Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ビブリア古書堂の事件手帖 4 ~栞子さんと二つの顔~

2013-02-27 08:00:55 | 読書
三上延,メディアワークス文庫(2013/02).

シリーズ 4 冊目だが,また読んでしまった.このシリーズはテレビでもやっているが,つい昨年本で読んだストーリーをほとんど覚えていないことを認識する結果となった.それなのに江戸川乱歩等,昔読んだものはけっこう覚えている.歳をとるとはそう言うことなのか,当時は本を一所懸命読んだからか.

この 4 冊目は江戸川乱歩がテーマの長編.乱歩が作った二銭銅貨の暗号がそのまま流用され,人間椅子も登場するという大サービスだ.

自分が小学生だった頃,雑誌「少年」に少年探偵団が活躍する「怪奇四十面相」が連載されていた.冒頭で二十面相がマスコミ相手に,「二十面相は過小評価だ,自分は少なくとも 40 の顔を持っている」と宣言するのだが,餓鬼どもは「次は百面相かよ」などと学校で悪態をついた...当時,寄席に百面相という出し物があったのだ.

ところで,この本はたちまち読了.二銭銅貨は,「二銭銅貨」という小説が書かれた大正 12 年には流通していなかったとか,この小説中で,作者である乱歩が暗号のつくり方を間違えたこととかがネタになっている.古本屋がいちいちそんなことを記憶しているだろうか,などと,後から野暮な疑問が生じたけれど.それが小説というものなんだろう.
栞子さんの母親が登場し,母娘でやり合う場面がライトノベルっぽい.

テレビの女優さんは,ご本人も気にしていることと思うが,原作とはイメージが違う.セットも立派過ぎて,古本屋というより図書館みたい.
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小磯良平展 @ ふくやま美術館

2013-02-25 09:13:24 | 新音律
意外に点数が多い割に会場が狭く,おまけに土曜日のためかヒトが多く,この地方にしては活気のある展覧会だった.



上のモデルは小磯家の子どもたち.となりに奥さんをモデルにした絵があって,親子がよく似ていることが認識できた.




青木繁「海の幸」を連想した.こちらの方がずっと上手.量感はあるが動感はなく,装飾的だが,それが狙いなんだろう.




塗り残しも計算に入れた画面構成.このほか,顔だけ丁寧に描いて衣服はデッサンみたいな油彩もあった.
こういう顔立ちがお好きらしい.




このおっぱいはすごい.足もすごい.まんなかのモデルは女中さんだそうだ.
「女中」というのも今では死語になってしまった.




「所蔵品展 熊谷守一」.こちらはがらがら.
油彩は2-3点だが,この方の絵は,小磯に比べるとぐっとアバンギャルド.版画にしてもほとんど変わらない絵の元祖みたいだ.
一気書きのような日本画と書が多数.裸婦を見ていると風景が見え,風景を見ると裸婦が見えるという画家の言葉だが,このヌードも風景を前に描いたのだろうか.
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森で過ごして学んだ 101 のこと

2013-02-23 09:07:42 | 読書
本山健司 東京書籍 (2012/04).

「BOOK」データベースより*****
焚火・酒・音楽。便利な道具づくりから焚火料理、危険な動物たちへの対処法まで、森と野に遊ぶために本当に必要な情報を美しいカラーイラストで紹介。*****

辻まこと あたりから始まった,山の画文集の系譜の本だろう.ただし,著者の関心はピークハントにはなく,もっぱら野営して美味しいものを食べることらしい.うらやましいことだ.

初出は実業之日本社「ガルヴィ」に連載とのこと.本ではごらんのように,ひとつの項目が見開き 2 ページで,左ページ 3/2 ほどはイラスト.内容は野外でであう鳥・魚・ケモノ・植物,焚火用あるいはバッグ・ロープなどの道具あれこれ,クッキングなど,

最後 #95-#101  のタイトルを並べると,「雪にはモカシン,たっぷり積もった白神山地,雪洞はハワイ,綿毛の秘密,カマクラづくり,なんたってラクダ,しめくくりはウンチのはなし」である.内容が推察できるのも,できないのもあるところが上手い.

図書館で借りてきたのだが,自分の本棚に並べて思い出したら眺めるのもよいかな,と,思わせる本だ.

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「物」不在の物理学

2013-02-21 08:31:08 | エトセト等
「経済物理学」という言葉が新聞に出ていた.この本

高安秀樹「経済物理学の発見」光文社新書 (2004/09)

によれば,カオスとかフラクタルとかを経済現象の分析と制御に応用することらしい.
その昔,16 トンもカルマンフィルタなんかを知ったとき,これで株価の予測ができるのではないか,と考えたことがある.経済物理学はあの方向だろうと思う.

人間の思考も行為も化学現象,遡れば物理現象だし,人間の集合が引き起こす経済現象も,原理的には統計力学的に説明できるかもしれないが,このやり方は手に負えないのは明らかだ.とりあえず使えそうな物理の理論を場当たり的に経済に応用している段階.でも,エントロピーから始まった情報理論が到達した完成度は,経済物理にはないようだ.

いまの経済物理学よりももっと広い視野で,経済学を考えたらどうなるだろうか.

一般的な物理学の対象は「物」と「場」であろう.これに対応する経済学の対象は何だろう.お金あるいは貨幣価値だろうか.お金の偏りやばらつきを時間的空間的に研究することは,天気予報のようなものと思う.天気は気圧の揺動 fluctuation の結果であり,それなら経済現象はお金の存在の揺動だろうと,16 トンは考える.お金に偏りが生じると,それが成長したり (不安定性) 収まったりするところは,現在の経済物理学の得意分野である.

気圧の場合は基準値からの定量的なプラス・マイナスが分かりやすいが,お金についてはよく分からない.「物」という,実体のある物に貨幣価値を付けることは分かりやすいが,芸術・娯楽あるいは情報など実体のないものにも貨幣価値がついているのが困る.しかしマル金とマルビを積分するとゼロになるのは信憑性がありそうだ.貨幣価値はインフレ・デフレで変わるが,それは単に尺度が変わるだけで,地球全体では貧富を合計するとゼロになるという,ある種の保存則が成り立ちそう.

戯言でした.
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野上照代「母べえ」

2013-02-19 08:07:29 | 読書
中央公論新社 (2007/12).

山田洋次と吉永小百合で映画化された原作を,図書館で見かけたので読んでみた.山田・吉永ご両人の文章も載っていて,吉永さんに,「この役には私は歳をとりすぎているのでは」と言われた山田監督は「あのころのお母さんはみんな疲れていたから」と答えたのだそうだ.
原作では,照代さんの叔母さんの恋人が登場するが,映画ではこの男子が吉永さんに想いを寄せることになっていて,映画は「そこは不自然」と批評されたらしい.

もともと 1984 年に発表されたときは「父へのレクイエム」というタイトルだったそうで,本で読む限りたしかに「母べえ」がヒロインという印象はない.本のタイトルが変わったのは映画化のためだろう.

本の内容は思想犯として投獄された「父ぺえ」と家族との往復書簡を野上さんの作文でつないだもの.書簡は父ぺえさんがノートに書き写しておいたもの.検閲のために滅多なことは書けないわけだが,長女の手紙は思春期らしくそれなりに深刻で,小学生だった次女 (著者) の手紙は能天気,父ぺえさんはもっぱら獄中で読む本を要求する.味わいある書簡集だった.
手紙ではない部分も,声高に反戦を叫ぶと言うのではなく,親戚付き合いとか,食べ物の心配とか,庶民の目線で語られている.野上さん自身のイラストがよい.



著者は黒澤明監督のスクリプターとして有名.本の中では父ぺえ (野上巌,筆名・新島繁) は獄死してしまうが,幸い,ほんとうは戦後 1957 年まで活躍したとのこと (http://ja.wikipedia.org/wiki/新島繁).ドラマチックな方向に脚色したのは,黒澤監督の影響があったかも.
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ホーンテッド・キャンパス 続編

2013-02-17 08:56:22 | 読書
櫛木 理宇「ホーンテッド・キャンパス - 幽霊たちとチョコレート」角川ホラー文庫 (2013/01)

大人なら引いてしまうカバーイラストだが,それだけで判断すると,面白いものを逃すことを学習していたので,だめもとと購入.結果は当たりだった.幽霊学 ? の常識をなぞって,それらしい世界が構築されている.しかも,幽霊たちは怖くない,人間の方がよっぽど怖いという執筆方針を買う.
ウェブで見たら著者は女性だった.

読みかけて,シリーズ2作目ということが分かった.アマゾンのレビューによれば,1作目より上手くなっているそうだ.

イラスト ヤマウチ シズ.解説なし.
こういう,ウェブでアニメで PR するという方針がこの本に適しているかどうかは疑問.



ついでだが,まだ書店に平積みになっている

 東川 篤哉「謎解きはディナーのあとで」小学館 (2010/09)

を図書館で借りたが,こちらはボク的には外れ.ウン十年前の少年雑誌に1-2ページの犯人当てクイズと言うのがあったが,あれに尾ひれをつけて膨らませた感じ.
でも,電車の中で読んで (そのまま,敢えて網棚に忘れる ?) にはよい.そう言う広範なマーケットの需要を満たしてはいるのだろう.
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どこ行くの,パパ ?

2013-02-15 07:45:30 | 読書
ジャン=ルイ・フルニエ,河野万里子 訳 白水社(2011/02).

「BOOK」データベースより*****
外では、常に人を笑わせるユーモア作家。家では、重度の障害を持つ二人の子の父。フランス中を感動に包んだ、実話に基づく笑いと涙の物語。フェミナ賞受賞作。*****

上記惹句は月並みすぎる.「笑い」と言っても自虐的なブラックユーモアで.作者は本の中で
「おまえは自分のこともままならない小さなふたりの子どもを冗談のネタにしたりして,恥ずかしくないのか ?
恥ずかしくない.そんなことで,愛情は減ったりしない.」
と自問自答している.

くちひるで「ブルンブルン」をやるだけの長男は早世してしまうが,1分おきにおなじ無邪気さで「どこ行くの,パパ ?」と聞く次男は30歳くらいで存命らしい.葛藤のすえに生んだ3人目の女の子は正常だった.

1-2 ページの断章の積み重ね.妻は父子を残して出て行ったらしいが,そう言うことは詳しくは語られない.

著者は有名人で,そんな彼が70歳を目前にして明かした私生活にフランス中が驚いた,と言うことだ.そんな事情は知らなくても,読み出したら頭から離れない本.フランスでも,著者は忘れられてもこの本は残るのではないだろうか.

白水社ではなく,もっと売ることに熱心な出版社から文庫化して貰いたい...なんて.
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雪の女

2013-02-13 08:35:25 | 読書
レーナ・レヘトライネン, 古市 真由美 訳,創元推理文庫 (2013/01).

フィンランドで一番人気のミステリとあったので,購入.

これもまた,女性作家による女性の小説.事件の被害者は女性だけの館の当主.これを追う女性巡査部長による一人称小説だが,冒頭で彼女は結婚し,小説の途中で妊娠する.空腹になったり,吐いたり,セックスしたリが逐一語られる.
フィンランドでも警察は男の職場であり,何かというとベルツァ警部補 (同僚・もちろん男) といがみ合う場面も面白い.被疑者のストリッパーを同性の目で観察するのもやはり面白い.

古レスタディウス派という戒律が厳しい宗派の女性が,妊娠中絶を殺人と弾劾されたりする.この他,星占いが登場するあたりも,ふだん読んでいるミステリと勝手が違う.
途中,脱獄囚がコテージに立て籠ったりするが,本筋とはあまり関係がない.

ヒロインと体験を共にするのはいいのだが,事件そのものはやはり女性の小説らしく,婦人科的なヒントで解決され,横溝正史風の因縁話で終わってしまう..

訳者による「あとがき」が力作,と思ったら,
http://www.webmysteries.jp/translated/furuichi1301.html
に全文アップされていた.
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フィボナッチ級数とドレミ

2013-02-11 07:52:24 | 新音律


フィボナッチ級数の要素 a[i] は,
a[1]=1,
a[2]=1,
a[j]=a{j-1]+a[j-2],
で定義される.これに従えば,a[3] 以降は,2,3,5,8,13,... となる.

この動画は,鍵盤の黒鍵は 2,3 あわせて 5 で,ドレミファソラシドには 8 の音があり,半音 (黒鍵) も勘定に入れれば 13 で,これらはフィボナッチ級数の一部だと主張しているらしい.オクターブを重複して数えないのが本当だと思うのだが,それでは 2,3,5,7,12 で,フィボナッチにならない.

Wikipedia には,フィボナッチ級数と音楽の対応について,別なことが書いてある.
http://en.wikipedia.org/wiki/Fibonacci_numbers_in_popular_culture#Music
ドビュッシーやバルトークも登場する.

先ほどの級数で,比 a[i]/a[i-1] は i を無限大とすると,美術ではポピュラーな黄金比 1.618033... となる.
音楽でも黄金比が云々されていることが,
「黄金比はすべてを美しくするか?」マリオ・リヴィオ,斉藤隆央 訳,ハヤカワ文庫 2012/01,
に紹介されている.ただしこの本の著者も言うように (フィボナッチ級数も含めて) どの説も,あまり説得力がない.
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名探偵クマグスの冒険

2013-02-09 08:08:39 | 読書
東郷 隆,静山社文庫(2013/01).

「BOOK」データベースより*****
時は19世紀末。各国のスパイやギャングが跋扈するロンドンで、若き日の南方熊楠が遭遇する奇っ怪な事件。政治的陰謀も、ケルト伝説の怪物出現も、クマグスが博覧強記の知識で謎を看破し、豪胆な行動力で決着をつける。虚実を巧みに織り込んだ博物学的エンターテインメント。*****

南方熊楠は「歩く百科事典」と呼ばれた博物学者.

ロンドンに滞在中の夏目漱石を登場させた,山田風太郎の「黄色い下宿人」を連想したが,年譜を見たら漱石は熊楠と入れ違いでロンドンにやってきたようだ.ロンドンの漱石はノイローゼになったりして陰気なイメージだが,そこへ行くとこの本の熊楠は正反対.

タイトルも内容も「ホームズの冒険」を意識しているらしいが,ミステリを期待すると外れる.
目次には「ムカデクジラの精」「巨人兵の柩」「妖草マンドレイク」...など,怪しいタイトルが並んでいて,橘外男や小栗虫太郎を思わせる.しかし実は,名前だけでタイトルの題材を博物学的に掘り下げてはいない.
では,何が読みどころかというと,南方熊楠とそれをとりまく世紀末ロンドンの描写.Nature に論文が出ることが熊楠氏の一大関心事だったりする.あの孫文も登場.

文庫版のカバーは子猫だが,熊楠は時計を質に入れてしまったので,猫の瞳を見て時刻を判断していたのだそうだ.この調子で,どこまでが本当で,どこからがフィクションか分からないところが楽しい.
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