路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【社説①・01.17】:阪神大震災30年 京滋でも「事前復興」の議論を

2025-01-17 16:00:50 | 【災害・地震・津波・台風・竜巻・噴火・落雷・豪雪・大雪・暴風・土石流・気象状況】

【社説①・01.17:阪神大震災30年 京滋でも「事前復興」の議論を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.17】:阪神大震災30年 京滋でも「事前復興」の議論を 

 大規模ビルが林立し、巨大モニュメント「鉄人28号」が力強く右腕を空に突き出す。神戸市長田区のJR新長田駅前に広がる風景は、がれきと焼け跡の街から劇的な復興を遂げたように映る。

JR新長田駅南側の若松公園に設置されている「鉄人28号」の巨大モニュメント。高さは約15m。神戸市出身で同漫画の作者である故・横山光輝氏にちなんで、阪神大震災の復興と、商店街活性化のシンボルとして設置された(写真:日経クロステック)
JR新長田駅南側の若松公園に設置されている「鉄人28号」の巨大モニュメント。高さは約15m。神戸市出身で同漫画の作者である故・横山光輝氏にちなんで、阪神大震災の復興と、商店街活性化のシンボルとして設置された(写真:日経クロステック)

 「一見すると、素晴らしいまちに見えるでしょう。でも人通りはなく、にぎわいは戻らない。借金だけが残った」。近くの大正筋商店街で日本茶販売店を営む伊東正和さん(76)は表情を曇らせる。

 かつて下町情緒があふれていた地域には、「創造的復興」を掲げた行政主導の再開発事業で商業ビルやマンションなど44棟を建設。昨年11月に最後の1棟が完成した。だが商業フロアの6割が売れ残り、シャッターを下ろした店舗が目立つ。商店街振興組合長も務めた伊東さんは「復興は失敗。過大な再開発は人災です」と言い切る。

 6434人の命を奪った阪神大震災からきょうで30年となる。

 観測史上初の震度7を神戸などで記録し、約25万棟が全半壊。交通や水道、電気などあらゆるライフラインが破壊された。巨額予算を投じて復興事業を急いだ半面、被災者の声の反映や生活支援が後回しになったとの批判は根強い。

 生まれ変わった街の姿と、住民らの嘆きは、復興とは何かという問いを改めて突き付ける。

 ◆積み残しの課題多く 

 一方で、私たちの日常を襲う震災から、人命や生活を守るため、さまざまな仕組みがつくられる契機となった。

 危機管理の在り方が問われ、地震観測体制や災害備蓄の整備、インフラや公的施設、学校などの耐震化が進められた。

 初動の人命救助では、全国の消防や警察が広域で緊急援助隊を組む体制がとられ、医療関係者による災害派遣チーム(DMAT)も各地に生まれた。

 全国から救援に駆けつける人が相次ぎ、「ボランティア元年」とも呼ばれた。活動を促進する一つとして、1998年のNPO法の制定につながった。

 被災者や市民団体による政策提言も相次いだ。住宅再建への公的支援を求める声に、国は「私有財産に公費は投じられない」と否定的だったが、超党派の議員立法で98年に被災者生活再建支援法が成立。当初100万円だった支給上限額は300万円に増え、その後の被災地での生活再建を支えた。

 だが地域や災害によっては行き届いておらず、自治体財政への負担など懸案は積み残ったままだ。

 ◆避難所の改善が急務 

 特に深刻なのは、災害で助かった命を守る環境づくりである。

 1年前の能登半島地震でも、多くの人が避難所で雑魚寝を強いられた。食事は質も量も不十分な状況が続き、不衛生なトイレが問題となった。被災した自宅での避難や車中泊を余儀なくされ、体調を壊す人が相次いだ。

 過酷な避難生活が要因の「災害関連死」が後を絶たない。

 政府は先月、避難所運営の指針を改定した。1人当たりの面積などで国際基準の反映を目指す。避難初期からベッドや温かい食事が提供されるイタリアにも学び、抜本的な体制整備を急ぎたい。

 阪神大震災以降、災害関連のさまざまな法制度が整えられたが、兵庫県の被災地などで活動を続ける津久井進弁護士は「被災者を守る本質がないがしろにされている」と話す。

 避難所の劣悪な環境が改善されない要因も、運営を当該の市町村に委ねる災害対策基本法にあるとかねて指摘されている。被災した職員に過剰な負担がかかり、ノウハウがない多くの自治体は対応しきれない状況を生んでいる。

 ◆伴走型支援の普及へ 

 国や都道府県が一段と踏み込み、災害弱者への福祉や民間との連携を促す仕組みが求められる。

 ソフト面の対策で近年注目されるのは、被災者一人一人の状況に応じて伴走型支援を行う「災害ケースマネジメント」だ。東日本大震災で仙台市が先駆的に行い、能登地震でも医療者が取り組んだ。

 国も有効性を認めるが、資金や運用などは現場任せのままだ。普及には公的な関与が鍵を握る。

 この30年で日本は少子高齢化と人口減が加速、地域のつながりは希薄になった。インフラの老朽化が進み、市町村合併や財政難で自治体の防災力低下も懸念される。

 こうした状況は京都、滋賀にも当てはまり、防災の在り方を見直す必要が増している。

 京都市は木造住宅の密集地域が多く、狭い路地には消防車が入りにくい。火災の延焼リスクは高いが、建物の耐震化は十分でなく、対策を強めなければならない。

 奥能登では、交通アクセスが限られる「半島の防災」も課題として浮上した。丹後半島をはじめ京滋でも孤立集落が続出し、救援や復旧に支障が出る恐れがある。

 災害が起こる前から、将来を見据えたまちづくりを話し合い、被害最小化の準備を進める「事前復興」の視点が欠かせない。

 災害列島に暮らす私たちには、公助も共助も自助も必要だ。阪神大震災とその後の災害の教訓を問い直し、身の回りの備えをはじめ、自治体の施策や国の役割を一つ一つ点検したい。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月17日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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