NHKラジオ文芸選評 7/18 での 東京都 湯口 昌彦さん 89 の一句.
蝉よ鳴け畳に団扇ある限り
選者 : 井上弘美 によれば,これは三橋敏雄の句
戦争と畳の上の団扇かな
が下敷きになっている (この分野でもオマージュと言うのかな).この句を含む句集「畳の上」で,三橋は1989 年に蛇笏賞を受賞したそうだ.
戦争の頃を考えると、畳の上に団扇が転がっている光景はなんと平和であることか と解釈するらしい.
16 トンの目に浮かぶのは,畳の上に団扇が転ってはいるけれど,誰もいない座敷.みんなあわてて防空壕に行った後,解除になって帰ったところと思うと.デジャヴめいている.
「蝉よ鳴け...」は 89 歳湯口さんの平和への祈りなんだろう.
予備知識を与えられる以前にこの句を聞いて,作者の7歳年下の 16 トンが感じたのは,別な意味での,家で寝転んで蝉が聞けるありがたさだった.
去年の夏は入院していたのだが,冷房完備の病室のベッドで団扇なんか思い出したことがなかった.窓の外はかんかん照りだったが,蝉なんか聞こえてこなかった.
病院にしろ 高層マンションしろ,人工的な環境下では,畳もうちわも遠い昔のことだ.聞こえないけど 蝉よ勝手に鳴いてくれ という,平和ぼけ的な解釈しかできないのでした.
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