【社説①・12.01】:トランプ関税 米国への打撃も大きいはずだ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.01】:トランプ関税 米国への打撃も大きいはずだ
米国の大統領選で高関税政策を掲げてきたトランプ次期大統領が、初めて具体的な戦略を明らかにした。関係国は、その真意を見極めながら対処していくことが大切だ。
トランプ氏は11月25日、中国からの輸入品に10%の関税を上乗せし、メキシコとカナダに対しても25%を課す考えを表明した。
その理由として、中国で原料が製造された合成麻薬「フェンタニル」が、メキシコ経由で米国へ流入していることを挙げた。
トランプ氏は1期目に多くの中国製品に25%の関税をかけ、現在も続いている。薬物問題が収まるまで追加関税を課すという。
メキシコとカナダに対しては、不法移民の流入により、米国に犯罪や薬物がもたらされていると指摘した。来年1月20日の就任時に大統領令に署名する考えだ。
「米国第一」主義のトランプ氏が多国間の枠組みを軽視し、2国間のディール(取引)で実利を得ようとすることに懸念は強い。
トランプ氏は11月27日、メキシコのシェインバウム大統領と不法移民問題などについて電話で協議し、29日には訪米したカナダのトルドー首相と会談したという。
不法移民や違法薬物の問題で対応策を引き出すことに主眼があるのか。貿易赤字の削減や製造業の国内回帰を狙う第一歩なのか。
相手を惑わせるかのような言動を繰り返すのも、トランプ流交渉術なのだろう。関係国は、丁寧に本音を探っていく必要がある。
今回の関税政策は、敵対する中国に加え、米国が自由貿易協定を結ぶカナダとメキシコを含む貿易相手上位3か国を対象にした。
実際に関税を発動すれば、サプライチェーン(供給網)の混乱を引き起こし、悪影響は甚大だ。貿易の縮小や雇用の喪失を招くリスクもある。販売価格に転嫁されれば、インフレに悩む米国の低所得者層を苦しめることになろう。
日本への打撃も大きい。トヨタ自動車や日産自動車、部品メーカーなど多くの企業が、米国より製造コストが低いメキシコとカナダに工場を設けているからだ。
ゼネラル・モーターズ(GM)など米自動車大手も同じような供給網を築いている。米企業側の懸念も強いのではないか。
トランプ氏はこれまで、中国からの輸入品に一律60%、全世界には10~20%の関税を課すと公約してきた。各国の政府と企業は、政策の動向や問題点を共有し、トランプ氏が自制するよう粘り強く働きかけていってもらいたい。
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