【社説①】:日米韓首脳会談 世界に示した揺るぎない結束
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:日米韓首脳会談 世界に示した揺るぎない結束
◆安全保障協力を新たな次元へ◆
日米韓の揺るぎない結束を世界に示した節目の会談と言えるだろう。3か国で安全保障協力を深化させ、国際秩序の再構築へ尽力すべきだ。
日米韓首脳会談が、米ワシントン郊外の大統領の山荘キャンプデービッドで開かれた。バイデン米大統領が、岸田首相と尹錫悦韓国大統領を招待した。
日米韓首脳会談は1994年以降、国際会議の場を利用して計12回開かれたが、この会談を単独で開催したのは今回が初めてだ。
◆特筆される協議定例化
会談を呼びかけた米国には、ともに米国の同盟国である日本と韓国に、アジアの平和と安定の維持に重要な役割を果たしてもらう、という狙いがあるのだろう。
ロシアがウクライナ侵略を開始してから間もなく1年半となるが、停戦の兆しは依然見えない。アジアでは中国が台頭し、北朝鮮は軍事挑発を続けている。米国が世界中に目を配り、秩序をリードしていくのは難しい。
日本は厳しい国際情勢を直視して、自らの防衛力を着実に高めるとともに、米国の負担の軽減に努めていく必要がある。
今回、特筆されるのは、3か国会談の定例開催で合意したことだ。首脳間に加えて外相、防衛相、安保担当の高官の各レベルで、それぞれ年1回開催するという。
日韓関係は、尹氏が打開するまで元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟問題で冷え込んでいた。日米韓の協力も停滞が続いた。
そうした状況が一変したのは、日本を「価値観を共有するパートナー」と位置づける尹氏の建設的な姿勢によるところが大きい。
今回の会談を機に、重層的な協議を定例化し、3か国が将来的に連携していく体制を構築することが極めて重要だ。
バイデン氏が会談後の共同記者会見で、「防衛協力を前例のないレベルに引き上げる。今後何十年という関係を築いていく」と述べたように、日米韓の協力を新たな次元に高めていきたい。
北朝鮮の弾道ミサイル防衛は、日米両国がイージス艦などに迎撃ミサイルを、韓国は南部に米軍のミサイル防衛システムをそれぞれ配備し、対応している。
そうした装備体系を3か国で一体的に運用し、迎撃の効果を上げることも検討課題になろう。
◆「対北」から役割拡大
首脳会談ではまた、自衛隊と米韓両軍で対潜水艦などの共同訓練を定例化することで一致した。
様々な取り組みを確実に進め、抑止効果を高めねばならない。
3首脳がまとめた文書「キャンプデービッド原則」には、「力による一方的な現状変更の試みに強く反対」し、「台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認した」と明記された。名指しは避けたが、中国を念頭に置いたものだ。
日米韓の協力はこれまで、北朝鮮の核・ミサイル開発への対応が主眼だった。今回の会談は、そうした3か国の役割を、インド太平洋地域全体の安全確保へと拡大した、と言えるのではないか。
中国は事実上、北朝鮮の軍事行動を支え、さらに台湾を威嚇し続けている。そうした活動を見過ごせば、朝鮮半島を含め、地域全体の安全が脅かされてしまうという判断が働いたのだろう。
首脳会談では、経済安全保障も議題となった。3首脳は、半導体など重要物資のサプライチェーン(供給網)を強化していく方針を確認した。
鉱物資源の豊富な中国は、対立する国に物資の輸出を禁じるなど経済的な威圧を繰り返している。中国に資源を依存するリスクは大きい。日米韓で安定した供給網を築くことは理にかなっている。
現地では、日米、日韓の個別会談も行われた。
日米首脳会談では、北朝鮮などが開発中の極超音速兵器に対抗するため、新型迎撃ミサイルを共同開発することで合意した。
◆海洋放出へ理解広がる
岸田首相と尹氏は会談で、日韓両国が来年、ともに国連安全保障理事会の非常任理事国を務めることを踏まえ、国連でも緊密に連携していく方針を確認した。
また、尹氏は会見で、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出計画について、国際原子力機関(IAEA)の「妥当」という結論を念頭に「IAEAの調査を信頼している」と述べた。
韓国の一部ネット媒体は、日本をおとしめようとして、処理水を巡る偽情報を流している。そうした中でも尹氏が科学的な判断を尊重し、海洋放出に理解を示したことは評価できる。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年08月20日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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