【社説②・01.16】:半導体の国支援 丸抱え脱却の道筋示せ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.16】:半導体の国支援 丸抱え脱却の道筋示せ
特定企業への際限のない国の支援が許されるわけではない。自立への道を国民に示すべきだ。
先端半導体の国産化に向け、政府が後押しを強めている。昨年11月に決めた経済対策で、AI・半導体産業の基盤強化策として2030年度までの7年間で10兆円以上を支援する枠組みを示した。
ラピダスのIIM-1完成予想図
ラピダスとIBMによる2nm GAAウエハーの試作品
中核となるのが、高性能半導体の量産を目指すラピダスで、1千億円を出資するため、来年度予算案に計上した。2027年の量産開始に向け設備調達費などに充てるとしている。
補助金や税の優遇などですでに9200億円の助成を決めている。先端半導体の量産には5兆円が必要ともいわれ、金融機関からのラピダス融資には政府保証を付ける支援も決まっている。
ラピダスは、半導体の製造や装置開発で実績を積んだ経営者に対し、トヨタ自動車やNTTなどが出資して22年に発足した。
丸抱えともいえる政府支援は、ロボットや車の自動運転などで、今後の需要増が見込める次世代半導体を国産化し、国際的な産業競争力を高める狙いという。
ラピダスが巨大工場の建設を進める北海道千歳市では雇用増や賃金水準の上昇がみられる。台湾の半導体メーカーが進出した熊本県とともに、地域経済の底上げと雇用創出につながることへの期待がある。
一方で、先端分野の製品の量産に本当にこぎ着けられるのか。試作すら始まっていない製品の買い手に見通しはあるのか。未知数な要素が多いのは否めない。
政府支援には財源が不確かな面も大きい。
トヨタなどが追加出資を表明するものの、総額は1千億円程度にとどまり、金融機関はさらに及び腰とされる。
民間企業として自立する道筋を描けないままでは、投資意欲が鈍いのも当然だろう。
特定企業の事業リスクを国が全て背負うのでは、責任の所在があいまいになったり、世界的な開発競争に臨機応変に動けなかったりする懸念も指摘される。経済産業省は、外部有識者の評価によって達成状況を確かめつつ進めるとしているが、機能するのか。
日本は政府主導で半導体産業の再編を試みながら失敗を繰り返し、巨額の国民負担を生じさせた過去がある。その二の舞いを演じてはなるまい。
国支援の向こうにある展望を早急に示してほしい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月16日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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