【社説①・03.09】:下請法改正 対等な関係促す契機に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.09】:下請法改正 対等な関係促す契機に
政府は約20年ぶりとなる下請法の抜本改正案を今国会に提出する方向だ。取引適正化で中小企業が価格転嫁できるよう後押しするのが狙いという。
下請けの収益が改善すれば、大企業中心の賃上げが波及することも期待できよう。中小企業で働く人は全国で7割、道内は8割超を占める。
大手優先のあしき商慣習は中小の生産性を損なう。トヨタと日産の各系列会社が自動車部品の金型を下請けに無償で長期保管させ、現行の下請法違反で先月勧告を受けたばかりだ。
出版や小売りなどでも「下請けいじめ」とされる摘発が相次ぐ。悪弊を絶つ必要がある。
立場の弱い相手にコストを押しつけ業績を伸ばしても真の競争力にはつながらない。規制強化で産業界の意識が変わり自浄作用を高めることを求めたい。
改正に合わせ「下請け」という名称も「中小受託事業者」に見直す。発注側と受注側の間の上下意識をなくすのが目的だ。
とはいえ実態が伴わなければ対等な関係は築けまい。大手が減資して「中小企業」扱いとなり、法適用を逃れるケースも問題視されている。
改正案では従業員数を適用基準に加える。製造業なら発注側は従業員300人超、下請けは300人以下が対象だ。
ただしソフトウエア産業など従業員数だけでは判断できない場合もあろう。支配関係や指示系統も総合的に判断すべきだ。
大企業が著しい低価格を押しつける「買いたたき」は現行法でも禁じており、支払い遅延なども含め公正取引委員会の指導は年間8千件に及ぶ。
だが「著しい低価格」の算定は外部からは難しく、摘発にも限界があった。改正案では大企業が中小企業との価格協議を拒むこと自体を禁じている。
現金化までに時間がかかり、中小の資金繰りを圧迫する手形払いも認めないとした。政府は来年中に手形交換を廃止する方向だがこれに先んじる規定だ。
気がかりなのは形だけの価格交渉や、手数料が必要な売掛債権払いなど抜け道も考えられることだ。実効性を高めるため、関係省庁と公取委が連携したきめ細かい調査が肝心である。
物流業界はこれまで独占禁止法で特殊指定されており、下請法の適用外だったが、今回は新たに対象に加えることになる。
トラック運輸では荷主の力関係が強く、運転手が荷降ろしや荷待ちを強いられることが、昨年施行の残業規制でも焦点となっていた。実態を解明し働き方改革につながることが重要だ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】 2025年03月09日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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