【社説①】:北制裁パネル 身勝手過ぎる露の拒否権行使
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:北制裁パネル 身勝手過ぎる露の拒否権行使
北朝鮮を監視する体制がロシアにとって不都合になったのだろうが、世界の平和と安全を脅かす危険な行動だ。
国連安全保障理事会の常任理事国としての資格がロシアにはないことを、ロシア自身が証明した形である。
北朝鮮に対する制裁の履行状況を調べる安保理の専門家パネルが、4月末で廃止となる公算が大きくなった。専門家パネルの任期を1年延長する決議案に、ロシアが拒否権を行使したためだ。
2009年に設置された専門家パネルは、日米韓などの輸出入管理や核不拡散の専門家8人で構成されている。これまで、北朝鮮が海上で物資を密輸する「瀬取り」の実態を明らかにするなど重要な役割を果たしてきた。
専門家パネルが廃止となっても様々な制裁決議が失効するわけではないが、監視体制が緩むのは避けられない。北朝鮮の核・ミサイル開発が加速するのは確実だ。
日米英仏韓が共同声明で、ロシアの拒否権行使を「責任ある国連加盟国の行動ではない」と厳しく非難したのは当然だ。
ロシアは17年までは制裁決議に賛成していた。専門家パネルの延長の決議にも、異を唱えたことは一度もなかった。
にもかかわらず、今回態度を一変させたのは、国際協調よりも、北朝鮮との関係を優先させたからにほかならない。
制裁決議は北朝鮮との武器取引を禁じている。だがロシアは昨年来、北朝鮮からミサイルなどの供与を受け、ウクライナ侵略に使用しているとされる。専門家パネルは露朝間の取引を調べていた。
ロシアは、北朝鮮との武器取引の実態が明らかになることを避けたかったのだろう。侵略が長期化した結果、北朝鮮からの軍事支援がなければ戦闘を続けられない状況に陥っている可能性もある。
ロシアは、専門家パネルの延長決議案に賛成する条件として制裁に期限を設けるよう求めていた。制裁の更新時に拒否権を行使し、制裁を終わらせる狙いだったのではないか。露朝が蜜月関係になっていることをうかがわせる。
専門家パネルは先月公表した報告書で、北朝鮮が外貨の5割をサイバー攻撃で獲得し、その犯罪で得た資金を核・ミサイル開発に充てている、と指摘している。
日米韓は北朝鮮のサイバー犯罪の抑止に力を注ぐ必要がある。それが北朝鮮によるロシア支援を終わらせ、ロシアに侵略の継続を断念させることに 繋 がるはずだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年04月06日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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