Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

「アメリカ音楽」の誕生

2007-10-31 11:33:56 | 読書
奥田 恵二 「アメリカ音楽」の誕生―社会・文化の変容の中で,河出書房新社 (2005/09)

「BOOK」データベースより内容の要約を引用すれば
音楽“後進国”にして“先進国”アメリカが育んできたものとは何か?「アメリカ音楽」の現在を知るために。
ヨーロッパやアフリカに存在した音楽的源流を独自の音楽表現に変容させていったアメリカ。その成り行きを資料と図版を交え、今日の視点から跡づける待望の一冊。

ここで,クイズ
最近よく耳にする「アメイジング・グレイス」はジョン・ニュートンの作曲と伝えられる.このニュートンの生まれた年はつぎのa-dのどの期間にあてはまるか.
a バッハの生年とモーツアルトの生年の間
b モーツアルトの生年とベートーベンの生年の間
c ベートーベンの生年とブラームスの生年の間
d ブラームスの生年とドビュッシーの生年の間

アメリカ音楽というと,小生が思い浮かべるのはジャズとポピュラーだ.この本によれば,それもあながち間違いではないらしい.しかしそこに至る長い道のりが興味深い.もちろんクラシックや現代音楽のページも多い - というより,著者にとってはこちらが主題かもしれない.とくにアイヴスには愛着をお持ちのようだ.
さきのクイズだが,ニュートン(1725-1807)に対し,J・S・バッハ(1685-1750),モーツアルト(1756-1791),ベートーベン(1770-1827)等だから,ニュートンはモーツアルトより年上,バッハより年下.こたえはa.アメリカ音楽の歴史は意外に長いのだ.

305ページ 3,675円の大著.学問として読むのは別として,読み物としてはさくさくと読める.文章がうまいし,章のタイトルのつけ方もうまい.楽譜が挿入されているのも良い.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

学園祭に とんでふバンド

2007-10-29 19:25:54 | 新音律
左は非12音平均律のCD.
Indies Music Store: http://indies-m-store.keddy.gr.jp
からお求めになれます.この続編を制作中.右はボランティアして下さったMMさんによる続編のジャケットデザインです.

さて,大学の学園祭にはジャズ喫茶がつきものですが,ここでCD第二弾制作記念非12音平均律のライブパフォーマンスを企画中.計算機につないだキーボードをいじるだけでは冴えないので,生身のドラマーにも参加を要請.
上記のCD収録曲に加え,フリーも検討中.ふつうはフリーといっても音律はきまっていますが,この場合はそれも自由!

とはいうものの...
楽器を演奏するのは,自転車やスキーと似ていて,少々ブランクがあっても思い出す.ところが計算機は,数ヶ月前は毎日のようにやっていたのに,どんなファイルがどこにあるのか,なかなか思い出せない.
おまけに計算機はヒトの言うように言うことをきいてくれない.今日も突然耳をつんざくようなノイズを発生したり,楽器音が変えられなくなったり...というわけで,どうなることやら.

「とんでふ」は tone deaf,すなわち「音痴」のこと.これは差別用語かな.
11月4日(日)午後1330- 大学会館カフェテリア.準備に時間がかかりそうなので,打順一番をお願いしてあります.
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

熊沢天皇

2007-10-27 21:02:57 | 読書
藤巻 一保「吾輩は天皇なり―熊沢天皇事件」 (学習研究社 学研新書 2007/9)

熊沢天皇は自称南朝の末裔で,この本は彼の悲喜劇人生を描いている.
天皇制支持者が熊沢天皇に対してどういう態度をとるか,野次馬的興味がある.
皇居に楠木正成の銅像があるが,これも理解に苦しむ.彼は今の天皇の祖先と敵対した,南朝のために死んだのだから.

著者の態度はクールにして 健康的.万世一系など幻想で,天皇制は官僚に取って都合のいいものに過ぎないと言うのだ.戦前の軍部・官僚は,昭和天皇がかれらの言うことを聴かないときの切り札とするために,熊沢天皇や偽熊沢天皇 (ややこしいが,自称南朝末裔は多数存在するのである) を切り捨てなかったという.

ただし熊沢天皇問題がまともにに天皇制にかかわることはなかった.戦後熊沢天皇が昭和天皇を訴えたこともあったが,天皇は裁判の対象にならないという奇天烈な判決で門前払いにされた.
熊沢天皇の一生は猿回しの猿みたいなものだったのかもしれない.ご本人はドンキホーテ的人格の持ち主で,本書でもあしざまに描かれてはいないのが救い.
小説と思って読めばおもしろい.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「音律と音階の科学」正誤表

2007-10-25 22:18:16 | 新音律
上記拙著(講談社ブルーバックス)第一版(2007年9月20日)の正誤表を

http://beam-physics.kek.jp/bpc/corrections.pdf

に置きました.

たくさん間違っていて申し訳ありません.
でも正直言って,数式が無い本は楽ですね..
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「人間と遊び」研究成果発表会

2007-10-23 20:57:13 | 新音律
中山隼雄雅楽技術文化財団は,「人間と遊び」をテーマとする研究を助成して下さっていて,われわれの「新しい音律による音楽」も平成17年度に支援していただいた.この成果発表会が行われた.
プログラム
http://www.nakayama-zaidan.or.jp/rollout.html
でお分かりのようにバラエティに富んでいて,物理の研究会と違って!!寝ている暇がなかった.
懇親会は知らない人ばかり.私が発表したなかのK氏・H氏の変則平均律作品は特に若い人に好評でしたよ.

どの発表もおもしろかった.一例をあげると,これはこの日のトリ・芸大の佐藤雅彦先生の講演にあった「計算の庭」というインスタレーション (無人の写真より,予稿集にあった絵コンテのほうが味があるんだけど...).
数字の書かれたICタグカードを首からぶら下げ,計算式の書かれたいくつかのゲートをくぐりぬけ,計算結果がある数になるまで歩き回るという趣向.たとえば貰った数字が2なら,x3と書かれたゲートをくぐると6になる.さらに-2をくぐると4になる...など...:正しい計算結果はICタグが知っている.暗算結果が出口に書いてある数(73だそうです)と一致しないと出られない.
自分でやっても,他人の動きを見ているのも楽しいらしい.1月14日まで六本木森美術館「六本木クロッシング2007: 未来への脈動」展で.チケットをいただいたので,明日行くつもり.もちろん二紀展にも行くつもり.
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

どこが変わった?

2007-10-21 15:04:59 | お絵かき
J 子が二紀展から帰ってきた.
20日には会場におりますというはがきを乱発したため,たくさんの方が来て下さった.ご挨拶さえかなわなかった方もおられるらしい.失礼致しました.
でも,本人はおいて,旧交・新交を温めあった方々もおられたようです.
ぼくは来週上京するので,そのときのぞいてみるつもり.

会場は昨年までの都美術館に比べ明るく,展示も比較的ゆったりしているとか.10 日のプログの絵は完成した姿ではないというので,会場で撮影したものをアップします.どこが変わったかお分かりでしょうか.ただし色調が違うのは撮影条件のちがいによるもの・縦横比が違うのは撮影角度によるものです.本当は撮影禁止らしいけど ...

61回二紀展 10月29日(月)まで.国立新美術館.10:00~18:00(最終日14:30)入館は閉館30分前まで 10月23日(火)休館.地下鉄「乃木坂」駅直結・地下鉄「六本木」駅徒歩5分・入場料/700円・学生無料.
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

MONEY TALK

2007-10-19 09:29:18 | お絵かき
広島市現代美術館で大竹伸朗展 路上のニュー宇宙.
カットのMr. ピーナッツは好きだが,全体的にはぼくの感覚とは微妙にずれていた.
ふたつのキッズ・プログラム【読み聞かせ みんなでジャリおじさんを読もう】(終了)と,【貼り倒せ! 自分のスクラップブックを作ろう】がおもしろそう.

むしろお目当てでなかった,コレクション展 ゲスト・キュレーター(窪田研二)による収蔵作品展 MONEY TALK に満足.
まずこの美術館の購入実績があって,1985年~1994年は毎年1億円~7億円、1995年~2000年は5,000万円前後(ただし1997年は1億)、ここ数年は市の財政を反映してゼロがならんでいる.展示物は只すなわち寄贈から順に並んでいて,出口付近がいちばん高価.

壁面にはいろいろなお言葉がプリントしてあった.たとえば
「芸術とは最も美しい嘘のことである」 クロード・ドビュッシー
「物にもとづきながらその物をはずれたところに価値をつくることで,芸術とお札はそっくりなのだ」赤瀬川原平

ゲイジュツ作品そのものよりも,値札に目がいってしまう.岡本太郎とかウォーホルとか意外に安いなど.....
お宝鑑定団的印象だけが残った.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

飛ぶ教室

2007-10-16 20:57:20 | 読書
光文社古典新訳文庫「カラマーゾフの兄弟」がベストセラーだという.新幹線で読むには重厚長大にすぎるなと思ったら,駅の書店の同じ棚にケストナーの「飛ぶ教室」があった.

ぼくのケストナー体験は「五月三十五日」からだ.これはSFっぽい作品で,雨が降ると地べたからにょきにょきとこうもり傘草が伸びてくる場面があったと思う.次は「ふたりのロッテ」で,ふたごが入れ替わるはなし.美空ひばりの一人二役で映画化された.入れ替わりに飼い犬だけが気づくところが面白かった.どちらも高橋健二訳だったと思う.

「飛ぶ教室」は読んだことがなかった.このタイトルと「五月三十五日」体験からSFを連想したが,「ふたり...」みたいな変わった設定もなく,しごくまっとうな小説.
丘沢静也訳.訳者は日本の児童書の悪しき慣習,すなわち1)少ない漢字,2)たどたどしいデスマス調,3)会話のたびの改行」を廃したと言っている.たしかにテンポ良く読める.しかし男の子ばっかり出てきて色気がないのはやっぱり児童文学だ.ただし出てくる大人たちは魅力的.正義さんと禁煙さんもさることながら.クロイッカム先生も良い.

ケストナーの小説にはたいていヴァルター・トリヤーの挿画がついているのだが,この文庫では挿画がないのが不満.これはトリヤーによるドイツ版の表紙です.
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

酒まつり 「蔵シックコンサート」左手のピアノ演奏会

2007-10-14 13:22:10 | 新音律
西条の酒まつりで左手のピアニスト・智内威雄の「蔵シックコンサート」.
智内さんは3歳からピアノを始めたが,ドイツの音楽大学に留学中にジストニアとかが発症し,左手のピアニストとして再出発されたとのこと.昨年はラベルの協奏曲の演奏を聴いた.

この日は,前半がスクリャピン,ショパンの練習曲から4曲 (本邦初演とか) とバッハ・シャコンヌの編曲版,後半がサンサーンスの晩年の曲と吉松隆作曲「タピオラ幻景」.充実した一時間強でした.
ふつうのクラシックのコンサートと異なり,曲の切れ目にいちいち智内さんのおしゃべりが入るという,酒まつり向けの構成.「タピオラ幻景」みたいな現代作家の曲は続けて聴くと嫌になることが多いが,このような構成だとポップスを聴いているような気分で楽しめた.この曲は館野泉演奏のCDがあったはず.
会場はもと麹室だったところで,天井から提灯がたくさんぶらさがっていたり,静かになると通りのざわめきが伝わってきたり...ぼく的にはなかなか良く思えた.

現在は全然右手が動かないというわけでもないようらしい.ふつうのピアニストが楽譜めくり係を従えているのに対し,智内さんは右手がめくりに使えて便利.
率直に言って,右手が使えないので左手だけで弾くのか,それとも左手だけで弾くことにもっと積極的な意味があるのか,ショパンの練習曲群については微妙.ちなみに「別れの曲」では原曲と編曲版を最初だけ弾き比べて下さった.キーも変わっているんですね.
バッハ原曲のシャコンヌには左手ならではの必然性を感じた.日頃無伴奏バイオリン,すなわち単旋律で聞くのに慣れているせいかもしれない.智内さんのMCによれば,ブラームスがいろいろ試行錯誤の結果,片手で弾くのがベストということに落ち着いたとのこと.
サンサーンスの曲名はぼくには分かりませんでした.
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音律の本が増刷...ところが

2007-10-12 21:49:12 | 新音律
拙著,9/20発売のブルーバックス「音律と音階の科学」が売れ行き好調で,増刷が決まったそうだ.これは「あしたのんき」さんによるカバーイラスト.

ところが本文に間違いが...
163ページ 図64  2段目のC自然短音階はCドリアンが正しく,3段目のCドリアンはC自然短音階が正しい.
それに伴って下から2行目の「自然短音階」を「ドリアン」としなければならない.

ハンドル名「かねたん」さんのご指摘で気がついた.
平均律のブルーススケールはドリアンモードと同じと言いたかったのに,このままでは短音階と同じと誤記したことになり,かなり恥ずかしい.
ちなみに,So What, Maiden Voyage, Milestones など,モードとか言ってももっぱらドリアンばっかりなのは,ジャズはやっぱりブルースから離れられないからである...と本に書くつもりだったのに,それも忘れてた.
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

reading

/Users/ogataatsushi/Desktop/d291abed711d558e554bf7af66ee57d7.jpg