【社説・12.02】:維新新代表に吉村氏 原点回帰し存在感示せるか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.02】:維新新代表に吉村氏 原点回帰し存在感示せるか
日本維新の会の代表選がきのう投開票され、大阪府知事の吉村洋文氏が新代表に選ばれた。党勢の回復を担うことになる。
代表選の大きなテーマは、政党としての存在意義だった。吉村氏は投票前の最後の訴えで「中央集権でなく、都市中心の国家、都市が権限と財源を持って成長するという国家像を目指していく」と強調した。一極集中が続く東京に対峙(たいじ)する立場で、全国に共感を広げられるかが鍵になる。
維新は迷走が続いていた。開催を主導した大阪・関西万博は会場整備費が膨らみ、国民の不満を高めた。2022年から代表を務めた馬場伸幸氏は「第2自民党でいい」と発言。政治資金規正法改正の衆院採決で自民党に同調して賛成し、改革政党のイメージが薄れた。
10月の衆院選で得た議席数は公示前より5減の38。少数与党政権となり「第三極」として存在感を出しやすくなったものの、その役割は国民民主党に奪われている。共同通信社の11月の世論調査では政党支持率が4・4%とれいわ新選組を下回り、野党4番目に沈んだ。
党の立て直しを懸けた代表選も盛り上がりに欠けた。4人の候補者の中で吉村氏の知名度が高い上、投票権を持つ党員の多くが大阪府内に集中し、吉村氏に有利という見方が当初から大勢だった。
とはいえ、大差で代表が選ばれ、党内の期待は高いだろう。吉村氏は元代表の橋下徹氏に見いだされ、衆院議員から首長に転じた。再建の「切り札」と目される。
焦点の一つは、馬場氏が打ち出した「全国政党化」路線を引き継ぐかどうかだ。吉村氏は代表就任後、国政選挙について「全国にとにかく候補者を立てまくるつもりはない」と述べ、路線を修正する考えを示した。関西を戦略的エリアにするという。代表選で掲げた「原点回帰」を進めるのだろう。
日本維新の会は、橋下氏が大阪府知事時代の10年に立ち上げた大阪維新の会を母体とする。「地方から国の形を変える」という理念で結党されたが、いつの間にか永田町に染まり、原点を忘れた感がある。
吉村氏は代表選で党の現状に危機感を示し「既得権益とぶつかって改革するのが存在意義」「永田町のど真ん中にいないからこそ変えられる」と強調した。政局に巻き込まれず、地方自治を軸にする姿勢に立ち戻ることが、維新らしさのアピールになるのは確かだろう。
ただ、新党としての勢いにはもう期待できない。得意の「身を切る改革」の見せ場も減った。既成政党に厳しい視線が向けられる中、吉村氏には「次世代のための社会保障」など代表選の訴えをどこまで形にできるか、地力が問われる。
東京への一極集中に問題意識を持ち、是正を望む国民は多い。新体制がそうした人たちの受け皿になれるかどうか。大阪を拠点にしながらも、全国の地方の声を代弁する役割を果たしてほしい。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月02日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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