【社説②】:鳥インフル発生 拡大防ぐ対策を万全に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:鳥インフル発生 拡大防ぐ対策を万全に
胆振管内白老町の養鶏場と網走市の農場で致死率の高い高病原性とされる鳥インフルエンザが確認された。道内発生は6年ぶりだ。
白老では道内過去最大の約52万羽の殺処分が進み、網走でもエミューなど計約600羽に及ぶ。
今季の道外での発生は青森県から鹿児島県まで19カ所に上る。道内もカラスなど野鳥の感染例が相次ぎ、懸念が強まっていた。
拡大を防ぐには早期封じ込めが重要だ。十勝管内清水町で発生した前回は初動の遅れが指摘され、道はマニュアル改訂や訓練強化に努めた。万全の対策を求めたい。
国内で鶏肉や卵を食べて感染した事例はないという。消費者としても冷静な対応を心がけたい。
養鶏業経営への打撃や価格変動も心配だ。国や道は金融面も含めた迅速な支援を図る必要がある。
道によると15日に白老の養鶏場から「死ぬ鶏が増えた」と通報があり、簡易検査で9羽が陽性だった。16日の遺伝子検査では高病原性の可能性があると判明した。
確定を待たず、国は感染拡大防止のため、全鶏舎の採卵鶏を殺処分対象とした。道も鈴木直道知事が本部長の対策本部を設け、自衛隊に災害派遣を要請した。
対象数が多いため殺処分完了には10日間ほどかかるが、今のところ対応は手順通り進んでいる。
養鶏場が素早く通報した効果も大きい。ウイルスは鳥が死ぬまで体内で増えるとされる。わずかな兆候も見逃さないことが重要だ。
道内は効率化で養鶏施設の飼育数拡大が進む。白老のような採卵鶏は1戸当たり平均9万羽で全国の1・3倍に上り、ブロイラーでは56万羽と8倍以上になる。
判断が遅れれば連鎖的な感染で食産業の基盤を脅かしかねない。
今季流行するウイルスは感染力が強いH5亜型という。専門家によると昨冬欧州でまん延し、ロシア・シベリア経由で渡り鳥によりもたらされた可能性が強い。
雪解けが進み、渡り鳥は北上し道内を通過する。各地で野鳥感染が広がり、札幌では捕食したとみられるキタキツネやタヌキからも検出された。哺乳類で国内初だ。
日常的にウイルスが存在する状態だった恐れがある。専門家の間では「既に全道に広がっている」との指摘が出ている。
今回の養鶏場も対策は十分取ったという。行政や研究機関は防御策の調査研究を進めてほしい。
野鳥などの死骸を発見したら近寄らず行政に通報することも大切だ。地域全体で拡大を防ぎたい。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月19日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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