【社説・11.17】:北部豪雨1週間 早期の生活復旧へ全力を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.17】:北部豪雨1週間 早期の生活復旧へ全力を
沖縄本島北部に降った記録的な雨による被害から1週間が経過した。被災地で家屋や道路の復旧が続く中、沖縄地方は17日にかけて大気の状態が不安定となり、大雨への警戒が必要となっている。前週の大雨で地盤が緩んだ箇所も多く、最大限の警戒をしてもらいたい。
北部豪雨では国頭村、東村、大宜味村、名護市で、河川の氾濫などによる床上・床下浸水が広がり、各地で土砂崩れが起きた。大宜味村の津波浄水場では、ろ過池への浸水による断水が数日にわたって起きた。土砂崩れや道路陥没が発生した県道14号は復旧作業が進むが、今も通行止めを余儀なくされている。
大宜味村内の鶏舎に濁流が流れ込み、食鶏約2万6千羽が死ぬ被害が出るなど、農畜産業の被害も大きい。生活の復旧が迅速に進むよう、市町村と国、県が連携し支援に全力を挙げてもらいたい。
今回の豪雨被害で認識させられたのは、これまでと異なる気象状況から起きる、大規模な自然災害の脅威だ。
9日未明から明け方に線状降水帯が発生し、東村で観測史上最大の24時間雨量を記録した。数年に一度程度の大雨で発表する「記録的短時間大雨情報」が9、10の2日間で計18回も出された。
温暖化の影響により、こうした集中豪雨が近年各地で頻発している。猛烈な雨が局所的に降り続き、土砂災害や、河川が一気に増水して大規模な水害をもたらす。2018年の西日本豪雨のような災害は沖縄も無縁ではない。
県の災害対応には課題が突きつけられた。県が災害対策本部を設置したのは11日午前だった。与論町への災害救助法適用を決めた鹿児島県では、9日に災害対策本部体制に移行していた。大雨の特別警報の発表という違いがあったとはいえ、沖縄県の危機管理に緩みがなかったか。
氾濫した比地川は土砂が堆積し、浚渫(しゅんせつ)の要望が以前からあった。同様の要請が出ている県管理の河川は多数ある。改修が間に合わないとしても、大雨時に増水の恐れがある危険性を住民に周知しておく必要がある。行政の防災態勢について点検が必要だ。
断水や道路の寸断など山間部の住民生活を支えるインフラに大きな被害が生じた状況は、地震や豪雨に見舞われた石川県能登地域の被災地と重なる。広い地域に集落が点在し、過疎に伴う人員不足など特有の課題がある。山間地や離島の暮らしを守る消防力の確保やインフラ対策に、県民全体で向き合いたい。
幸いにも今回の豪雨被害で人的被害がなかったことは特筆すべきだ。浸水が1メートルの高さを超えた国頭村比地区では、住民らが協力して役場への避難や車を高台に移動するよう呼びかけたという。
近隣から駆け付けた多くのボランティアを含め、沖縄のコミュニティーが持つ「共助」の力を再認識したい。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月17日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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