ジャン=オノレ・フラゴナール
《かんぬき》
1777-1778年頃
油彩/カンヴァス
絵画部門
「左手に若い女性を抱き、右手でドアのかんぬきをかけようとしている男。画家得意のテーマ”劇的な愛の場面”だが、以前の作品には見られない明暗を重視した表現法は、1773~74年の第2回ヨーロッパ旅行中に鑑賞し、感銘を受けた17世紀オランダの画家レンブラントの影響を物語る。
フラゴナールは、”ロココの世紀”の最後を飾った画家である。30歳ほど年上のシャルダンやブーシェに指示し、軽やかな色彩と速筆による躍動感溢れる構図で、生命力に満ちた名画を数多く世に送り出した『ギマール嬢の肖像』など幻想的肖像画シリーズや、『かんぬき』がその代表作だ。しかし、このころのブルボン王朝はすでに斜陽期にあった。1756年に始まった7年戦争などで国は疲弊し、ロココの流行も下火となっていた。男女の忍び逢いという、ロココ特有の官能的な題材で描かれた『かんぬき』でも、色彩より明暗の効果が重視され、人物の動きも直線的で、冷たい仕上りを見せている。革命前夜に描かれた『かんぬき』こそ、ロココ最後の輝きでもあった。」
(『週刊世界の美術館-ルーヴル美術館②』より)