【社説①・01.16】:医師の偏り 「直美」が映す規制の必要
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.16】:医師の偏り 「直美」が映す規制の必要
勤務医の不足が深刻化する中、医師になって間もない若手が美容医療に直行する「直美(ちょくび)」が、象徴的に問題となっている。
厚生労働省は医師の偏在を是正する対策をまとめたが、検討課題だった踏み込んだ規制案は棚上げが目につく。
24日に召集される通常国会には、医療法改正案が提出される見込みだが、実効性のある取り組みを与野党で検討すべきだ。
全国の医師数は医学部新卒で毎年4千人前後増えているが、偏在が著しくなっている。患者対応の難しさや不規則さなどから外科、救急、小児などの診療科を避けたり、地方の病院勤務を敬遠したりする医師の傾向が背景にある。
京都、滋賀では京都市や大津市の医師数が多いの対し、丹後や甲賀などの医療圏は足りない。
一方、休日対応や宿直がなく、医療機関が自由に料金を設定できる保険外診療で、高収益を得やすいとされる美容外科の診療所は2千を超え、2023年までの3年間で4割増となっている。特に医学部を卒業し、2年間の臨床研修を終えて間もなく美容医療に進む若手の参入が目立つとされ、施術トラブルも急増している。
対策では、診療所が多い都市部などで、開業希望者に地域で不足する救急医療や在宅医療といった機能を担うよう、都道府県が要請できる。従わない場合、理由の説明を求めた上で勧告や公表を検討するという。
臨床研修後に3年以上の病院勤務経験があることを保険医療の要件とし、直美などを抑制したい考えだ。美容医療は保険外だが、傷の治療などで保険診療を行うこともあるためである。だが、手ぬるいとの指摘も聞かれる。
美容クリニックなどには別途、年1回の安全管理状況の報告を求める方針も厚労省は示す。
いずれも従来の是正策の枠内にとどまる。外科や救急の勤務医を増やす具体策も乏しい。地域や診療科ごとに必要な勤務医数を見込み、計画的に配置する方策も考えるべきではないか。
政府の審議会でも、営利主体の自由診療への規制や、府県の権限強化などが課題に上がったが、医師の選択を制限するとして日本医師会などが反発し、見送られた。
医師の養成には多額の税が投じられ、保険診療は国民の負担が支えている。公共インフラとしての地域医療を立て直す抜本策について、国民目線の開かれた議論を求めたい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月16日 16:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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