【社説・05.08】:国体が国スポに 開催意義を見直す契機に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・05.08】:国体が国スポに 開催意義を見直す契機に
国民体育大会(国体)から名称を変えた国民スポーツ大会(国スポ)について、全国の知事から見直しや存廃の是非を問う声が上がっている。時代に合った大会に再構築するきっかけとしたい。
国体は終戦翌年の1946年から毎年、都道府県の持ち回りで開催された。昨年の鹿児島大会が最後で、今年は初めての国スポが10月に佐賀県で開かれる。
見直し論議は先月、全国知事会長の村井嘉浩宮城県知事が「廃止も一つの考え方ではないか。非常に財政的な負担は大きい」と問題提起したことが発端となった。
開催に必要な費用と人手が重荷になっており、多くの知事から村井氏に同調する発言が相次いでいる。福岡県の服部誠太郎知事は、運営や施設改修などに数百億円を費やす実態から「総合開会式や競技種目の規模縮小を検討すべきだ」と述べた。
国スポは日本スポーツ協会と文部科学省、開催都道府県の共催で、近年は全国障害者スポーツ大会が併せて開催される。経費の大半は開催地が負担する。
戦後間もない頃に比べ、健康とスポーツに対する国民の関心は高まり、全国各地にスポーツ施設や競技団体が整った。選手と指導者の育成、競技力向上を含め、国を挙げてスポーツを普及する国体の目的は達成したと言える。
費用負担以外でも問題点が指摘されていた。開催県は都道府県対抗で総合優勝するために、県外から有力選手を集めていた。
「国内最大で最高の総合スポーツ大会」の理念も現状に合っていない。国際大会を優先し、出場しないトップ選手が少なくない。各競技の日本一を争う全日本選手権、全国高校総体(インターハイ)、年代別大会も開かれており、国体は全ての選手が目標とする大会ではなくなっている。
国体・国スポは2034年の沖縄県で2巡目を終える。これまでと同じ形式で3巡目に入ることは、開催地の住民の理解も得られまい。
日本スポーツ協会は検討部会を設け、国スポの在り方を探る。全国知事会も加わる見通しだ。スポーツ関係者以外の意見を交え、存廃を含めて議論してもらいたい。
大会を続けるのであれば大胆な改革が必要だ。
従来のままでは、人口減少と財政難で単独開催が困難な県が増える。負担を分散させるため、インターハイのように複数の都道府県で共同開催することは検討に値する。毎年開催することの是非も論点になりそうだ。
開催意義の再検討も求められる。人生100年時代を迎え、競技スポーツから生涯スポーツに軸足を移し、新たな理念の下で競技種目と参加資格を再編するのも一つの考え方だろう。
出場を目指す選手、開催地の住民に歓迎される国スポ像を追求してほしい。
元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年05月08日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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