都築響一,ちくま文庫(2019/12).
2013年刊行の文庫化.93年の『TOKYO STYLE』以来のこの著者のファン.いつものように写真+文章だが文庫だと写真が小さいのが難.
「BOOK」データベースによれば*****
“老人の1人暮し=哀れな晩年”そんな偏見を覆す16人の人生の大先輩への超インタビュー集。彼らは“年齢だけちょっと多めの元気な若者”で、写真とともに語られる人生には“生”の肯定しかない。現代ではあえて独居老人でいること、あえて空気を読まないことは、縮みゆくこの国で生きのびるためのきわめて有効な生存のスタイルかもしれない。その後を追った「文庫版あとがき」を収録。*****
子どもがいない夫婦は(うちでも安倍家でも)ひとりは独居老人化することが確実,というわけでなかなか切実な内容.
この16人の中で一番有名なのはダダカンと秋山祐徳太子だと思う.「片付けることは消極的」と嘯く秋山は,ごみ屋敷ならぬごみマンション住まい.いっぽう1919年生まれの津軽三味線奏者/民謡歌手,長谷川栄八郎は掃除だけでなく,炊事も洗濯もしっかり自分でやる.ここだけ見てもバライエティに富んでいる.
ぼく的には40年も首括りだけを演じてきたという,首くくり栲象(芸名? 肩書きはアクショニスト)の印象が強烈だった.美濃瓢吾,戸谷誠,川上四郎と画家が3人.趣味で描くのとは一線を画していながら,「画壇」とは無縁なところが,いさぎよい.カバー絵は川上による.
16人に共通しているのは,標準から外れた人生を送ってきたことと,今でも職を持っている...というか,とにかくやることがあること.ふつうに会社を停年して,ひまを持て余しているどうしようもないのを,ひとりくらい取り上げて欲しかった.TOKYO STLE にはふつうの人が多かったと思う.もっともインタビューからは,この16人の内面はふつうの人と同じであることも感じられる.