『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【斎藤知事パワハラ疑惑】:「四面楚歌」に留まらず『八面楚歌』の様相 相次ぐ“辞職勧告”&側近の辞職 支援していた「維新」さえも…混沌とする兵庫県政
元幹部職員によるパワハラや物品受領などの疑惑の告発から約5か月。県職員労組やОB、議会最大会派の「自 民」、最側近までもが事実上の“辞職勧告”を突き付ける中、あくまで「県政を前に進めることが責務」と繰り返す斎藤元彦・兵庫県知事。県庁には苦情が殺到するなど県政はさらに混沌とし、支援に回っていたはずの「維新」側からも知事を突き放した言葉が沸き上がるなど、事態は“四面楚歌”にとどまらず、“八面楚歌”ともいえる様相を呈しています。
■鳴りやまない市民からの苦情電話…採用筆記試験で4割が辞退の異常事態
3月に知事の疑惑が告発されて以降、県庁には苦情が殺到しています。抗議の電話は1日中鳴りやまず、対応する職員からは疲弊の声が聞かれました。
県によりますと、告発後の4~6月は1日あたり130件ほどで推移していた苦情の電話が、7月、告発文を作成した元幹部職員が亡くなったことが明らかになると、電話の数は1日200件近くに跳ね上がり、8月に入っても平均して1日に100件近くの電話が続いているといいます。
電話の内容は、主に知事の記者会見の対応などに関しての苦情ですが、中には「知事は人殺し。殺してやろうか」という内容の脅迫めいた電話が来ることもあり、7月には知事の公務の一部が急きょ中止になる事態も起きました。
さらに、兵庫県庁の将来を担うはずの“未来の職員”にも影響が出ています。
4月から募集が始まった総合事務職の採用試験には、639人が応募しましたが、6月に行われた筆記試験を受験したのは377人で、全体の約41%にあたる262人が筆記試験を辞退しました。筆記試験の辞退率は、過去4年間は31~36%で推移していて、例年よりも5~10ポイント高かったことになります。
筆記試験が行われたのは、斎藤知事のパワハラ疑惑などを調査する百条委員会の設置が決まった3日後で、一連の疑惑が人材確保にまで影響を及ぼした可能性があるとみられます。
■側近たちの相次ぐ離脱…業を煮やした県下の市長が臨時総会「大変忌々しき事態」
7月12日 片山副知事の辞職会見 ©ytv© ytv
告発した元幹部職員が死亡した5日後、「悔しくてしゃあない」と会見で涙を流した片山安孝元副知事に続き、これまで知事を支えてきた側近たちが続々と知事の元を離れています。
県政のナンバー4とされる小橋浩一理事は、体調不良を理由に降格を申し出て部長職に退きました。小橋元理事は斎藤知事の肝いりの「若者・Z世代応援等調整」を担当していて、知事が掲げる県立大学の無償化などを先導した人物でした。
さらに、疑惑を告発した元幹部職員を内部調査した人事課を所管する井ノ本知明総務部長も体調不良を理由に休職しています。
小橋元理事の降格を受け、8月1日の県政改革調査特別委員会には、服部洋平副知事が急きょ出席したものの、委員の質問に答えることができず、「正直に答えさせていただきますが、本日から所管ということですので、今まだ勉強の途上です」と発言。斎藤知事が強弁する「県政を前に進める」どころか、停滞・後退している現状が露呈しました。
こうした状況に業を煮やしたのが、兵庫県内の29市の市長で構成される「兵庫県市長会」です。8月7日、停滞する県政について意見を交わすため、臨時総会が開かれることになり、会長である丹波篠山市の酒井隆明市長は「今の事態は大変忌々しき、残念な事態」と語りました。
これまでも県下の市長からは、
「県政の状況は非常に危機的な状況」(川西市長)
「機能不全状態」(加古川市長)
「組織のマネジメントが崩壊。辞職以外にはないのではないか」(小野市長)
などと、厳しい批判の声が上がっていましたが、臨時総会後の会見で丹波篠山市の酒井隆明市長は、「県民が今の県政に対して憂いている状況。一日も早く体制を整え、県民に信頼される県政を作ること」などを要望する方針だと明かしました。
■“辞職要求”叩きつけた最大会派「自民」 「維新」も距離を置く動きも
2021年の知事選では、20年在任した井戸敏三前知事が推した候補など4候補を破って初当選を果たした斎藤知事。その最大の勝因は、自民党と日本維新の会による“相乗り”での推薦でした。かつて共闘した2つの政党は、斎藤知事の一連の疑惑を巡っては別々の対応をとっていました。
県議会最大会派の「自民」は、疑惑が明るみとなった当初から、斎藤知事に対して厳しい追及を繰り返してきました。疑惑を追及する百条委員会の設置を主導し、7月には兵庫県連の会長である末松信介参議院議員が「県政の停滞はあってはいけないので、知事は、大きな正しい判断が必要」と発言し、事実上の“辞職要求”を突きつけました
8月4日 「兵庫維新の会」の大会 ©ytv© ytv
これに対し、第二会派の「維新」は、表向きには百条委員会の設置に反対し“静観”する構えをみせています。8月4日、兵庫維新の会の大会に出席した日本維新の会の藤田文武幹事長は、「自民党としては『何も関係ない』という態度をとるというのは違うのではないか」と、自民党にも推薦した責任があると批判。「事実認定をせぬまま、つるし上げることは問題がある」と百条委員会の調査結果を重視する姿勢を強調しました。
しかし、取材を進めると、知事と距離を置こうとする党関係者の本音も漏れ聞こえてます。
日本維新の会の関係者は「前回の選挙で推薦はしたが、維新の特別党員ではない。むしろ、自民党との距離の方が近いと感じる」と胸の内を明かしました。
斎藤知事を支える“最後の砦”ともいえる兵庫維新の関係者は、「次期衆院選への影響は免れず、申し訳ない思いがある」と話した上で、「政治的には『辞めろ』と言うべきだが、今まで共に県政を進めてきた関係上、事実が確定する前から『辞めろ』とは言えない」と難しいかじ取りにため息を漏らしました。
9月には定例会を控えている兵庫県議会。補正予算案や条例案を成立させる上で、提案側のトップである知事と、承認する議会の連携は欠かせませんが、両者の間の緊張はさらに高まり続けています。
告発者の死亡により、職員労組、ОB、県下市長からの“辞職勧告”、副知事の辞職をはじめ、側近の幹部職員の離脱、選挙で支援していたはずの「自民」に加え、「維新」までもが距離を置こうとする“八方塞がり”となった今も、あくまで辞職を否定し続ける斎藤知事。有権者である県民の憂いが消える見込みは、今のところ立っていません。
※8月12日(月)に、後編「パワハラ・おねだりだけではない…疑惑の新たな火種」を配信する予定です。
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