【社説①】:北新型ミサイル 挑発に備え安保協力を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:北新型ミサイル 挑発に備え安保協力を
北朝鮮が新型の短距離弾道ミサイルを発射した。米国との協議が進まないことへのいら立ちとみられ、挑発をエスカレートさせる可能性もある。日米韓は安保上の協力を緊密にして対応すべきだ。
発射された二発のミサイルは約六百キロ飛行した。韓国の全域と、日本の本州や九州の一部に到達可能な飛距離となる。
韓国政府は、「新たな短距離ミサイル」とする初期の分析結果を発表した。国連安全保障理事会の制裁決議違反に当たる。
安倍晋三首相は静養先で、「わが国の安全保障に影響を与える事態ではない」と述べ、ゴルフを続けたが、認識が甘くないか。
北朝鮮の国営メディアが新型ミサイルについて、低高度を飛行するため迎撃が困難だ、と自ら伝えていることに注意すべきだ。
ロシア製の短距離弾道ミサイル「イスカンデル」に似ており、低空を飛び、着弾前に跳ね上がるような動作をして、迎撃を回避する設計になっているという。
五月にも北朝鮮はミサイルを発射したが、射程が大幅に延びている。さらに改良されたようだ。
発射の目的について北朝鮮は、韓国の軍部勢力への「重大な警告」であり、八月に予定されている米韓の合同軍事演習や、韓国への最新兵器導入の中止を求めた。極めて強硬で、挑発的だ。
六月に板門店で開かれた三回目の米朝首脳会談で、非核化を巡る実務者協議の再開が決まったが、予定から遅れている。今回の発射は、協議の主導権を握り、成果を引き出す狙いもありそうだ。
こういった事態を受け、河野太郎外相は二十六日、ポンペオ米国務長官、韓国の康京和(カンギョンファ)外相と相次ぎ電話で協議し、協力を確認した。当然の対応だ。
二十三日には、ロシア軍機が竹島(島根県)周辺で領空侵犯し、韓国軍から警告射撃を受けた。ロシアは日韓の関係悪化をにらみ、日米韓の防衛体制を試す狙いがあったとみられている。
そんな中、日本政府は、安保上の輸出管理で優遇措置を与える「ホワイト国」から、韓国を除外する予定だ。来月二日にも必要な政令改正を閣議決定する。
韓国内では、除外が決まった場合の対抗措置として、八月に更新時期を迎える日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄が論議されている。
日韓がもめ、協力体制が弱体化すれば誰が利益を得るのか、よく考える必要があるだろう。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2019年07月27日 06:10:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。