《余録・01.25》:満ち足り愉快な気持ちを表す…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・01.25》:満ち足り愉快な気持ちを表す…
満ち足り愉快な気持ちを表す「楽しい」という言葉の語源は諸説ある。一説によると、手(た)を伸ばして喜ぶことに由来する(日本語源大辞典、小学館)
▲そんな伸びやかな心境を指す言葉が、政権のスローガンに登場した。石破茂首相が施政方針演説などで掲げた「楽しい日本」である。作家の故・堺屋太一氏の著作からの引用で、富国強兵による「強い日本」、経済が栄える「豊かな日本」に続く新しい国の姿としている。首相は演説で「今日より明日はよくなると実感でき、一人一人が自己実現を図れる」国づくりを強調した
▲故・安倍晋三元首相はかつて「美しい国、日本」を掲げた。「楽しい日本」は、社会の閉塞(へいそく)感を打ち破りたいというメッセージなのだろう。だが、困難に向き合いながら暮らす人々に、このかけ声は響くだろうか。目標とはいえ、現実との落差に違和感を覚える人も多いはずだ
▲国会では少数与党の厳しい現実が首相を待つ。「手を伸ばす」といえば、自民党は日本維新の会と教育無償化を巡り協議するなどテーマ別に各党と接点を探り、局面打開を図る。楽しいどころか、四苦八苦だ
▲偶然ながら、渦中にあるフジテレビの発展期のキャッチフレーズは「楽しくなければテレビじゃない」だった。組織のゆがみは当時から始まっていたのかもしれない
▲中身ある政策を示すことはもちろん、まずは政治とカネの問題に向き合い信頼を取り戻すことだ。さもないと「楽しい日本」の言葉ばかりが上滑りしてしまう。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2025年01月25日 02:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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