【社説①】:北の「統一」放棄 軍事行動の危険度が増した
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:北の「統一」放棄 軍事行動の危険度が増した
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が、韓国との平和統一の放棄を宣言した。北朝鮮が対韓軍事行動を起こす危険度が一段と増した。日米韓は抑止力強化を急ぐべきだ。
金総書記は最高人民会議での施政演説で、韓国について「和解と統一の相手とみなすのは深刻な時代錯誤になる」とし、「第1の敵対国、不変の主敵」と憲法で位置づけるべきだと述べた。
さらに、「およそ80年間の北南関係史に終止符を打つ」とも主張し、「自主・平和統一・民族大団結」という統一の3大原則を憲法から削除するよう指示した。韓国との対話の窓口となる機関も廃止するという。
これに関連し、統一を目指す精神の象徴だった平壌の祖国統一3大憲章記念塔が撤去された。
「平和統一」は、空文化していたとはいえ、金日成主席以来の対韓国政策の中核だった。金総書記は、祖父から父の金正日氏を経て引き継がれてきた大原則の転換になぜいま踏み切ったのか。
北朝鮮が韓国と戦争を始める布石ではないかとの懸念が国際社会で高まるのは当然だろう。
特に、韓国への核攻撃を示唆する金総書記の言動が目立っていることが心配だ。昨年末には「敵が核で挑発してくる時は核攻撃も 躊躇 しない」と述べた。戦術核弾頭を搭載できる巡航ミサイルの発射も繰り返している。
軍事的威嚇を強め、米国が直接交渉や制裁解除に応じることを狙っているとの見方もあるが、そのこと自体、言語道断だ。衝突を招きかねない 恫喝 は許されない。
一連の動きの背景に、韓国の尹錫悦政権が日米と連携して北朝鮮に厳しい姿勢をとっていることへの反発があるのは間違いない。
だが、日米韓の結束を招いたのは、北朝鮮が国連安全保障理事会の制裁決議を無視して核・ミサイル開発を強行しているからだ。
北朝鮮の後ろ盾となっている安保理常任理事国の中国とロシアの言動も問題だ。北朝鮮がミサイル発射を繰り返しても、両国は追加制裁を阻んできた。
特にロシアは、北朝鮮からの武器提供の見返りに、衛星発射の技術開発を支援した疑いが持たれている。中露は、北朝鮮を増長させる行いを即刻やめるべきだ。
北朝鮮を抑止するためには、日米韓が結束を強め、万が一に備えることが欠かせない。同時に、金総書記が暴走すれば体制崩壊につながるという警告のメッセージを発信する必要がある。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月05日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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