,アフリカに母語を持つサリマの場合はイマイチかもしれない.

日本で難民を受け入れるといっても,やはり言葉の壁が厚くて高いだろう.
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陶老師の話,山賊の話

2015-09-24 06:51:34 | エトセト等

大学院学生として在籍のまま2年ほどアメリカの研究所で過ごしたことがある.このとき直接面倒を見てくださったのが,中国人の陶老師 Dr. Tao であった.30 代前半,若くても先生は老師なのだ.
初めてあったときは無愛想だったが,結局,とてもよくしてくださった.
何人かでお茶を飲みながら話しているとき「子供のとき日本軍が来たので逃げ回った」と口にされたことがあった.でも日本人の存在を意識されて,話題はすぐに変えられた.


辻まことの「山賊の話」はこうした件を日本軍の立場から書いた文章である.軍といっても現地人から見れば,鉄砲以外は着の身着のまま,食料 (酒も) を行く先々のから略奪し,それ以上の悪行もしほうだいの山賊である.以下は引用.語り手は山賊 こと 辻まこと.場所は中国大陸のどこか.

..... 13,4 歳の女の子が弟と見える男の子の左腕を川の水に浸して洗っている.傷の手当でもしているようだった.その女の子がフト後ろを振り返った.いままで,そんな寒い目つきで見られたことはなかった.
昔むかし鬼たちが村をおそってどんな凶暴な振る舞いをしたか? 一言一句をおろそかにせずに語り伝えるであろう民話の創始者の顔つきがそこにあった.二百年,三百年私たちの所業はここの人々の子々孫々に語り継がれるに違いなかった......
矢内原伊作編「辻まことの世界」みすず書房 (1977).初出は月刊誌「アルプ」1969-1971 連載.


この女の子と,そのくらいの年齢だった陶老師が重なる.
戦後アメリカで研究者に成るまでの道のりが老師を大人にしたのだろう.葛藤はあったはずだが,日本人 = 山賊という思いは置いといて,初めて離日して心細い日本人学生に親切に接し,帰国後は小生のつたない草稿を流麗な英文に直し,こちらを筆頭著者にして学会誌に発表することまでしてくださった.

いろいろあって,当方はその後進路を変えてしまい,当時の研究をその後の経歴に役立てることはできなかった.
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歌川国芳展

2015-09-22 21:42:17 | お絵かき


広島県立美術館.

これはチケットにもデザインされていた,宮本武蔵鯨退治之図.何かの本で見たときは屏風にでも描いてあるものと思っていたが,実物は 36.8 × 78.0 cmと,A3 をひと回りかふた回り大きくした程度.浮世絵3枚分らしく,意外に小さい.背中に虫みたいに留まっている武蔵を,優しい目をした鯨が圧倒.ヒレがネクタイをひらひらさせているように見えるのがおかしい.
ストーリーを気にしなければ,とても美しい絵だ.

武者絵,役者絵,美人画などに分類されているが,こうした範疇に入らない,下の CM 動画の,人体を集めて顔を作った「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」や,だまし絵シリーズ,一連の猫の擬人画がやはり面白い.

猫は現代の猫と変わらないはずだが,猫の描き方は現代と違い,可愛くない.美人画の描き方も現代と違い,セックスアピールがない.猫はこういうもの,美人はこういうものというお約束が,時代とともに変化したためであろう.

前期後期で展示を一部入れ替えるとのこと.
混んでいた上に,小さい絵ばかり.浮世絵はもともと印刷だから (最後の部屋に数枚の肉筆画もあるにはある),これなら本で見ていたほうが賢明だったかな.

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久生十蘭「キャラコさん」

2015-09-20 16:54:28 | 読書
本格ミステリ作家クラブ「ベスト本格ミステリ2015」講談社ノベルズ には評論もふくまれていた.千野帽子「ゆるいゆるいミステリの,ささやかな謎のようなもの」である.ここで,久生十蘭「キャラコさん」が紹介されている.

ヒロインが質実剛健な優等生タイプ.千野さんの言葉を借りれば「21世紀前半の日本に住んでいると,もはや出会えないタイプの登場人物設定なので,あまりに珍しくて,眩しいくらい」.

キャラコはインド木綿で,彼女はキャラコのあだ名は下着を愛用していたため.本当は剛子と書いて「つよこ」と読む.父親が教育方針を反映させた名らしい.
11編の連作短編.ミステリ風味おとなのメルヘン.第1作でキャラコさんはいきなり大金持ちになってしまう.最後に登場人物が全員揃って大団円.久生十蘭はこの「キャラコさん」で1939年第1回新青年読者賞を受賞とのこと.
昭和14年に書かれたので愛国精神が強調されているが,主な登場人物が上流社会に属しているという設定で,バカンス場面が多く,かなりのんびりした雰囲気だ.

冒頭の写真は1939年の日活映画のスチール写真で,キャラコさん役の轟夕起子.16トンには太ったおばさんというイメージだが,このころの轟さんは健康美人だったのだろう.左は父親役の山本嘉一.

青空文庫でタダで読めた.

ググったら,現在もキャラコさんファンは多いようだ.NAKACOこと中村幸司さんの「勝手に挿画」には3枚の絵がテキストとともに鑑賞できる.YUCHANのブログ「うつつにぞ見る」にはキャラコさんの肖像画 (ポスター? 本のカバーデザイン?)がある.
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課外授業 ようこそ先輩「お笑いアーティスト 鉄拳」

2015-09-20 08:07:10 | お絵かき
「ようこそ先輩」は有名人が卒業した小学校で授業をする番組で,これは一週間ほど前の放映.
お笑い芸人・鉄拳さんだが,今ではパラパラマンガが専業化しているらしい.この授業ではお笑いなし,もっぱらパラパラマンガ伝授に終始.メイク (この日は額にセンパイの文字) からは想像できない真面目な語り口.前から・横から・後ろから描くことで人物が動きだすことを,担任の先生をモデルに描いてみせるなど,教え方もうまい.もちろん生徒も大喜び...この番組を見ていると,ちょっと先生 (先輩) と生徒がミスマッチかなと思われることもあるのだけれど.
小学校で教科書の余白をパラパラで汚したクチなので,興味深く視聴した.

子供達の作品の中では,「いじめ」で涙の中に絵が描かれ,そこから次の場面が展開するという高級技法が使われていた.
びっくりしてひっくり返るときの擬音 (擬声?) は「ズコーッ」なんですね!

最後に先生制作になる,子供達全員が登場するパラパラマンガで締めくくった.原画はモデル一人一人に進呈されたが,通信簿を渡す場面を連想してしまった.
このクロージングをもう一度見たいのだが,下には鉄拳さんの初期のを...いまの作画はもっと流麗になっている.



安倍内閣の宣伝機関化しているとか,そのくせ会長の給料は総理大臣より高いとか,けったくそ悪い NHK だが,作る番組は金も手間もかかっていることを認めざるをえない.


いまのところ,この番組の大部分はdailymotion http://www.dailymotion.com/video/x36e2a0_課外授業-ようこそ先輩-センセイの頭の中-15-09-11_tvで視聴できる.
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