【社説①・12.03】:マイナ保険証 政府は混乱防止に力を尽くせ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.03】:マイナ保険証 政府は混乱防止に力を尽くせ
政治の強引な決定が国民生活の混乱を招いてしまった。これまで同様、誰もが不安を感じることなく、医療機関を受診できるよう万全の体制を整えることが急務だ。
健康保険証の新規発行が停止された。今後は保険証の機能を持たせたマイナンバーカード「マイナ保険証」の使用が原則となる。
マイナ保険証を持たない人には、健康保険組合や市町村が「資格確認書」を交付する。資格確認書の有効期限は最長5年だ。
当面は、会社員が加入している健康保険組合の保険証も、最長で1年間、継続して使用できる。
一方、75歳以上が対象の後期高齢者医療保険の保険証は、大半が来夏に有効期限が切れるという。政府は来夏に再び混乱が広がらぬよう、高齢者らへの対応を優先せねばならない。
保険証一枚でどの医療機関も受診できる体制を、かえって煩雑にしてしまった責任は国にある。
政府は2022年、2年後をめどに「マイナ保険証と保険証の選択制の導入を目指す」という方針を決めた。ところが、当時の河野太郎デジタル相が22年10月、唐突に保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化する方針を表明した。
その後、マイナ保険証に他人の情報が 紐 付けられるなどのミスが次々に発覚したが、政府は総点検の結果、「国民の不安は 払拭 された」とし、導入を予定通り進めることを正式に決めた。
だが、今もなお、通信の不具合が原因でマイナ保険証を読み取るカードリーダーが機能しない、といった事例は続いている。
病院や薬局でのマイナ保険証の利用率は今年10月時点で15%にとどまっている。マイナ保険証に対する不信感が根強く残っているためなのは明らかだ。
行政がデジタル化を進めることは大切だ。転出入の届け出や子育て関連の申請がオンラインでできれば、利便性は向上しよう。
ただ、国民生活に重大な影響を与える改革は、関係者の理解を得ながら着実に進めるのが筋だ。政府はそうした努力を 蔑 ろにしたと言わざるを得ない。
マイナ保険証を持っていない人、持っていても使い方の分からない人など、国民の間にはどう医療機関を受診すればいいのか不安が生じている。政府は丁寧に説明を重ねていくべきだ。
今後の状況次第では、最長1年間としている現行の保険証の使用期間を延長することも、検討の対象となるだろう。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月03日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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