【社説①・03.01】:維新兵庫県議の処分 党として襟正す必要がある
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.01】:維新兵庫県議の処分 党として襟正す必要がある
昨年11月の兵庫県知事選で、日本維新の会に所属する県議が真偽不明な情報の拡散に加担していた。
斎藤元彦知事のパワハラ疑惑などを内部告発した元県幹部の私的情報や、非公開の議会の音声データなどを、政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首にリークした。県議としてあるまじき行為である。
維新の地方組織「兵庫維新の会」は、県議会調査特別委員会(百条委)の委員だった県議2人をそれぞれ除名、離党勧告とする処分を決めた。
2人は無所属で活動する意向だが、問題は情報漏えいにとどまらない。内部告発自体に疑念を生じさせる意図があったのは明らかだ。百条委の信頼性をおとしめた責任は、議員辞職に値する。
音声データが提供されたのは知事選告示直後である。内容は百条委の証人尋問で、斎藤氏の側近だった元副知事が元県幹部の公用パソコンにあったプライバシーに関わる文書について話し始め、委員長が制止した場面だった。
知事選に立候補した立花氏は、県議会の不信任決議を受けて失職した斎藤氏を応援する「2馬力」選挙を展開していた。立花氏は音声を街頭演説やネットで公表。「百条委が不都合な真実を隠している」と批判し、交流サイト(SNS)などで拡散された。斎藤氏の再選にも影響を与えたと考えられる。
先の百条委は知事選への影響を考慮して秘密会で実施された。非公開に賛成しながら平気でルールを破った。音声データを提供した県議は謝罪の一方で、「発信力のある立花氏に渡すことで県民が知ることができると思った」と「公益性」を主張した。耳を疑わざるを得ない。
副委員長だった県議は、委員だった元県議が疑惑告発の「黒幕」だったと名指しする文書を提供した。立花氏が発信して拡散され、誹謗(ひぼう)中傷を受けた元県議は辞職。その後亡くなった。自殺とみられる。
疑惑と関連性が薄い、真偽不明の情報の拡散に何の公益性があるのか。それによって民意を操作したとなれば、選挙をゆがめる行為にほかならない。事態は深刻である。
理解できないのは維新の吉村洋文代表(大阪府知事)の当初の反応だ。「本人たちの思いがあるのは分かるがルール違反」と、ある程度理解を示すかのような発言をした。政党としての責任が問われる局面と感じていないのか。
選挙を重ねるごとに首長や議員を増やしてきた維新だが、党内のガバナンス(組織統治)が大きく揺らぐ。支持率の低迷とも無縁ではなく、議員らの教育は喫緊の課題だろう。看板の「身を切る改革」は自らに向け、襟を正す必要がある。
問題の発端は幾つもの疑惑を告発された斎藤氏にある。百条委は近く最終報告書を示す。パワハラは「一定の事実が確認された」とし、告発を公益通報として扱わなかった県の対応も「体制整備義務違反の可能性がある」と指摘する方針という。さらに解明に力を尽くしてもらいたい。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月01日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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