【安倍元首相「暗殺」事件】:「疑惑の銃弾」と残った陰謀論...問題の根幹とは?
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【安倍元首相「暗殺」事件】:「疑惑の銃弾」と残った陰謀論...問題の根幹とは?
<安倍元首相の暗殺事件には、なぜ「疑惑」が残ってしまったのか。今後も様々な憶測と陰謀論が渦巻くのは避けられないだろう>【山田敏弘(国際情勢アナリスト、国際ジャーナリスト、日本大学客員研究員)】
週刊文春が、2023年2月16日号から、安倍晋三元首相について、「疑惑の銃弾」という記事を掲載している。最新の3月2日号でも第三弾が掲載されており、「疑惑」の検証を求める週刊文春の本気度が伝わってくる。<button class="sc-yyapj QSknM" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="38"></button><button class="sc-yyapj QSknM" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="38"></button>
安倍元首相銃撃事件の現場となった大和西大寺駅前 JoshuaDaniel-Shutterstock
【動画】安倍元首相銃撃事件の司法解剖で「疑惑」が残ってしまったのは、これが原因だった
この「疑惑の銃弾」というタイトルは、そもそも1980年代に報じられた「ロス疑惑」についての文春記事のタイトルだった。
ロス疑惑とは、産経新聞の解説(1998年7月2日付)によれば、こういう事件だ。「昭和五十六(一九八一)年十一月十八日、米ロサンゼルスの駐車場で、元輸入雑貨販売会社「フルハムロード」社長、三浦和義被告(五〇)の妻、一美さん=当時(二八)=が顔面を銃撃され、三浦被告も足に負傷した。一美さんは意識不明のまま帰国したが、約一年後に死亡した(銃撃事件)。三浦被告は約一億六千万円の保険金を受け取った。(中略)五十九年、週刊文春の連載「疑惑の銃弾」をきっかけに保険金殺人疑惑として他のマスコミも報道を始めた」
安倍元首相の暗殺事件では、山上徹也被告が2度発砲していることがわかっている。一度に6発の弾丸が発射される構造になっており、12発の弾丸が安倍首相に向けて発射されたと見られている。
演説中だった安倍元首相は左後方から放たれた1回目の発砲に気がついて振り返った。そしてその時に2回目の発射があり、直後にうずくまるように倒れ込んだ。
安倍元首相は直ちに奈良県立医科大学付属病院にヘリで搬送され、病院での救命措置の後に死亡。同病院で司法解剖が行われた。
■解剖によって浮上した銃弾の「疑惑」
そこで判明したのは、安倍元首相に少なくとも球体の鉛の銃弾2発が当たり、そのうち、左上腕部から入った1発が、左と右の鎖骨の下にある動脈を傷つけて失血死に至らしめたということだ。それが致命傷となった1発だが、この弾丸は発見されていない上に、体外に弾丸が出た形跡もない。
それとは別に、右前頸部の銃弾は右腕腕骨にまで至り止まったと見られており、体内からその弾丸は見つかっている。ただその弾丸が体内に入った角度が銃撃時の安倍元首相の体勢をみると矛盾しているという。
問題は次の事実だ。安倍元首相の頸部に別の銃弾が当たった形跡があるという。だがその銃弾もどこからどこに行ったのかが判然としない。記事では、こうした「弾丸」の角度などに疑惑が出ていると検証している。
◆歴史的な暗殺事件に付きまとう「幻の狙撃手」説
そして2月13日。奈良県警は安倍元首相暗殺事件の捜査を終了したと発表した。だが、銃弾の「疑惑」は解消されないまま、これからも様々な憶測と陰謀論が渦巻くことになるだろう。
筆者は事件の後に、弾丸が行方不明になっているという話を関係者から聞いた際、きっちりと死因の究明をしないと今後ずっと安倍元首相の死因について、不必要な陰謀論が渦巻くだろうと指摘してきた。
というのは、こうした検視の矛盾などによって、事件から60年近く経った今も、その死因に陰謀論が渦巻いているケースの「死因究明」について取材をしていたことがあるからだ。そう、ジョン・F・ケネディ暗殺事件である。 当時のことを知るアメリカの法医学者らに取材をして、ケネディ元大統領の検視に問題があったことを調べた。そんなことから、「疑惑の銃弾」の第二弾の記事で筆者は文春にこんなコメントを寄せている。
「米国のケネディ大統領が暗殺されたときには、遺体を現場のテキサスではなくワシントンまで運び、法医学の専門医ではない米軍の医師が解剖を行いました。そのため『どこに銃弾が落ちていて、どのような角度で弾が当たったのか』といった検証が不十分になり、『幻の狙撃手がいた』という陰謀論が囁かれるようになったのです。その反省から、米国では事件の検証が徹底されるようになった。今回の事件でも、警察は弾道などの詳細をきちんと検証し、国民に疑念を持たれないように公表するべきです」
アメリカの法医学では、ケネディ暗殺の検視の不備を繰り返さないために「ノーモア・ダラス」(ケネディが暗殺されたテキサス州ダラスの失態を繰り返すな、との意味)という言葉が生まれたくらいだった。
元稿:News Week 主要ニュース 社会 【事件・安倍元首相銃撃事件】 2023年02月25日 19:02:00 これは参考資料です。
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