Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

藤沢 周「武蔵無常」

2017-01-31 09:05:05 | 読書
雑誌「文芸」に発表された純文学 (らしい).著者は藤沢周平とは別人の芥川賞作家...ということにも無知なまま図書館で借用.

Amazon の内容(「BOOK」データベースより)*****迷いと悔いに揺らぐ宮本武蔵の、もうひとつの巌流島。芥川賞作家が迫る、殺人剣の真髄!****

吉川英治の「宮本武蔵」を読んだのは半世紀以上前のこと.重苦しい精神訓話みたいだと思いながらも,若かったのでかしこまって読んだ.あの小説の延長上にあるように思えたが,むしろアンチテーゼというのが適当かもしれない.
ときどきドストエフスキーに話が飛んだりするが,新感覚とは言いかねる.

巌流島の前日からはじまり,小次郎との決闘のおわりまで.武蔵は一乗寺で吉岡伝七郎を切ったことがトラウマになっている.それをネタに,やはり武蔵が撲殺したはずの老僧が,蟻にのりうつったり女にのりうつったりして,武蔵を翻弄する.しかしなんだかわからないうちに夜が明ける.最後の決闘場面には迫力があった.
吉川英治の佐々木小次郎はプレイボーイで,求道者武蔵との対比が鮮やかだったが,こちらの小次郎は脇役に徹していて影が薄い.エンタメと純文学の違いというものだろうか.

著者は剣道4段とのこと.

goo 辞書によれば,「無常」とは,「仏語.この世の中の一切のものは常に生滅流転 (しょうめつるてん) して,永遠不変のものはないということ.特に、人生のはかないこと.また,そのさま.」だそうだ.
いっぽう「無情」は,「いつくしむ心がないこと.思いやりのないこと.また,そのさま.」だそうだが,この小説のタイトルとしては,どちらでもよさそう.
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二紀展広島巡回展

2017-01-30 07:52:52 | お絵かき



詳細はhttp://home.hiroshima-u.ac.jp/hkochi/entry6.html
こちらは J 子の作品."JAZZ".

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朝のフルート・トリオ

2017-01-29 09:50:13 | ジャズ
夜は出かけないことに決めたら,月例の学内カフェが唯一のライブ見聞の場となってしまった.土曜日の昼前 1100-1200 という微妙な時間帯だが,聴きに来る常連さんもそれなりに...

この日はフルート・トリオ.ドラムレス・トリオの特徴とか,フラット6つとか,おとなっぽい MC はさすが院生.しゃべりすぎ? は曲が少ないためかな...と思ったらそうではなく,終了予定時間を過ぎてしまい,聴く側では一曲得した感じ.

季節外れにポカポカと暖かい朝の日差しのなか,フルートによる Round Midnight は別な曲みたいだった.
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芥川症

2017-01-27 09:00:53 | 読書
久坂部 羊,新潮社 (2014/6)

2016/12 に文庫入り.書店で平積みになっていた.

 病院の中,他生門,耳,クモの意図,極楽変,バナナ粥,或利口の一生.

という「もくじ」だけを立ち読み,後日図書館で単行本を借用した.

各短編のタイトルと,浅賀行夫によるカバーイラストは星5つ,内容は星3つ.要するにパロディとして評価する,ということ.

*****名作が現代の病院に蘇る.毒とユーモアで生老病死の歪みを抉る超異色医療小説.*****「BOOK」データベース

著者は大阪大学医学部卒.外科医,麻酔科医を経て,外務省・在外公館にて医務官を務めたとあるが,医者も医学も信用していないようだ.

冒頭の作では,父の死因を求めて食い違う医師・看護師の証言に翻弄され,さまよう息子.まさに「病院の中」は藪の中.
「或利口の一生」は癌患者として身につまされるところがある.ここでは著者の本音が伺えるようでもあるが,信用できない感じもする.
以下,続けて読むと嫌な気分からしばらく抜け出せない.「耳」「極楽変」あたりは特に苦手.中では「バナナ粥」がややハッピーで,オチも効いている.
「クモの意図」では冒頭,落語のかたちで芥川の同音の作品につっこみをいれているが,ご幼少のみぎり,童話として読んだときに同じ疑問を感じたのを思い出した.しかし後半のドタバタはいただけない.「他生門」のストーリーも腹黒キャラの落語家が噺すのに良さそう.



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金属疲労ならぬプラ疲労

2017-01-26 09:11:08 | エトセト等


写真左のスタンドは衣類の一時置き場.部屋整理の救世主.20 年近く前にイレクター・パイプを組み合わせて作ったものだが,左右の高さが違うのが気になっていじったら,高さ調節のひとつが壊れてしまった.

楽譜スタンドと同じ原理.右は垂直な柱の接続部分で,鞘を (写真の状態から) ずり上げて,右下小写真のネジで内側のパイプに固定していた.しかしごらんのように鞘のネジ受けが,がばっと壊れて落ちてしまったのだ.小写真にはナットが写っているが,これは本来反対側受け側にあったのが,そちらが壊れてこちらに残ったもの.
ネジ受けはピカピカしていたが,断面を見たらプラスチック.金属のネジとナットを埋め込んだアートな作品である.金属疲労ならぬプラ疲労で壊れたのであった.

しかし,これだけ持てば文句は言えない.おまけに2本で固定しているから,傾くのをがまんすれば,低いほうの柱がずるずると落ちることはない.見栄えが悪いのをがまんすればよいという状態.
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高塚省吾の絵の話

2017-01-25 09:56:16 | お絵かき


芸術新聞社 (1996/06).古書で 500円.

著者 (1930-2007) は東京芸術大学で梅原龍三郎に師事.Wikipedia によれば「裸婦美人画家として...その絵はカレンダーやポストカードとなり画集は広く親しまれた。」
前世紀,つくばの研究所に勤めていたとき,年末にエフ機工がこの高塚省悟のカレンダーを配ったことがある.おやじさんは画鋲持参で勝手に自社のヌードカレンダーを各部屋に貼りつけてまわった.しかし芸術的すぎると,評判はイマイチだったため,翌年は水着アイドルカレンダーに変わってしまった.

「BOOK」データベース (Amazon) によれば***** 
油絵の中に日本的美意識を込める画家・高塚省吾が、画家として半世紀の経験を吐露。絵の描き方、見方、モデルとのいろいろな出合い、デッサンのこつから、東西の美意識や現代の文明と美術文化論まで思うままに綴る美術のうらのはなし。高塚絵画のルーツに触れる一冊。絵の好きな人必読の書。*****

精神訓話めいたところもあるが,チェスで人間が計算機に勝ったと聞いて理屈をつけているのが時代を感じさせる.

ウォーホルやリキテンシュタインの作品については,何を引用しようとそれが独自の思想に転化されれば「創造的表現」としている.絵画について書作権を問題にするときのマスコミの対応は,多くの場合自らの文化的教養の低さを露呈しているだけだという.

ヌードモデルの頼み方とか報酬とか,写真モデルとの比較とか,手をあげるポーズはモデルが疲れるとか,ストリップとの違いとか...,「不必要な犯罪」という小説は画家から見るとどうなんだろうと思った.ちなみに「不必要…」のカバーは高塚画伯.

実戦的な部分もあり,J 子が熟読.

同じ著者の若いときの
「しらける 高塚省吾絵ッ声集」 ブロンズ社 (1970)
全部ネットで鑑賞できる.これに比べると「絵の話」は,なにを偉そうに...という感じ.
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不必要な犯罪

2017-01-24 09:50:47 | 読書


幻影城[幻影城ノベルス](1976/9).

狩久 (かり きゅう 1922-1977) は慶大工卒だが,1954-63 に100編の短編ミステリを書いた.その後 10 年余の休筆直後の,これはただひとつの長編にして最後の作品である.
2010 論創ミステリ叢書として,短編を集めて出版された「狩久探偵小説選」を図書館で拾い読みをしたのをきっかけに,40 年も前に買ったこの本を引っ張り出して読み直した...というわけ.ちなみに...傑作選は,500 ページと重いので ! 借りなかった.

たしかにアンカット・フランス装だったのを思い出した.手近な定規か何かを使ったらしく,破り目が汚らしい.反省!!

短編にはユーモア・ミステリ寄りが多いが,これはシリアス.ハイレベルな秀作だが,面白くはないかも.
舞台は鎌倉らしい.ふたりの美人姉妹のうちのひとりを,画家がヌードモデルに頼むことから,奇しく官能的な愛憎劇が始まる.成人向きの場面が多いのでアンカットだったのかな.
誤認殺人は不必要な犯罪だ,というのが,とりあえずのタイトルの由来.

画家とモデルの関係という事実そのものが傍目にはミステリアスだが,こういうのもありかな,と思った.

最後に梶龍雄による狩久のプロフィール.
幻影城のカバーの例にもれず,ここでも高塚省悟だが,絵は内容と関係がないと思う.
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大坂の陣 近代文学名作選

2017-01-23 09:13:49 | 読書
日高昭二編,岩波書店(2016/11).

テレビの大河ドラマに便乗しての出版のように見えるが,やけに格調が高い.
日高氏は神奈川大学名誉教授だそうだ.

Amazon 掲載の「BOOK」データベースによれば*****
近代の著名な作家たちは、豊臣家の滅亡とその戦いをどのように描いたのか。明治から昭和戦前期までを中心に、坪内逍遙、岡本綺堂、徳富蘇峰、菊池寛、吉川英治、田中英光、坂口安吾ほか、十五名の作品を、「豊太閤追慕」「淀殿変幻」「落城の賦」「敗者の碑」の四章に分けて収める。近代文学が捉えた「大坂の陣」の物語には、それぞれの時代における帝国日本の「戦争」の陰影が深く刻み込まれている。*****

上にあるように,章のタイトルは文学趣味.内容は詩あり戯曲あり文語体あり.しかし敗戦がテーマだから,立て続けに読んだら気が滅入った.
面白かったのは吉川英治と,以外にも曾呂利が登場する坪内逍遥.坂口安吾の文章に既読感があったが,この人が書くものはぼくには全部同じに聞こえるのかもしれない.編者の解説もおおかたのテキストより面白かった.

図書館で借用.こうした,どういう読者を想定しているのかわからない本は確かに図書館向きだ.
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CDの額縁

2017-01-22 09:14:12 | お絵かき


かってはダイソーで CD 額を売っていたが,CD そのものがネット販売に押された結果,額縁も消滅して久しい.そこで「ゆーもあファクトリー」さんに注文して CD 絵仕様の額縁を作ってもらった.こちらにはもっと詳しい記事.値段は百均の一桁上だが額縁屋で買うよりはだいぶ安い.50 個 ! 一生分 ?

木目がぐるりと連続しているのがうれしいので,着色しない.

この絵そのものは,例によって CD ケースの内側からアクリル絵具の薄塗り.ウェブで見るより実物のほうが良い.

J 子の 100 号の額も作ってもらった.そちらが主で CD 額はおまけ.
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黒龍荘の惨劇

2017-01-21 08:55:34 | 読書
岡田 秀文,光文社文庫 (2017/1).2014 年に刊行された単行本は「2015 本格ミステリ・ベスト 10」の国内第 5 位にランクインした.

Amazon によれば,*****
内容(「BOOK」データベースより)
明治二十六年、杉山潤之助は、旧知の月輪龍太郎が始めた探偵事務所を訪れる。現れた魚住という依頼人は、山縣有朋の影の側近と噂される大物・漆原安之丞が、首のない死体で発見されたことを語った。事件現場の大邸宅・黒龍荘に赴いた二人を待ち受けていたのは、不気味なわらべ唄になぞらえられた陰惨な連続殺人だった―。ミステリ界の話題を攫った傑作推理小説。
*****

首なし死体・わらべ唄・白紙の遺言状など,古典的な趣向がてんこ盛り.タイトルからして時代がかっているが,明治の文献を現代語訳したと言う体裁でサクサク読める.
ゲームみたいにサクサク殺され,残るは警察と探偵だけとなってしまう.探偵とは上記,月輪と杉山のペアで,それぞれホームズ役ワトソン役だが,まことに無能.
最後の 20 ページほどが謎解きに充てられるが,ちよっと急ぎすぎ.あまり詳しく書くとぼろが出るのかも.

ネタばらしをすると,真犯人はカリスマで,2家族の全員がこのひとにマインド・コントロールされるというのだが,強引な設定.でも彼に 4 (5) 人の妾がいて,同じ屋敷に住んでいるという能天気さが,強引な部分をカモフラージュしている.
ばかミスと思えば楽しく読める.

解説 法月綸太郎.

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