マイケル・オンダーチェ, 田栗 美奈子 訳.作品社 (2013/08).
図書館で借用したが,読了後,自分で欲しくなった.2730 円は高い! ペーパーバックだけど半額の原書を注文しようかなと思案中.
「BOOK」データベースによれば*****
11歳の少年の、故国からイギリスへの3週間の船旅。それは彼らの人生を、大きく変えるものだった。仲間たちや個性豊かな同船客との交わり、従姉への淡い恋心、そして波瀾に満ちた航海の終わりを不穏に彩る謎の事件。映画『イングリッシュ・ペイシェント』原作作家が描き出す、せつなくも美しい冒険譚。*****
原題は cat's table.客船の食堂で,船長から最も遠い,最低の客用のテーブルのこと.主人公の少年「僕」はここで食事する人たちから「面白いこと,有意義なことは,何の権力もない場所でひっそりと起こるものなのだ」と言うことを学ぶ.
僕はふたりの仲間と船上で「毎日ひとつ以上,禁じられたことをする」というルールを自分たちに課す.いたずらの限りをつくすのだが,それが複雑な大人の世界に繋がっていくわけ.
著者は 1943 年生まれで,16 トンと同世代.この小説は自伝的な部分もある.コロンボ生まれの混血で,人種差別もほのめかされる.
大部分は客船が舞台だが,ときどき僕のその後の人生も挿入される.たとえば,僕は仲間のひとりの妹と結婚し,また別れる.上に引用したデータベースの「謎の事件」の結末も後日に持ち越される.
登場人物が多過ぎて,どれも覚えにくい名前.カバーの折り返し部分に登場人物リストがあったことを,だいぶ読み進んでから認識した.濃い青地に黒字で印刷されるのは困る.美しい造本だが,装丁(水崎真奈美) は実用よりも芸術優先らしい