【社説①】:訪日客消費最高 世界へ魅力を発信する好機に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:訪日客消費最高 世界へ魅力を発信する好機に
訪日外国人客数が回復し、その消費額が大きく伸びている。日本が持つ多彩な魅力を世界に発信する好機だ。政府や自治体は、観光資源の活用に努めてもらいたい。
観光庁は、2023年の訪日外国人の消費額が、コロナ禍前の19年より9・9%多い5兆2923億円と、過去最高になったと発表した。政府が23年3月に決めた5兆円の目標を早々と突破した。
23年の訪日客数は2506万人と、19年の約8割まで戻った。さらに円安や物価高、宿泊日数が延びたことによる宿泊費の増加などで、消費額が押し上げられた。
訪日客の消費増は、日本経済の追い風となる。コロナ禍で打撃を受けた観光業や飲食業の再生に着実につなげていきたい。
消費額を訪日客の国・地域別でみると、台湾が7786億円と最多で、中国、韓国と続いた。
訪日客の数では、韓国が最も多く、2位が台湾だった。コロナ禍前に最多だった中国は、19年の3割以下にとどまり3位だった。
日本向けの団体旅行の解禁が遅れたことや、中国国内の不動産不況などの影響だとみられる。
米国やカナダなどは大きく増えた。欧米からの訪日客は消費額や滞在日数が多く、日本の伝統文化や寺社などへの関心も高い。
一方、京都市や神奈川県鎌倉市など一部の観光地では、オーバーツーリズム(観光公害)が再燃している。ホテルや旅館など観光業の人手不足も深刻だ。
そうした課題を解決するには、訪日客を日本各地に分散させる必要がある。そのために、訪日客からのニーズが高い、旅先で様々な体験をする「コト消費」の機会を提供していくことが重要だ。
例えば、山岳修験道の聖地の一つである山形県の「出羽三山」では、外国人向けの修行プログラムが人気を集めている。地元食材の料理体験などを楽しめる岐阜県高山市も訪日客で 賑 わっている。
広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ自動車道「瀬戸内しまなみ海道」に設けられたサイクリングコースは、そこからの絶景が高い評価を得ているという。
日本の清潔さや治安の良さ、アニメなどの新しいカルチャーも、訪日客をひきつけている。
日本の文化を知り、自然を楽しみたいという訪日客の求めに応えることができれば、消費を増やすだけでなく、日本の良さを世界に広める効果が期待できよう。それが国際社会での日本の発信力や信頼感の向上にも資するはずだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月09日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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