【社説・12.10】:大統領弾劾廃案 韓国の長期混乱が心配だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.10】:大統領弾劾廃案 韓国の長期混乱が心配だ
韓国国会に提案された尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の弾劾訴追案は、与党議員の大半が投票を棄権したため廃案となった。韓国政治は混乱の長期化が避けられそうにない。
与党「国民の力」の議員のほとんどは議場を去り、採決に必要な議員数に満たなかった。結果的に、国会は非常戒厳で国民を混乱させた責任を明確にできなかった。
与党の対応は揺れた。韓東勲(ハンドンフン)代表は採決前日、弾劾訴追案に賛成する意向を表明していたが、採決直前になって当初の方針通りに反対することを決めた。
与党には保守系の朴槿恵(パククネ)大統領が弾劾の後に罷免され、革新系の文在寅(ムンジェイン)政権の誕生を許した苦い経験がある。
尹氏の弾劾案が可決されて来年にも大統領選となれば、最大野党「共に民主党」に政権を奪われる可能性がある。ただし李在明(イジェミョン)代表は刑事裁判を抱えており、有罪判決が確定すれば大統領選に立候補できなくなる-。
こうした読みから、与党は世論の批判が野党に向かうまで時間稼ぎをして、体制を立て直そうとしたようだ。そうであれば、内向きな判断と言わざるを得ない。
採決当日になって尹氏が国民への謝罪談話を発表したことで、与党は弾劾に反対する方針を固めた。
尹氏は非常戒厳で国内を混乱させたことについて「国民に不安と不便をかけた」と謝罪し、進退は「与党に一任する」と述べた。
国民への謝罪は、非常戒厳を解除して直ちに行うべきだった。
暴挙を反省し、記者会見をして国民の声に耳を傾けるのが当然だ。わずか2分間の談話で済む問題ではない。尹氏には引き続き、非常戒厳に至った経緯を明らかにする責任がある。
大統領職にとどまることになったとはいえ、尹政権はレームダック(死に体)も同然だ。野党は弾劾訴追案を再提出する構えを見せる。検察当局の捜査も始まった。
与党内では、憲法改正で大統領任期を短縮する案が出ている。国民の力の韓代表は、尹氏は退陣まで職務から排除され、首相と党が協議して国政運営に当たると述べた。どこまで可能か疑問だ。
韓国は当分の間、国内政治の対応で手いっぱいになり、外交に力が割けないだろう。北朝鮮や中国の動きで緊張が高まる東アジアの安全保障環境への影響が気がかりだ。
野党の弾劾訴追案には、日本との関係を重視した尹氏の外交を指弾する内容が含まれている。懸念は来年で国交正常化から60年を迎える日韓関係にも及ぶ。
野党は数の力で政権を揺さぶることばかりに注力せず、韓国が国際的な信頼を回復するように努めるべきだ。
元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月10日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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