《余録・12.12》:「正直な人間なら…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・12.12》:「正直な人間なら…
「正直な人間なら十本の手の指よりたくさんのものを数える必要はめったにない」。19世紀半ばに米マサチューセッツ州の湖畔の丸太小屋に住み、自給自足の生活実験を行った米作家、ソローの言葉だ

▲2年余の暮らしを記録した名著「森の生活」で初めて使われたという言葉が「ブレーンロット(脳の腐敗)」。狭い常識にとらわれ、物事を単純化する風潮を批判し、英国で問題化していた病原菌による「ポテトロット(ジャガイモの腐敗)」になぞらえたらしい

スマホ依存などで知性が劣化した状態を表す「ブレーンロット(脳の腐敗)」がオックスフォード大出版局の今年の言葉に選ばれた
▲その言葉がZ世代の間でよみがえり、SNSなどデジタル世界にはまり知性が劣化した状態を指すネットスラングになった。英オックスフォード大出版局は今年の言葉に「ブレーンロット」をえらんだ
▲スマホ画面をのぞく時間は年々増える。アルゴリズムの作用や好みで情報が偏り、不寛容や社会の分断を生むエコーチェンバーやフィルターバブルも脳の腐敗の要因かもしれない
▲「脳腐れ」が広がっては心配だが、大人の学力を測る「国際成人力調査」の結果にひとまず安心する。日本は北欧諸国と並んでトップグループの一角を占めた。もっとも生活満足度は最下位というから喜んでもいられない
▲「『自然』そのものとおなじように、一日を思慮深くすごそうではないか」。ソローは時間に縛られる習慣や日課も嫌った。そんなナチュラリストのマネは無理でもたまには意識的にデジタル世界から離れたい。自然に触れることで脳や心の健康の回復につながるかもしれない。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2024年12月12日 02:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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