たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

宙組『FLYING SAPA-フライングサパ-』日生劇場公演を観劇(1)

2020年09月14日 23時49分44秒 | 宝塚
2020年8月25日;宙組『FLYING SAPA-フライングサパ-』-梅田芸術劇場千穐楽LV(4)
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/234b46b34500955e00b48fb15b6fc14b


 2020年9月14日(月)11時~、日生劇場にて無事観劇してきました。朝は苦手、集合住宅から駅までバスを使う生活にまだ慣れないので緊張しましたがなんとか間に合いました。久しぶりの日比谷線、去年の9月星組を観劇するために上京したとき以来かな。霞が関駅と神谷町駅の間に虎ノ門ヒルズ駅ができていてびっくり、森ビルがお金だしたのね、すごいわと思いました。このあたりはかつて日中の居場所として毎日通っていた時もあり、苦い記憶ですが日常だった時もあります。まだおのぼりさん。京浜東北線・山手線には高輪ゲートウェイ駅ができたし、都会は駅もどんどん変化していきますね、面白いです。

 月曜日の11時公演とはいえ、よくぞ友の会でチケット当選した、宙組『FLYING SAPA-フライングサパ-』。2018年月組『BADDY』でたまきち(珠城りょうさん)にタバコ吸わせて、「邪魔だ どけ!」って歌わせたウエクミ先生の痛烈な人間社会への皮肉と温かい眼差し、そして今の状況にあまりにもあてはまりすぎていてほんとにこわいぐらい。まるでこのコロナ禍を予感していたかのような作品。『BADDY』といいサパといい、この企画を通した宝塚歌劇団のふところの深さよ。8月の梅田芸術劇場公演千穐楽ライブビューイングの観劇録にも書いていますが、3月下旬の連休前、ライブビューイングのチケットぴあ抽選申込無効、そして赤坂ACTシアターでの初日を目前に公演中止のお知らせが入った時はただただ涙でしたが、こうして日生劇場で公演できたことはサパにとって幸運でした。いつまた上演されてもいいように緊張感を保つのは大変だったと思いますが、中止期間の間サパは宙組生の中でねかされ熟成し発酵しました。そしてより深く芳醇な香りをまといながら私たちの前に姿を現してくれたのでした。宝塚だけではもったいない、全人類に今届いてほしい作品。

 赤坂ACTシアターも悪くないですが、日生劇場の、怪人が潜んでいそうな天井がやはりサパの世界観にはより合っていました。二階後方の中央、全体がよくみえました。近くにみえる天井がクレーターのようで音楽・映像演出と相まってまるで宇宙の中に自分もいるような感覚で観劇することができました。(この天井が苦手という方もいらっしゃるんですね、人はほんとにいろいろ)。盆が回りながら舞台装置がせり上がってきたり、キャストをのせまま板が動いたりするのをみるワクワク感は生の醍醐味。舞台好きにはたまりません。舞台機構を存分に生かしたテンポ感のある場面転換、無駄がなくて気持ちよかったです。ライブビューイングで一度観ているので話についていくことができていたと思います。ほどよく遠ざかった記憶をひっぱりだしながら観劇。むずかしいようで実はテーマはシンプルなのかもしれません。

 二幕終盤、4年分の記憶しかないオバク@真風涼帆さんと、人類が共存していくためにあらゆる「違い」を排除し、対立のない理想郷を水星(ポルンカ)に創ろうとした総統01@汝鳥玲さんが二人だけで対峙する場面。投げかけられたのは「人は憎しみと全ての記憶を抱えたまま生きていけるのか」という命題でした。ミレナ@星風まどかちゃんの頭の中に統合された意識データ「ミンナ」の中でのちに総統01となった難民ブコビッチが世界大戦で娘たちを失った場面、少女ミレナが母を殺されさらには自分もおそわれた場面をみたオバク、難民船の中でブコビッチと意見を違えたために父親と母親がブコビッチに撃たれ、さらにイエレナ@夢白あやちゃんの母親も撃たれた場面をみて、総統01に銃を向けるも撃つことができなかったオバク。人類が憎しみあい殺し合ったの過去を前に「あーあー」と頭を抱えながら嗚咽。総統01を撃ったのはミレナでした。ミレナに撃たれた総統01はやっとやすらぎを手に入れたようにみえました、こうなることを待っていた、望んでいた、予感していた、わかっていた、そのいずれにもうけとれるような表情でした。昭和のベルばらに出演されていたという専科の汝鳥玲さん、熟練の芸、さすがでした。

 オバクがみつけたひとつの答えは希望。サバは希望の船、総統01が亡くなり、全人類の意識をひとつにしようとした「ミンナ」から解放された人類を「FLYING SAPA」に乗せてオバクはポルンカから宇宙へと旅立とうとしていました。カーテンコールでの真風涼帆さんの挨拶は「どんなに時代が変わろうと私たちが希望を忘れず歩んでいきたいと思います」でした。

 こんな気候とコロナ禍の社会、生きているだけでも十分にえらいよって自分に言ってあげたいですが言えない現実、年金見込み額は家賃で消えるとわかった現実、スローライフとか言ってられない現実。自分を食わせるために一縷の望みをもって明日からまたほんの人差し指分でも進まなければならない現実。死と隣り合わせのユダヤ人収容所から生還したフランクルは『夜と霧』の中で「それでも人生にイエスと言う」と言いました。26年前出会ったカウンセラーの方は、希望がなければ生きていけない、死にたいという話にも希望がある、だから人の話を聴くことができると話してくれたことがあります。希望、希望・・・。

 また若い方の訃報、病気でも事故でもなく、また自分の妹と同じ。26年前よりもさらに若い世代が生きづらい社会になっているということでしょうか。個人のがんばりが足りないとか、気持ちが弱いとかということではないように思います。心がいたいです、サパに生で出会えたこんな日、先がみえてしまう未来に希望をもつことはむずかしいですが明日のことは誰にもわからないので今を生きていくしかないのだと思います。

 モノを増やさないにと思いながら日比谷シャンテのキャトルレーヴでサパが掲載された『ル・サンク』、望海風斗さんのコンサートプログラム、キキちゃん(芹香斗亜さん)のスター付箋と舞台写真を買ってしまいました。先日買ったクリアケースは売り切れ。買っておいてよかった。墓場まで一緒に行きたいのですよ。熱烈なファンというわけではないわたしが当選してしまったのぞコン、当選するとは思っていなかったのでほんとにびっくり、ペンライト2,000円は手を出すことができませんでした、あった方がいいとは思うけどなくても楽しめるよね、大丈夫だよね。4月のチケットが幻になり、さらにスケジュール見直し後のチケットもコロナで幻になった星組の東京宝塚劇場公演は日曜日にライブビューイングで見届けます。

 明日はサパの日生劇場千穐楽、無事に終わっていきますように・・・。

 夕方日比谷をウロウロしながらタブレット端末で書いた記事を集合住宅に帰ってきてからパソコンで書き直しました。日比谷の写真をまた何枚も撮ったし、サパのこともまだ書いていきたいと思います。

 今日もささやかなブログへの訪問、ほんとうにありがとうございます。

 日生劇場の天井、撮ってしまいましたが撮影禁止とアナウンスしていたので載せるのは控えます。こんな舞台からみた客席の絵、今までも飾られていたのかしら、客席半分だったおかげで気づきました。