【社説②】:わいせつ保育士 処分歴照会で被害を防止せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:わいせつ保育士 処分歴照会で被害を防止せよ
子供を守り、育てるはずの保育士が、幼児らにわいせつな行為をする事件が後を絶たない。卑劣な犯罪の再発を防ぐための新制度を、確実に機能させねばならない。
こども家庭庁は4月から、子供へのわいせつ行為で処分された保育士のデータベースを導入する。全国の保育所や自治体などに閲覧する権限を与え、保育士を新規採用する際に、処分歴の有無を照会するよう義務づける。
保育士として働く場合、国家資格の取得後、都道府県に登録する必要がある。わいせつ行為が発覚すれば登録は取り消されるが、現在は雇用主が処分歴を確認する制度がなく、過去の行為を隠して再雇用される懸念があった。
データベースには、登録が取り消された保育士の氏名やわいせつ行為の内容などを掲載する。チェック漏れを防ぐため、旧姓などの情報も記録するという。
性犯罪は、子供の心身を深く傷つける。断じて許されない行為だ。処分された保育士が再び子供と接することのないよう、保育現場から遠ざけることが重要だ。データベースの創設は、一定の意義があると言えよう。
ただ、それだけでは不十分だ。過去には、保育園児にわいせつ行為をした保育士が、別の園で再び性犯罪を起こしたケースもある。最初の事件で保育士としての登録取り消しが適切に行われなかったため、次の事件につながった。
登録が取り消されなければ、データベースに掲載さえできない。各都道府県は保育所側と情報交換を密にして、確実に登録取り消しにつなげる必要がある。
また、すでに在籍している保育士については、今回のデータベースで処分歴を照会してはいけないことになっている。プライバシーへの配慮が理由だというが、各地に処分歴を隠して働く保育士がいる可能性は否定できない。
インターネットのサイトで紹介されたベビーシッターによる性的暴行事件も起きた。サイトの運営会社にシッターとの雇用関係がない場合、会社側は処分歴の照会ができないという問題もある。
データベースの運用後は、状況を見ながら、見直しを検討すべきではないか。最も重要なのは、子供を被害から守ることだ。それを忘れてはならない。
再犯だけでなく、初犯をどう防ぐかも大事な課題だ。保育所に防犯カメラを設置することも一案だろう。国や自治体はそのための補助制度なども検討してほしい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月09日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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