【大谷昭宏のフラッシュアップ・02.17】:読売新聞静岡支局のスクープは新聞、SNS、テレビのバトンリレー
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・02.17】:読売新聞静岡支局のスクープは新聞、SNS、テレビのバトンリレー
出演している静岡朝日テレビの「とびっきり!しずおか」の控室に、読売新聞静岡支局のM記者が「お目にかかりたいと思って1年たってしまいました」と言って訪ねてきてくれた。
昨年4月、当時の川勝知事が新入職員の県庁入庁式で「野菜を売ったり、牛の世話をしたりとかと違って、みなさんは知性が高い」と訓示。この発言を読売のM記者だけが問題ありとしてスクープした。と言っても、当初は朝刊静岡県版のみの囲み記事。ところがその日朝から事態は急展開。知事の電撃辞任にまで発展した。
辞任のニュースを報じる番組で私は「記者に絶対欠かせないのが人権感覚。ひとり、この発言を取り上げた記者にエールを贈りたい」とコメント。それを聞いてM記者は、ひと言私にお礼を言いたかったという。
「そうか、キミだったか」と言う私にM記者は少し説明を加えてくれた。県版だけ、しかも「議論を醸しそう」という控えめな記事だったが、この日早朝、読売オンラインがスクープとしてトップ扱いで取り上げた。
するとこれを読んだ電子版の読者がX(旧ツイッター)に「牛を飼っている人やその子どもはどんな気持ちか」「許せない! 知事がまた暴論」などと次々に投稿。それが拡散されていく中、Xをチェックしていたテレビ各局のスタッフも「あの(川勝)知事の発言だけに、これは大問題に」と東京からもクルーを走らせたという。
「知事辞任とは思いもしなかったけど、地方版の小さな記事が見事にバトンリレーされていったのです」
凋落(ちょうらく)が言われて久しい新聞。とかく問題を指摘されることの多いSNS。いま、まさに大問題を抱えて窮地に立つテレビ。だが、この3者が手を取り合って、傷つく人のために立ち向かうことだってできるのだ。
聞けばM記者は来月、若手と新入記者にバトンタッチ、東京政治部に異動していくという。3月、4月は別れと出会いの季節。
-もうすぐ春ですね。
◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび」東海テレビ「ニュース ONE」などに出演中。

■大谷昭宏のフラッシュアップ
元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】 2025年02月17日 08:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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