【主張】:札幌招致の苦境 JOCは継続より猛省を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張】:札幌招致の苦境 JOCは継続より猛省を
札幌市と日本オリンピック委員会(JOC)が進める2030年冬季五輪招致は、継続が極めて難しくなった。
東京五輪・パラリンピックを巡る汚職や談合事件で、一握りの関係者が不正な利益を分け合う実態が明らかになり、国民が大規模大会のあり方に抱く不信感は強まる一方である。
札幌招致の機運醸成活動は休止したままだ。スポーツ界などからは、招致の目標を34年以降に切り替える案も浮上している。札幌はこれまで最有力候補とみられていただけに、残念でならない。
先の市長選で3選を果たした招致推進派の秋元克広氏も、「本質的に議論するのは限られた時間内では難しい」と30年招致には慎重な姿勢だ。
札幌招致の苦境は、東京大会の不正に手をこまぬいたスポーツ界の責任でもある。仕切り直しが最善なのは明らかだが、ほとぼりが冷めれば、と考えるのは安直に過ぎよう。根本的な問題は何一つ解決していないからだ。
東京の組織委員会では、JOC前会長の竹田恒和氏、現会長の山下泰裕氏が副会長に就きながら、その影は驚くほど薄かった。理事会の機能不全を看過し、大会の1年延期という意思決定の場からも除外される体たらくだった。
JOCに猛省の色は見えない。ただでさえ発信力や指導力を持つ人材の育成が進まず、選手強化費でも国に依存したままである。
山下氏は令和元年夏のJOC会長就任に際し、「社会に不可欠な存在として、その意義を高めたい」と述べた。東京大会を経たいまも、存在意義の乏しい現状に危機感を持つべきだろう。
日本のスポーツ界は何をなすべきだったのか。社会に必要とされるために何をどう改めるのか。山下氏の言葉で、東京大会の総括と反省を示すのが筋だ。
札幌招致が実現したとしても、「代理店頼み」の旧弊から脱した大会運営が本当に成り立つのかという疑問は残る。招致の旗を振る前に、具体策が聞きたい。
ここに来て、30年大会にはスウェーデンが意欲を示している。国民への意識調査では約7割が賛意を示したという。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2023年05月07日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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