たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

星組『霧深きエルベのほとり』-ナウオンステージより

2020年09月27日 16時15分16秒 | 宝塚
星組『霧深きエルベのほとり』-オンデマンド配信で視聴
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/4d1eb289745de3abc09d84f1a1d17f9f


星組『霧深きエルベのほとり』『エストレージャス』_二度目の観劇でした(4)
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/f75956d9cc8686efaacdd15dd11be9ef

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第15場B ハンブルクの酒場プロースト
     -祭りの終わり-


カール「あんた、なんて名だったけな」

ヴェロニカ「ヴェロニカ」

カール「ヴェロニカ、あんたを、マルギットって呼んでもいいか」

ヴェロニカ「・・・いいよ、読んでみな。悪い気はしないね」

カール「あんたを、マルギットだと思って、俺いいたいことを言うからな。マルギット、マルギット、俺あ、ほんとうはねえ、お前が好きで好きでたまらねえんだよぉ。お前のためなら死んでもいいと思ってるんだよ。だけどお前には、フロリアンが一番ふさわしい亭主なんだ。幸福(しあわせ)に幸福(しあわせ)に暮らせよ、なあ、幸福(しあわせ)になれよマルギット!幸福(しあわせ)になれマルギット、幸福(しあわせ)になれ、幸福(しあわせ)になれ、幸福(しあわせ)に・・・マルギット・・・マルギット・・・」

カールはヴェロニカの膝に突っ伏して、おいおいと、子どものように声をあげて泣く。
音楽優しく。

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 マルギットの怒りのピアノをシュラック家の窓の外で聴いた後、強がって仲間と「ブラボー「」と酒を飲んでいたカールがヴェロニカには本音をもらしてさめざめと泣く場面、紅カールの真骨頂だと思います。こっちも涙が出てきちゃうよ、ほんといい奴、優しい奴、不器用な生き方しかできなくって愛しい奴。

 
 
オンデマンド配信で視聴しているナウオンステージより、

カール・シュナイダーを演じた当時の星組トップスター紅ゆずるさん

菊田一夫先生が宝塚のために書き下ろした作品、
台本を読んだ時、言葉のもつ力が素晴らしいと思った。台本を読んでいるだけで泣ける台本はなかなかない。
菊田先生はどういう思いでこれをかかれたのか。
(作曲の)入江薫先生には音楽学校時代に指導をうけていた、「鴎の歌」を歌ったかもしれない、もっとちゃんときいておけばよかった、今は亡き方々を思うことも大切なこと。

(初演は1963年)、当時かかれたカール・シュナイダー像と今自分が演じるカールとは違うと思う。
カールはとてもしあわせに憧れているという設定でやっている。その時のしあわせとはどういうものなのか。
今わたしたちのしあわせはしあわせに満ちあふれすぎていて、モノがありすぎて、よくわからなかったりする。でも当時のカールは、水夫は何をしあせとするか、なぜ水夫をしているのかというバックボーンを考え続けている、今なお考えても考えても、まだあたっていない未知のお宝が眠っているのではないかと思う深い役。

演じていて毎日大変苦しい。
マルギットと出会い急に恋をしたわけではなく、最初はひっかけたぐらいで、そこから恋におちていく。フロリアンと出会ったりしながら、カールの人格がだんだん明らかになっていく。
結果はヴェロニカが言っているように、最後に悪党ぶって、楽しんでいるみたいだけど本当は繊細でピュアな人だということを芝居で表現するのはすごくむずかしい。その場その場の空気、間を感じながら演じている、お芝居とは?をあらためて考える。

毎回毎回あたかも初めて出会ったかのように演じることを心がけている。

昔を重んじながら今もあらたに進化するということを心にとめてがんばっていきたい。



 宝塚歌劇が105周年を迎えた2019年1月の元旦から宝塚大劇場で上演され、3月24日の東京宝塚劇場で千穐楽となった舞台。わずか一年前のことですが、この時から社会は大きくかわりました。コロナとしゃくねつじごくがもたらした心身への影響、生活の変化は計れ知れないほど大きいのかもしれません。個人的に団塊の世代が後期高齢者になった社会は、下の世代が支え切れない、さらにいびつな逆三角形となり希望がみえにくい社会になっていくと思っていますが前倒しになったのかもしれません。納めなくていいよと認めたものを納めた方が将来得ですよとおどすみたいなこと、すでに十分いびつだと思いますが、若い世代にとってさらに生きづらい社会、希望のみえにくい社会になってしまったのかもしれません。

 今日またつらいニュース。社会の何を映し出している鏡なのか。いちばん大変なのは自分で選びとったわけではない、下ろすことのできない重すぎるものを背負った生きていかなければならなくなった、血のつながった小さい命、支援の手が今すぐ届きますようにと祈るばかりです。

 生き延びていくために、帝国劇場の『ローマの休日』のチケット東宝ナビで当選したし、その前に東京宝塚劇場でのぞコンも当選したし、今日は月組宝塚大劇場千穐楽のライブビューイングの先行抽選にエントリーしました。劇場には希望の明りが灯っています。

 こんな日、痛々しいまでに「他人の幸福(しあわせ)を思う」紅カールのやさしさが心に沁みわたります。『FLYING SAPA』で社会への挑戦を試みた上田久美子先生が潤色・演出した作品。これも今の全人類に届けたい。

 



月組『赤と黒』-思い出し日記(2)

2020年09月27日 00時39分53秒 | 宝塚
2020年8月10日;月組『赤と黒』
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/50d0e93f5e02ed5834f0dc46737d7717


「恋こそ我がいのち

作詞:柴田侑宏 作曲:寺田瀧雄

ジュリアン;幸せはしあわせは 愛しき人の瞳の中に

レナール夫人:幸せはしあわせは 恋しき人の胸の奥に

ジュリアン;悲しみはかなしみは かぐわしき香りに満ちて
      悲しみはかなしみは 頬に触れる髪の優しさ

二人;恋こそ我が生きる日の証
   恋こそ今二人の歓び

ジュリアン;恋に生きて 恋に死すとも

二人;ああ 恋こそ我がいのち」

 宝塚のモーツァルトが紡ぎ出した旋律にのった柴田先生のことば、いつまでも余韻がのこる響き、ほんとうに美しいですね。

 2月29日に予定されていたライブビューイングが幻となり、突然千穐楽を迎えた時、最後に緞帳の前に登場したたまきち(珠城りょうさん)が大劇場でまた会いましょう、と満面の笑顔で両手をふりながら袖に去っていったので、演者たちの方がつらいだろうに、中止決定に落ち込んだ観客が逆に元気をもらったという話をつぶやきでみかけました。中止の間、さらに精進を重ねて舞台に戻ってくるつもりなのだという、一回一回の舞台に全力を注いでいるタカラジェンヌの覚悟をみた、希望を感じたという話。それから7カ月、4カ月遅れで迎えた9月25日、月組大劇場公演初日、ようやく106期生が初舞台を踏んでラインダンスを披露。カテコでのたまきち、つぶやきでみかけたところでは、これから先も辛いことも悲しいこともあるかもしれないけれど私たちがいる。私たちは皆様の希望、光だと話したと。どんな状況下でも全力で希望を届けてくれようとする姿、すごいですね。劇場には、舞台には夢と希望がある。郷里から日帰りできる距離だからとぴあでプログラム付きのチケットを5月にとっていたのも幻となりましたが、11月1日の千穐楽ライブビューイング中継は見届けたいと思います。中止、中止に気力もなにもかも失せた日々を思うと、毎日劇場の幕があがっているという事実だけでも十分に元気をもらえます。

 『赤と黒』、現在オンデマンド配信されている『アルジェの男』と共通するものを感じます。貧しい生まれで孤独な子ども時代を送った主人公が野心を抱いて女性を利用しながらのりあがっていこうとする、人として褒められた生き方ではないけれど、純粋なところがあり、そのために足元を救われることとなり、最後は自らが招いた死をもって終わる。たまきちは、これまで温厚なヨーロッパの青年役がすごく似合うイメージだったのですが、ジュリアンという心に闇を抱えた、こんな役が実はいちばん似合うのかもという新しい発見でした。人に愛されることなく大人になり、さわやかな青年の仮面の下で鬱屈した野望を抱いている。人にはみせない陰のある表情、似合いと思いました。

 柴田作品、コーラスも美しく、芝居の月組の底力を感じた舞台でした。冒頭のジュリアン@珠城りょうさんと二人の女性とのダンスシーン、女性は一幕でジュリアンに胸ときめかせるレナール夫人@美園さくらちゃんと二幕でジュリアンとぶつかり合いながら恋においていく貴族の令嬢マチルド@天紫珠季さんだったのだと最後までみて振り返った時にようやくわかりました。レナール夫人とマチルドのダンスから醸し出される空気の違いは、そのままキャラクターの違いでした。

 2幕は富と名声を手に入れることを夢みたジュリアンが憧れたパリの社交界、そこにあったのは華やかさの裏で虚栄心に満ちた退屈な世界でした。ジュリアンはすぐに幻滅し、パリの社交界が退屈で仕方ないマチルドはそんなジュリアンに幻想を抱くのでした。激しいマチルド、演じるのは相当エネルギーがいるだろうなと思いました。

 ナウオンステージの天紫珠季さん、稽古場でふりがついた時必死だった。二幕で登場する時、ジュリアンと同じ情熱的なエネルギーをもっていないといけないと。ジュリアンにマチルドを嫉妬させるための恋の指南をするコラゾフ公爵をを演じた月城かなとさん、軍服はむずかしい、マチルドはジュリアンとぶつかりあっていると。

 おそくなってしまったので今はこれぐらいで。2月の舞台、自己満足でしかありませんが頭の中を整理していくために、あと1回か2回書けるといいかなと思います。

 ささやかなブログへの訪問、ありがとうございます。