【社説①・11.30】:首相の所信表明 これで信頼回復できるか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・11.30】:首相の所信表明 これで信頼回復できるか
石破茂首相がきのう、国会で所信表明演説を行った。
最大の焦点である自民党裏金事件を受けた政治改革については、政策活動費の廃止や、政治資金を監査する第三者機関の設置などを進めると表明した。
だがそれらは既に与野党が大筋で一致した項目だ。肝心の裏金の実態解明や、30年前から先送りしてきた企業・団体献金の禁止には触れもしなかった。
そもそも政治改革に言及したのは演説の最後の方で、その分量も決して多くなかった。首相の改革に対する熱意や問題意識を疑わざるを得ない。
首相が重要政策として強調したのは外交・安全保障、経済・地方創生、治安・防災の3分野だ。どれも待ったなしであるのは確かだが、国民の信頼回復がなければ政治は前に進まない。
これでは改革が中途半端に終わった衆院選前と同じ構図になる。首相は大敗の結果を「国民からの叱責(しっせき)」と語ったが、まだ自覚が足りないのではないか。対応を改めねばならない。
演説の冒頭、首相は少数与党の政権運営に触れ「他党にも丁寧に意見を聞き、幅広い合意形成が図られるよう真摯(しんし)に、謙虚に取り組んでいく」と訴えた。
そうであれば、まず政治とカネに関する野党の主張を聞き入れ、裏金の解明や企業・団体献金の禁止に踏み出すのが筋だ。
参院では裏金議員が政治倫理審査会の出席を希望している。衆院も同様に開くべきだし、党も調査を始めねばならない。
企業・団体献金は平成の政治改革で政党交付金の導入と引き換えに見直すと決めたはずだ。当時改革推進派だった首相は、なぜいまだに実現できないのか自らの言葉で語るべきである。
経済対策についても首相の対応は言葉と裏腹だ。
所得税の非課税枠「年収103万円の壁」の引き上げに言及し「党派を超えて優れた方策を取り入れる」と述べたが、どうして協議相手が野党第3党の国民民主だけなのか。これで「幅広い合意形成」と言えるか。
熟議よりもなお「数の力」を信奉しているように映る。政治改革への対応も含め、自民、公明、国民民主の3党で押し切ることがあってはならない。
首相は党総裁選で前向きな姿勢を示した日米地位協定の改定や選択的夫婦別姓の導入に今回も触れなかった。これらはいずれも野党の主張に沿うものだ。
論戦を通じて与野党が共に政策を作り上げる仕組みを整えねばならない。全てを自民が決めた第2次安倍政権以来の強権路線と決別する国会にすべきだ。
元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月30日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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