【社説②】:国連のガザ支援 活動継続へ拠出再開を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:国連のガザ支援 活動継続へ拠出再開を
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の現地職員が、イスラム組織ハマスのイスラエル奇襲攻撃に関与した疑惑が浮上したことを受け、国連はUNRWAの中立性などを独立して審査する調査団の設置を発表した。
奇襲攻撃への関与が事実なら国連の中立性を脅かす事態であり言語道断だ。徹底解明を求める。
奇襲への関与疑惑を受け、米国や日本などがUNRWAへの資金拠出の停止を決めたが、同機関は戦時下のパレスチナ自治区ガザで人道支援活動の中核だ。活動資金の枯渇は住民の命を脅かす。
日本には欧米と一線を画し、草の根や無償の手厚い援助でパレスチナ住民の信頼を得てきた歴史がある。事実解明を見極めつつ、拠出の復活を検討すべきだ。
UNRWAは1950年、イスラエル建国に伴って発生したパレスチナ難民の保護機関として国連決議に基づいて活動を開始した。現在も被占領地や周辺国の約590万人に教育や医療、インフラ整備などを提供している。
イスラエルの攻撃によりガザでの死者は2万7千人を超え、住民の約9割が住居を追われた。水や食料、医薬品の欠乏は深刻で飢餓や感染症のまん延が懸念される。
約200万人がUNRWAの援助を受け、100万人が同機関の避難所を使用。ガザでは約1万2千人の職員が雇用されている。
イスラエルは1月下旬、昨年10月のハマスによるイスラエル奇襲にUNRWA職員12人が関与したと報告した。うち10人がハマスのメンバーだったという。
これを受け、米国など10カ国以上が拠出停止を表明し、日本も3500万ドル(約52億円)の追加支援を一時停止した。欧州連合(EU)やノルウェーなどは拠出を継続するが、大口拠出国が資金提供を止めたため、3月には同機関の活動停止は避けがたいという。
ただ、一部職員の行為で機関全体を活動停止に追い込み、人命を危機にさらしてはなるまい。
国際司法裁判所はイスラエルにジェノサイド(民族大量虐殺)防止を命じる仮処分を出しており、人道支援を停止に追い込むことは虐殺防止と矛盾しかねない。
パレスチナ難民の帰還権を否定するイスラエルはUNRWA解散を訴えてきたが、同機関が果たす役割は否定できない。国際社会は活動継続の道を探るべきである。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月09日 08:20:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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