【社説①・11.29】:ヒグマの駆除 ハンターと信頼構築を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・11.29】:ヒグマの駆除 ハンターと信頼構築を
北海道猟友会がヒグマの駆除を巡り、各支部に対して、自治体や警察との連携が不十分な場合、出動の要請に応じぬよう通知することを決めた。
砂川市の要請による駆除で発砲した同会支部長が、弾丸到達のおそれがある建物に向かって撃ったとして猟銃の所持許可を取り消され、札幌高裁が処分を妥当だとしたことを受けた。
猟友会は出動の条件として、支部と自治体、警察の3者で十分協議し、発砲の基準などを事前に明確化することを挙げる。
猟銃は安全第一に厳格に使用されるべきなのは当然だ。しかし行政の出動要請に応じ、有害鳥獣駆除という公共の利益のために発砲した責任を負わされては、安心して活動できまい。
一部の支部では既に出動要請に協力しない動きが出ている。このままでは増加するヒグマに対処できなくなる恐れがある。
ヒグマ出没の緊急時には自治体と警察、ハンターの円滑な連携が欠かせない。関係機関は信頼構築に努めてほしい。
札幌高裁判決は撃った弾丸がはね返り、周辺の人物や建物に到達する危険性を指摘した。安全を重視した判断だと言える。
一方、クマによる被害が全国で増えている現実を前に、環境省はヒグマを含むクマ類を指定管理鳥獣に追加した。保護から管理への政策転換である。
市街地での発砲も、警察官の命令がなくても行えるよう法改正を検討している。
だが、高裁判決が確定すれば、発砲には一層慎重にならざるを得ないだろう。市街地であればなおさらだ。発砲判断の責任を行政側が負う仕組みが求められる。猟友会はハンターの身分を保障するよう求めている。国は法整備を進めるべきだ。
そもそも猟友会は狩猟免許を所持するハンターによる民間団体だ。会員は減少し高齢化が進む。猟友会ばかりを頼みにするのは限界に近いと言える。駆除の体制を見直す必要がある。
道などに科学的知識がある鳥獣行政の専門職員を増やし、市町村には自ら駆除を担う野生鳥獣専門員を置くなどして、猟友会と協力してヒグマ管理にあたる体制を構築すべきだ。
狩猟に興味を持つ若者を「地域おこし協力隊」に任命することも考えられる。将来的には責任ある公的団体を設立し、駆除にあたることを検討したい。
留意すべきは、ヒグマが貴重な野生生物であることだ。かつての「春グマ駆除」では数が激減した。同じ轍(てつ)を踏まぬよう、捕獲は生息数を正確に把握しながら進めることが肝要である。
元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月29日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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