星組『眩耀の谷』『Ray』-東京宝塚劇場公演千穐楽LV
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「幻想歌舞録 眩耀の谷~舞い降りた新星~ 作・演出・振付;謝珠栄
紀元前の中国大陸に西の地からやってきた流浪の民“汶(ブン)族”は、彼らの神“瑠璃瑠(ルリル)”の使いに導かれ、豊かな自然と土壌を持つ“亜里(アリ)”という地にたどり着いた。そしてその地に「汶(ブン)」という小国を築きあげる。
紀元前800年頃、勢力を拡大する周の国は、汶族の首領・麻蘭(マラン)を征討し、汶を攻略。ここに汶族は周国の統治下に置かれる。その美しい亜里の地に、数々の戦の手柄を持ち麻蘭征伐の勇者と称えられる管武将軍と共に、新しく大夫となった丹礼真(タンレイシン)が赴く。志し熱く理想にもえる礼真は、敬愛する将軍から汶族の聖地と呼ばれる“眩耀の谷”の探索を命じられる。汶族の残党(麻蘭の手下)が潜んでいるというのが名目上だが、周国王宣王は、谷にある黄金が目的。そんなこととは露知らず礼真は、ある日神の使いの幻を追ううちに、一人の汶族の男と遭遇し、眩耀の谷を見つけることができる。しかしそこで出会った汶族の舞姫・瞳花(トウカ)とその男により、礼真の運命は思いもかけぬ方向に流されていく。母国を信じる礼真に待ち受ける試練とは、そして希望とは…。」
ほとんど情報をみることなくライブビューイングを迎えました。もう少し年をとっていくとストーリィを追い、人間関係を頭の中で整理しながらみることがきつくなるのかなあとふと思いました。まだあと数年は大丈夫ですかね。こんな弱気、まだ少し早い?だんだんできなくなる未来は遠くない気がするこの頃、70過ぎたらきびしいですよね、とそんなこれからくる未来の不安はよこにおいてー。
さらに領土をひろげていこうとする周の宣王の支配欲、傲慢さに真正面からきりこんだ物語は勧善懲悪の世界で展開はわかりやすかったと思います。「人の心はうつろいやすいもの」「決めるのは人の心」、そんな言葉が沁みました。“眩耀の谷”を周にみつけられるのは時間の問題だとさとった汶族の男たちは勝てるはずのない戦いに命をすてる覚悟をしますが、そこに現れたのはレイシン@礼真琴さんを眩耀の谷に誘った謎の男@せおっち(瀬央ゆりあさん)、周に敗れた汶族の首領マランの亡霊でした。自分が周に戦いを挑んだために妹であるトウカだけがなんとか助かったがたくさんの命を落とすことになった、無駄に命を捨ててはならないと告げるマラン。歌の説得力もさらにあがってせおっちの存在感マシマシでした。亡くなったレイシンの母@万里柚美さんは汶族の王の末裔の一人だということもここでわかりました。レイシンを守るため、そのことは夫であり、レイシンの父である周の丞相にも告げていない、幼い頃母が歌っていた子守唄は汶族のうた、そして母からもらったお守り?は汶族の王族だけがもつもの。序盤の、汶族にもうすぐ新しい王が現れるというお告げがあったのはレイシンのことでした。レイシンの腕をつかみ「わたしたちに何か言うべきことがあるんじゃないですか」とトウカ@舞空瞳ちゃん。そんな器ではないと後ずさりしたレイシンでしたが、この土地の人々のために王となって立ち上げる決意をします。そして「命さえあれば」と周から逃れるため眩耀の谷を離れ、希望を胸にあらたなふるさとを求めて旅に出るという道を選びました。レイシンの言葉を信じ共にあらたな旅に出る汶族の民たち。周にのこしてきた子どもに会いたい一心で生きてきたトウカは子どもの命が潰えていることを悟ると自分が生きている意味はもうないと一度はあきらめかけますが、レイシンと共に生きていく道を選んで旅にでます。最後の銀橋を使ってあらたな旅に出る汶族の民の様子を描いた演出が深く心に残りました。宝塚に銀橋は必要です、座席数は次の公演から戻せるのであとは生オケ。この最後の場面の台詞のひとつひとつ、鮮明におぼえきることができず「ル・サンク」で確認したい。カーテンコールの挨拶で、中止期間も含めて9カ月この作品と向き合ってきたので、時々自分が礼真琴なのかレイシンなのかわからなくなった、忘れられない作品になったとこっちゃん。中止期間中この作品もまた生徒たちの中でねかされて発酵し熟成したのだと思いました。もしかしたら大劇場の最初の頃はここまで熱い作品ではなかったのかも・・・。
熱い汶族の男たちを演じていたのはひろ香祐さん、花組から異動してきた綺城ひか理さん、横顔があまりにもきれいだけどどなたなのか、悲しいかな名前がすぐには思い出せなかったのは天華えまさん、オンデマンド配信で視聴した『阿弖流為』でも横顔が美しすぎたのが印象的でした。語り部として登場していた有沙瞳ちゃんはレイシンとトウカの間に生まれた娘、春崇(しゅんすう)でしたという幕切れ。旅に出たレイシンとトウカは手をたずさえて生きたという希望のある終わり方でした。有沙瞳っちゃんの物語の中には全く登場しない、琵琶?をひきながらのストーリーテーラーという役所、はじめてみましたが似合いますね、声が語り部としてききとりやすい。キャスティングの妙、演出家の目はすごいですね。
専科から異動してきて二番手羽を背負った愛ちゃん(愛月ひかるさん)、こっちゃんよりも学年を上だと思うと複雑なものもありますが応援してきた人たちは嬉しいでしょうね。紅ゆずるさんと七海ひろきさんが退団したあとの星組の大人の男役の色気を一心にうめる存在感。オンデマンド配信で視聴した去年の全国ツアー『アルジェの男』『エストレージャス』のナウオンステージ、専科として参加していましたが星組に合っているって勧誘していたと今日から副組長となった白妙なっちゃん。素のかわいい声と自分のために我が子を殺すことを命じる周の将軍とのギャップよ。
ライブビューイングのカメラが時々あらぶっていたのはご愛敬、群舞のダンスの場面が見応えたっぷりだったのでひきで全体も映してくれてありがとうございました。舞台装置の美しさと群舞のダンスに歌、星組の魅力が存分に引き出された舞台でした。ほとんど踊っぱなしの一時間半の芝居のあとに、中村一徳先生のダンス、ダンス、ダンスのショー、タカラジェンヌはアスリート。スポーツ心臓になって脈拍がおそいというOGの話をきいたことがあります。
華形ひかるさんへのお花渡しは、専科から悠真倫さん、同期は雪組組長の奏乃はるとさん、密回避ですぐそばで言葉をかけることはなくソーシャルディスタンス。カーテンコールでひかるさんと並んだ時、大羽根を自前のソーシャルディスタンスと称したこっちゃん。挨拶を記憶しきれず、少しでも残っているうちにリアルタイムで書いておかないともう忘れてしまうのですが長くなってきたので今はこれにて。
華形ひかるさんが人生で二度やることになるとは思わなかった貧乏神のびんちゃん、
8月14日の東京宝塚劇場