たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『この地球で私が生きる場所』-「国境なき医師団」で避難民の袋小路へ(3)

2021年05月13日 15時04分20秒 | 本あれこれ
『この地球で私が生きる場所』-「国境なき医師団」で避難民の袋小路へ(2)
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/1d108356e8a07e3d8adabaf3634e26ef

「フランスに本部をもつNGO「国境なき医師団」に手紙を書いた。三人の青年医師の手で設立されたこの団体のことは新聞で知っていた。人はだれでも医療を受ける権利がある。その権利を奪われた人々のために政治や思想、民族、宗教を超えてどこにでも出かけていく。シンプルな理念に引きつけられた。この原点に立ち返ろう。

 手紙の返事はすぐに来た。本部での面接を経て、最初の任地、スリランカへ赴いたのは数か月のちのことだった。

 医療の人道援助をする「国境なき医師団」の活動は世界各地にひろがって、99年にはノーベル平和賞を受賞した。日本からも貫戸さんにつづいて38人の医療従事者が世界各地に飛んでいる。登録者数は2002年2月末で198人にのぼる。

 貫戸さんは現在、「国境なき医師団」東京事務所で働いている。どこでどんな活動をするか、その計画を立てるのがオペレーションディレクターの仕事である。フランス本部の指示を待つだけでなく、アジアにふさわしい活動をしたいと手探りがつづく。8人のスタッフをまとめながら、アジア地域を対象に調査にあたる。ミャンマーへ、タイへ。海外と日本を往来する日々だ。

 スレブレニツァ徹底から6年を経て、ようやく、「困難に直面して苦しむ人たちとの出会い、彼らと生きた時間をかけがえのない贈り物だと受け止められるようになった」と話す。

 2001年7月までの2年間、国際協力事業団から派遣され、メキシコに住んだ。子宮頸がんの検診システムを充実させることが目的だった。貫戸さんは、そのプログラムを通じて、先住民から最も貧しい女性たちが自分で健康を守る力をつける教育活動を支援した。

 陽気な仮面の下に強固な階級意識や打算、差別がのぞく。現地の人たちとの人間関係は、一筋縄ではいかなかった。貧民街に住みながら、一つひとつ困難を乗り越えた。食べるのがやっとで、ただ与えられる診療を受けるだけだった女性たちが、自分の体を知ることで人生についても考えらえるようになった。そんな姿にふれるとき、喜びを感じることができた。

 現在は、スタッフとともに国内のホームレスの人たちへの援助にも力を注いでいる。まず生きる。そのための手助けに内外の別はない。東京・隅田川の川べりなどで他の市民団体とともに医療相談会を開いている。大阪・釜ヶ崎に診療所を開けないかと、現場へ足を運ぶ。

 近づいたり遠ざかったりしながらも、結局は苦しむ人たちのそばから離れずにきた。その営みの積み重ねこそが、本人も気がつかないうちに痛みを和らげ、活力に変えてきたのではないだろうか。

 惨劇から6年あまり、2001年11月の終わり、私は貫戸さんが八か月を過ごしたスレブレニツァを訪れた。町は雪の谷間にひっそりと沈んでいた。やがて行き止まりになる一本道の両側に、へばりつくように家が建つ。町を囲む山々には地雷が無数に埋められている。「町全体がどこにも行けない収容所でした」。貫戸さんの言葉がその地に立つと実感となって迫ってきた。

 家々のれんがや石の壁には砲弾の跡が残っている。悲劇はここで、まちがいなく起きた。

 民族の存亡をかけた戦いで住民がそっくり入れ替わり、今はセルビア人の町になっている。

 貫戸さんが懸命に働いたというスレブレニツァ市民病院は、95年の惨劇以来、使われていない。何者かが設備や医薬品を持ち去ったためだ。

 隣接する保健所が病院代わりになっている。所長のスペトザール・マリンコビッチさんが病院内を案内してくれた。病室や廊下の壁土がはがれ落ち、マットレスのなくなったベッドがいくつも放置されていた。

 貫戸さんが親しかったイスラム教徒の女性エミラも、町にはいなかった。かつての家の近くに住む人たちにたずねてみたが、近所の人たちの顔ぶれも変わっている。誰も行方を知らなかった。

 そのなかで、あるセルビア人夫婦が「別の大きな町にイスラム教徒の知り合いがいあるから」と、何件も電話をかけて聞いてくれた。二つの民族に憎しみだけがあるのではない。それがわかって、うれしかった。

 エミラはきっと生きている。だれもが傷を抱え、生き抜いていく。そう思った。」


『この地球で私が生きる場所』-「国境なき医師団」で避難民の袋小路へ(2)

2021年05月12日 16時26分20秒 | 本あれこれ
『この地球で私が生きる場所』-「国境なき医師団」で避難民の袋小路へ
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/4bbc7225e28f94ad61836ea80b19d652

「惨劇からの立ち直り、傷を抱え人は生きる-川名紀美

 ボスニア東部の谷あいにある町スレブレニツァに、内戦で難民となった大勢のイスラム教徒が流れ込んでいた。町は、敵対するセルビア人が住む地域にぽつんと残された飛び地だった。1995ンんが明けると紛争各派のあいだで交わした停戦合意がくずれ、セルビア人勢力によるイスラム教徒への攻撃が相次いだ。情勢はしだいに切迫していた。

 貫戸朋子(かんとともこ)さんは、「国境なき医師団」のボランティア医師として、フランス人医師や、サラエボ大学医学部の学生らとともに町の病院で働いていた。

 人口はそれまでの9倍、4万5000人ほどにふくれあがっていた。国連機関からの食料は必要量の2割ほどしか届かない。停電や断水が断続的につづく。衛生状態も悪化する一方だった。

 病院は患者であふれ、地雷や銃弾で足を吹き飛ばされた若者や、全身に金属片が突き刺さった青年が運び込まれていた。貫戸さんは6か月の任期の延長を願い出て、産婦人科の専門分野を超えた治療にあたった。

 2月、ユーゴスラビア・ベオグラードの「国境なき医師団」事務所から翌日撤退の指令が届き、町から引き離された。心を通わせた人たちに別れも言えなかった。

 東京に落ち着くと、自分だけ安全で満ち足りた場所に戻ったという罪の意識にさいなまれた。おなかはすくのに、食事を前にすると食べられなかった。スレブレニツァの人たちのことが頭から離れない。このままでは大変なことになる-。新聞社や放送局に勤務する知人に訴え、小さな市民グループに招かれて話をしたが、なかなか耳を傾けてもらえなかった。

 恐れが現実になった。

 その年7月、国連が一切の攻撃を禁じていたスレブレニツァを重装備のセルビア人勢力が攻撃し、何万人ものイスラム教徒を町から追い出した。軽装備で国連平和維持活動(PKO)に就いてい居たオランダ部隊役2000人は、彼らを助けるどころか自分たちが生き延びるのに精いっぱいだった。イスラム教徒7000人以上が行方不明になり、多数が虐殺された。歴史に残る「スレブレニツァの惨劇」である。

 貫戸さんは惨劇をニュースで知った。病院で一緒に働いていた医学生の死もインターネットで知らされた。やっぱり。怒りとあほらしさがないまぜになってこみあげてきた。自分がピエロのように感じられた。超越した何者かに自分を認めてもらなわければ生きていけない気がした。

 豊かで平和な日本で、どう生きればいいのかわからない。周囲の人たちとの関係がきしんでいった。たわいのない楽しい話題に興味がもてず、いつしか黙り込んで相手に不快な思いをさせた。いちばん身近に大切な人が仕事で挫折を味わい苦しんでいても、その苦しみの大きさがわからなかった。
「魂が泣き切って動かなくなったのでしょうか。周りの人の気持ちに鈍感になってしまった」
 そういう自分に落胆した。

 医師を志したのは中学生のときだ。人間についてよく知りたいと思ったからだ。

 友達とあまり遊ばず、本の世界にこまっていた。スペイン内戦記などを読みふけりながら、せっぱつまった状況に身を置きたいと夢想するような少女だった。京都で産婦人科を開業していた父親は、そんな末っ子をこよなく愛し、時間をみつけてはサッカーを教え、ともに楽しんだ。

 医師という職業に就き、専門として選んだのは産婦人科だった。外科であり、内科でもある。誕生から死まで、女性の一生を見守っていく。「その奥深さにひかれました」。仕事がおもしろく、「365日のうち365日、働きました」

 いくつかの病院に勤務した。技量と経験が問われる救急医療に明け暮れる日々があり、じっくり患者の話に耳を傾けた時期もある。民間病院の産婦人科医長にもなった。8年が過ぎるころ、気がつくと高揚した気持ちが消えていた。

「成長しているという実感がもてなくなった。貯蓄を食いつぶすのではなく、新しい生き方に使おうと決めました」

 大学病院という安定した職場をあっさり辞めた。医師生活10年での転身だった。もう一度、別の面から人間に迫ってみたかった。心理学を学ぶためにスイスのジュネーブ大学へ。医療現場を離れたことで、やり残したことに気がついた。」


ミュージカル『モーツァルト』-2021年4月14日帝国劇場(2)

2021年05月11日 23時32分51秒 | ミュージカル・舞台・映画
ミュージカル『モーツァルト』-2021年4月14日帝国劇場
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/c152072231172bb1207c1f74624e8fa5

<緊急事態宣言延長>ミュージカル『モーツァルト!』大阪公演一部中止について
https://www.umegei.com/system/information/detail/231

 『モーツァルト』、残念ながら25日から31日までの梅田芸術劇場公演は中止と発表されました。梅田芸術劇場、感染対策万全だという声をSNSでみかけました。最後まで上演できるようにと手を尽くしていたのではないでしょうか。オカミの声、ゆんが帝国劇場千穐楽の挨拶で悔しさをにじまながら言っていたように、こればっかりはどうしようもない、従うしかありませんね。梅芸さんを責めないでほしい。6月1日から7日までは上演できるようにと祈ります。札幌公演は予定どおり14日から17日まで上演できるということでいいのかな。無事に上演できることをただただ祈っています。劇場にはまだ夢と希望があると信じています。そんな場所がわたしたちの人生には必要。



 福永悠二さんがミュージカルウィークを題して、本来の帝国劇場千穐楽だった6日からYouTubeでモーツァルトのアンサンブルキャストを招いてトーク番組を公開していることを知り先ほど視聴しました。福永さん、舞台以外で声きくの初めて、さすがのめっちゃいい声にしびれました本日のゲストは今回アロイジア役の彩花まりさんと前回からシカネーダーの遠山裕介さん、遠山さんSE(システムエンジニア)から18歳でダンスをはじめて双子の兄弟と共にトートダンサーを務めたと知りびっくり、彩花さんはまあ様と退団同期の宝塚OG。彩花さんの話でクンツェさんとリーヴァイさんのコンビは人間の内側をうまくのがうまい、同じメロディーラインをいろいろな人が歌っていたり、一回では見切れないのでまたみたいと思わせるようにできているところがすごい、演じる方は曲もむずかしく大変だけれど素晴らしいという話になるほどとうなりました。いちばん好きなのは「星から降る金」、歌う人によってまったくきこえ方が違うし、きく方のその時の心情によっても全く違ってくると。なるほどです。

 タータン(香寿たつきさん)のヴァルトシュテッテン男爵夫人、アクセサリーも衣装も3年前よりもいちだんとキラッキラッ輝いているようにみえました。夜会の場面の髪のモリモリもさらに高くなりました?アクセサリーがふんだんにちりばめられていて重そうですが、まばゆいばかりにキラッキラッのワッカドレスを着こなして、余裕の笑顔をみせる貫録はさすがです。衣装が宝塚の有村淳さんだからかな。前回よりも全体的にクラシカルな雰囲気を漂っているような感もありました。ウィーンの社交界を仕切っているであろう男爵夫人、ヴォルフガングは彼女に利用されたのかなと今回はじめて思いました。ウィーンに帰る時ヴォルフガングを連れていきたいとパパのレオポルトに伝えたとき、コロレド大司教が自分の名声のためにヴォルフガングの音楽の才能を独り占めしようとしていることを知りながら連れていこうとしたのか。そう考えると、「星から降る金」、ただヴォルフガングの背中をおしているようにきこえていましたが、裏に思惑があるようにもきこえました。男爵夫人とコロレド大司教の場面はありませんが、エピローグで死がせまってきているヴォルフガングの前に現れて音楽をかかせようとしたのは男爵夫人とコロレド大でした。タータンの「星から降る金」、メロディーラインと共におとぎ話の情景が浮かんできます。不思議な力を持つ魔法の歌、タータンの声にはドラマがあります。

『モーツアルト』_「星から降る金」
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/5a416beabb3125396570dd579b28a175

 終演後劇場近くを歩いているときうしろからきこえてきた若い女性同士の会話。一人キラキラしているなんとか男爵夫人、おばさま、すっごい一人でキラキラを話していた方がもう一人に、演じているのは元タカラジェンヌだと知らされ納得している様子でした。宝塚はみたらはまってしまいそうだからみたい、そうなのねと。宝塚退団後、大きな舞台に出演し続けているタータン、リアルタイムで男役時代を知っている世代は年齢があがってきているから、帝国劇場の客席には少なくなってきていますかね。いやいやでもまだタータンと共に雪組初演エリザベートに出演した五峰亜季さんと美穂圭子さんが現役タカラジェンヌなのだから、リアルタイムで初演を知っているファンもまだまだ元気なはずですよね。わたしもまだまだ大丈夫なはずと思いたい。

 ヴァルトシュテッテン男爵夫人、いいところで登場して聴かせるところはおいしい。それだけに難しい役でもあるのだろうと思います。かなめさん(涼風真世さん)はドスのきいた永遠のオスカル様味あるのがたまりせん。だからWヴォルフガング、Wヴァルトシュテッテン男爵夫人をみたかったです。中止になることなく、それぞれの組み合わせでみることができたのは奇跡でした。二度と戻ることのない一期一会。














ちひろ美術館-オンラインギャラリートーク

2021年05月10日 23時27分44秒 | いわさきちひろさん
ちひろ美術館のメールマガジンより、

【オンラインギャラリートーク】
6/13まで開催予定の「ちひろ・子どもは未来」の見どころを
オンラインギャラリートーク(全3回)で配信しています。
ご自宅でちひろ美術館・東京の展覧会をお楽しみください。

https://www.youtube.com/watch?v=VZRhEz1h6ZQ

https://www.youtube.com/watch?v=UFCWLhtniu4

https://www.youtube.com/watch?v=Tum33VPPBYQ

【おうちで楽しむちひろ美術館】
世界中のご自宅からちひろ美術館をお楽しみいただける
「おうちで楽しむちひろ美術館」では、いわさきちひろの作品や、
ちひろ美術館について紹介しています。

https://chihiro.jp/enjoyathome/jp/


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 臨時休館中のちひろ美術館は緊張事態宣言の延長により、12日以降も休館するとのお知らせ。「オンラインギャラリートーク」と「おうちで楽しむちひろ美術館」が公開されました。ちひろ美術館にいるような感覚でちひろさんの世界に触れることができます。わたしも明日の夕方以降心を落ち着けてみたいと思います。

 
「ひとりの母親であり、画家であったちひろは、生涯「子ども」を主なテーマとして描き続けました。ちひろは、「私には、どんなにどろだらけの子どもでも、ボロをまとっている子どもでも、夢をもった美しい子どもに、みえてしまうのです。」と語っています。第二次世界大戦中、空襲のなかを逃げ惑った体験を持つ彼女にとって、人の命を奪うだけでなく、心を失わせ未来を奪う戦争は許せることではありませんでした。優しく愛情に包まれた子どもと、ちひろが最後に完成させた『戦火のなかの子どもたち』に見る戦禍にさらされた子どもの絵は対照的ですが、どちらにも、「世界中のこどもみんなに平和としあわせを」ということばに残した願いが込められています。」

 ちひろさんは世界中のこどもたちが平和でありますようにと願い続けました。心がいたくなるニュースをみるたびにちひろさんのことばを思い出します。ちひろさんの願いが世界中に届きますようにと祈らずにはいられません。

 美術館が休む必要はないようにも思いますがこの状況下では落ち着きませんね。美術館が再開されたら住まいから2時間ほどかかりそうですが、またちひろさんに会いにいきたいと思います。先のみえない状況下を生き抜いていくのは気持ちが落ち着かず、非常にきついですが、それでも命さえあればとの思いでなんとか生き延びていかなければと。どこかに希望はあると言い難いですが、それでも命さえあれば、命さえあればと・・・。

















2018年ミュージカル『ジキル&ハイド』(7)

2021年05月10日 14時06分48秒 | ミュージカル・舞台・映画
2018年ミュージカル『ジキル&ハイド』(6)
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/723ef1f5325cca318bd2a80ace3e6bfc

(東京国際フォーラム公演プログラムより)

「ガブリエル・ジョン・アターソン役;田代万里生

-友情に厚い男。親友を見守り和ませる、ニュートラルな存在-

 ロマンス、ミステリー、サスペンスと、ドラマチックな要素が詰まっている作品で、その上ワイルドホーンさんの素晴らしい音楽がさらに背中を押してくれる。脚本と音楽の力、その相乗効果の強さを感じつつお稽古しています。

 アターソンはジキルと同じ30代前半で、頑ななジキルの心を和ませる親友であり顧問弁護士、同時に作品の緊張をほぐす存在。登場人物の中では最もニュートラルな人物で、お客様目線で語る役割も担っています。ジキルを初めて”どん底”に誘うシーンでは、山田さんから「コミカルでお願いします」と明確に言われ、そうなのか!と。

「嘘の仮面」では、普段のアターソンなら絶対にしないような行為や表情、裏の顔を表現できたら。他の登場人物も同様、各自がこの作品の大きなテーマを語ります。え?!このシーンではアターソンはこんなこともするの?という意外な一面もお楽しみください。

 憧れの石丸さんとは2010年の『エリザベート』以来の共演で、今回は親友同士としっかり向き合える間柄。貴重な経験から多くのことを学ばせていただき、この作品に存分に活かしていきたいと思います。」


雪組『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』-オンデマンド配信

2021年05月09日 23時14分10秒 | 宝塚
雪組『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』(6)
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/bd6ac6467d2c5062ab5d834091a6a748

2020年3月22日(日)、東京宝塚劇場公演千穐楽

 指揮は西野淳先生、2月21日(金)に初日を迎えたものの2日間で中止、その後いったん再開できたものの数日で中止を余儀なくされ、予定されていたライブビューイングは中止、劇団は退団者のいる千穐楽だけは無観客でも上演し、スカイステージで配信しようとしていました。結果的に有観客で配信を行ったことに対して暴挙とまで書いた新聞もあった東京宝塚劇場千穐楽公演、だいもん(望海風斗さん)の退団を記念してオンデマンド配信で配信中。

 三つ揃えのスーツにコートを着ただいもん、かっこいい。薔薇の花を敷きつめてもふられるトップスター、たしかに。同じくオンデマンド配信中の大劇場公演終演後の突撃インタビューでは、デボラ@真彩希帆ちゃんに、話があるとか言わないで事前になになにの件について、ってちゃんと言ってほしい、その気になっちゃうじゃないって。だいもん主演の2015年雪組『アル・カポネ』もオンデマンド配信で視聴しましたが、禁酒法時代がよく似合います。顔立ちとドラマティックな歌声に、なにかを背負いながら生きる役があっているのかな。

 銃の音が飛び交い、パトカーのサイレンが鳴り響くかっこいいオープニングで物語の世界観へといっきに観客をひき込み、舞台機構をふんだんに使ってストレスフリーの歯切れのいい演出はさすが小池先生。

 自分が連邦準備銀行の襲撃を警察に密告したことでマックス@彩風咲奈さんを死なせたしまったと悔やみながらカンザスの田舎で25年間ひっそりと暮らしたヌードルス@望海風斗さん、若き日、禁酒法下に酒の密売で大儲けし高級スーツを身にまとう暮らしを一度は手に入れたヌードルスの壮年期、キャロル@朝美絢さんが暮らすサナトリウムで再会を果たしたデボラに「幸せ?」とたずねられると「少しは・・・」と。ヌードルスに「幸せ?」とたずねられたデボラも「少しは」と。一度は華やかなハリウッド女優の名声を手に入れたデボラも今はチャリティー活動をしながらひっそりと暮らしていました。マンハッタンの頂上までのぼりつめながら、自ら命果てたマックスをみつめる表情に、生きることはなんと切ないものなのかという思いがあらたにわきあがってきます。

 若き日の夢はセピア色、「皇帝になる、皇后になる」、摩天楼の頂上にのぼりつめる、ハリウッドの舞台に立ち皇帝からプロポーズを受けてユダヤ人はまだ誰もなっていない皇后になる、手が届きそうに思えたでっかい夢は年月の経過と共に現実の中でいつしか遠く果てしなく、手の届かない彼方へととけていく、それでも一生懸命生きてきた年月があると誇りをもって言うことができればその人生は、It,s all right.でしょうか。

「いい夢だけを♬

 いい夢だけを 見て行こう
 辛い日々に別れを告げ
 悲しむより 共に笑い

 明日の風に向かおう

 そう これからは

 いい夢だけを 見て行こう
 何物にも妨げられず

 幸せの日を求めて

 明日の風に

 向かおう」
 

 2020年6月8日のブログでこう書いたジミー@彩凪翔さん、結末を知ってみるとさらにぞくっとします。癒着が報道されると自分は潔白だと公には言い切り、マックスにピストルを渡して死を迫る場面の、冷静で冷酷な表情よ。「それでは裏口から失礼するよ」。ここまで弱い労働者を守る正義の味方のように見せきったところがすごいです。

雪組『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』(3)
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/4a88a8499229c11f0a75fd687c934d9f

物語のキーパーソンは、彩凪翔さん演じるジミーだっということが最後にわかる展開。最後までわからせなかった役者としての技量が素晴らしいと思いました。マフィアたちとは一線を画す存在。プログラムにはこう書かれています。「実在した労働組合の指導者がモデルで、この作品の中では、組合を守るために水面下でマフィアと繋がり、賢くのしあがっていく人物として描かれています。表向きは潔白はイメージですが、実は裏では・・・という二面性が見え隠れするところを上手く演じればとても魅力のある役になるのではないかと」。最初の登場シーンでは、どこかうさんくさいものをほのかに匂わせつつ、清廉潔白な正義の味方のような労働組合の代表者。マックスがジミーを助けたようにみえましたが、銀行襲撃に失敗して死んだかにみえた彩風咲奈さん演じるマックスが血だらけで助けを求めてジミーのところへ駆け込んだ時、二人の関係は逆転していた、ジミーはマックスを操ろうとし始めていたのかもしれません。











『この地球で私が生きる場所』-「国境なき医師団」で避難民の袋小路へ

2021年05月09日 16時52分19秒 | 本あれこれ
「「国境なき医師団」で避難民の袋小路へ  産婦人科医師 貫戸朋子(かんとともこ)

 私がいた94年当時、東ボスニアはセルビア軍の手中にありました。その中で、ローマ時代に起源をもつ古都スレブレニツァは、民族浄化を免れたイスラム教徒が逃げ込んだ避難民の袋小路でした。

 かつて美しかった温泉町は、戦時下で国連保護軍に守られた安全地域のはずだったのですが、丘の上の狙撃兵が母に抱かれた赤ん坊を射止めるのが現実という日々でした。私は、ここの難民病院に「国境なき医師団」から派遣されて住み込みで働いていました。
 
 反対勢力に包囲されて、かろうじて生き延びられるだけの食料を不定期に与えられ、いつどのように処理されるかわからない飼い殺しの運命に人々は苦しんでいました。「女と子どもを守る武器を約束通り捨てたのに、どうして世界は私たちを見捨てたのだろう。助けにきてくれるだろうか。」人々は自問し、国際社会がいつか必ず助けてくれると信じた人、雪が溶けたら皆殺しになると希望の地ツヅラを目指して地雷原に出て行った人、さまざまでした。

 戦争勃発当時サラエボ大学工学部の最終学年に在学していたハッサンは、「僕は正気と狂気の危うい綱渡りをしている。これは現実か、それとも永遠に覚めない悪夢なのだろうか」と問います。いちばんの仲良しだったエミラは、母と双子の弟に生き別れになって、この町の住人であったおじ一家に身を寄せていました。零下20度にもなる夜、あるだけの蒔をストーブにくべて、赤い炎の中、語り合いました。「トモコ、悲しむことはないのよ。この馬鹿げた戦争は、あと三年続くかもしれないし、30年続くかもしれない。でも、お母さんと弟に会う。大学に戻ってて勉強する。私は希望を捨てない」

 雪が溶ける春を待ちわび、同時に恐れていた夜、「国境なき医師団」のベオグラード事務所から「明朝撤退すること」との指令がきました。翌朝スレブレニツァを発ちました。

 たった一本の街路の終わりにあったエミラのおじさんの家の前でトラックを止めてもらいました。書けてきたおじさんが「トモコ!」と顔を覆って泣きました。同僚のフランス人医師にせき立てられて。トラックは再び走り出しました。この閉ざされた収容所のような町に再びかえってくることはないだろうと私は確信し、涙がはらはらと流れ落ちました。

帰国した夜、何とか日本の人々にこの町のことを伝えたいと思ったものの、反応は冷たく、人の命も流行に乗っていないと意味がないことを思い知らされました。

 何年も悲しんだこと、苦しんだこと。その自分をやっと承認できるようになり、その時を人生の財産と考えられるようになったことで、今度こそこの日本社会に復帰したいと思っているのです。」




宙組『夢千鳥』-ディレイ配信

2021年05月08日 23時53分28秒 | 宝塚
 2021年5月8日(土)19時~、マチネは井上芳雄さんの東京国際フォーラムからのライブ配信、ソワレは宙組という方もたくさんいらしたのかな。わたしのお財布では無理なので今日から3日間連続の宝塚配信も、星組と花組はまだチャンスがあるので、今日の夢千鳥だけにしようと決めて視聴しました。終了後に12日以降順次公演を再開すると発表されたことを知りました。わたしの10日の星組はこのほんの2日違いでまたもや幻になりました。この先チケットはないですが無時に公演が続いていくことを祈っています。マダムのみなさん、どうしてもおしゃべりしたくなってしまう気持ちはわかりませんが、スタッフが常に会話を控えるようにと注意しているので静かにしましょうね。覚悟をもって再開を決めた劇団にわたしたちはこたえたい。Pちゃん(鳳真由さん)が同期3人でインスタライブやっていることを知っておそまきながら参戦。エリザガラコンの裏話から、現役ジェンヌさんたちは修行僧のような生活をしていると。

 主演の和希そらくん、この先には今よりもさらに素敵な時間が待っている、また劇場でお会いできる日を楽しみにしています、という挨拶。4月22日に初日を迎えて4日間の公演で中止となってしまったのは残念ですが、こうして配信というかたちでより多くの方がこの作品と出会うことができました。『ホテル スヴィッツラ ハウス』と『夢千鳥』、どちらも下級生まで安定していて、宙組、盤石と思いました。竹久夢二が生きた大正時代と、映画監督の白澤俊二郎が夢二を主役にした映画を撮影している昭和時代とが交錯する展開。主要キャストは二役を演じているので人間関係を十分には追いきれませんでしたが、物語はほぼわかったと思います。まだついていくことができるだけの認知度があるみたいでほっとしました。

 『アナスタシア』でリリーをかっこよく演じていた、なんでもできる和希そらくん、夢二と白澤の二役、映画を撮影しながら彼自身が夢二になっているという物語、ポスター画像ですっごい色っぽいのびっくりしましたが、こんなに色っぽい男役になっていたのかと驚きでした。ヒロインは天彩峰里ちゃん、赤羽礼奈と他万喜の二役。アナスタシアの少女時代がものすごく可愛かったので、そらくんとの愛憎劇を演じられる、瑞々しい大人の女性の色気と目の力に驚きました。『白鷺の城』と『異人たちのルネサンス』の時、出番多くて素敵だったので注目するようになりましたが少年少女というイメージが強かったのでびっくり。歌も芝居も力あります。女学生・彦乃を演じていた娘役さん、星組の有沙瞳ちゃんにすごく似ているようにみえてどなたかと思ったら、山吹ひまりちゃん、『フライングサパ』でポルンカのスポークスパーソンの長台詞をよどみなく演じていました。まだ入団3年目、おそるべし。この先が楽しみです。お葉は水音志保ちゃん、『アナスタシア』で皇帝一家の皇女を演じていて可愛らしい顔立ちが目をひきました。夢二をとりまく三人の娘役さん、それぞれの関係性をうまく醸し出していたと思います。大劇場公演ではここまで役がまだつかないのでバウホール公演ならでは。こんなに力があるのですね。西条 湊と東郷青児を演じた亜音有星くんも大劇場公演ではまだ大きな役はつかないので、こうして色気のある男役へと成長しつつあるのかとびっくり。凛城きらさんと留依蒔世くん、舞台にいるだけで安定、安心感のある存在感。

 美風舞良さん、寿つかささんと共に宙組創設時からずーっと宙組を守ってきてくれました。ずんこさんのトップスター時代をみているのでお二人をみていたわけですが認識はできていませんでした。オンデマンド配信で『鳳凰伝』『ホテルステラマリス』を視聴したとき、お二人がいることに感動しかありませんでした。今日が宙組副組長としては最後の舞台でした。和希そらくんが代表してお礼を言いながら紹介、挨拶がありました。退団するわけではない。まどかちゃん一人でお嫁にだすわけにはいかない、お母さんも一緒に花組へ。宝塚はひとつ。

 フィナーレ、ラインダンスもあったのはびっくりしました。和希そらくんと天彩峰里ちゃんのデュエットダンスがラインダンスをはさんで二回、峰里ちゃんの髪型が一回目は芝居の延長でしたが二回目は宝塚らしいお団子キャップにキラキラのドレス、『アナスタシア』でキキちゃんにリフトされていたそらくんが峰里ちゃんをリフトしていました。そらくんを囲む娘役さん群舞が芝居の流れから色気たっぷり、男役さん群舞は燕尾服、小さい空間ながら大劇場公演のようなフィナーレ、贅沢な時間でした。

 観劇を糧に生きる人生、観劇のために生きる人生、また劇場に行きたい、チケットはこれから先一枚もありません。その前に面接に行かねばね。また少しずつ思い出しながら書いていければと思います。心の糧は人生に必要・・・。






プリンス・エドワードはもうすぐ春

2021年05月08日 15時08分32秒 | プリンスエドワード島への旅
プリンスエドワード島の現状は?
https://kaz-yoshimura.cocolog-nifty.com/blog/2021/05/post-f49fee.html

 プリンス・エドワード島と『赤毛のアン』のファンにはおなじみの写真家吉村和敏さんが、わたしもお世話になったPEIセレクトツアーズの増田勝江さんとの対談をYouTubeにアップしてくれました。

 普通の生活が戻りつつあり、今年のロブスター漁が始まっているそうです。グリーンゲイブルズは6月1日から通常営業、海外からの大型クルーズ船が来ないので島の人々をいかに惹きつけるかにかかっている、アンの扮装をした女の子がいつもいますが、今なら室内ではマスクをしたアンちゃんに会えるそうな、行けないですけどね。

 補助金でなんとか暮らしている、島の人々は持ち前のおおらかさで乗り切っている、島流し状態だけれど世界でいちばん美しい島は今世界でいちばん安全な島と話していると。島の人たちの、人なつっこい笑顔がなつかしく思い出されます。吉村さん、また海外に行けるようになった時には真っ先にプリンス・エドワード島に行く、フレンチ・リバーの駐車場からライブ配信したいと。待っています。

 勝手に心の故郷と思っているプリンス・エドワード島、この世にいる間にいま一度旅したい。背負っているいろいろなものを全部おろして、軽やかに旅したい。わたしがいなくなっても困る人はどこにもいない、なんのために生きているのかわからない、この世にとどまり続ける理由はどこにもない。この世にとどまり続ける理由は観劇と旅、そういう人生でもいいじゃないですか。











































べーちゃんのあったかいメッセージ

2021年05月07日 12時52分18秒 | 日記
2008年9月7日-13日パリから世界遺産を訪ねて_モンサンミッシェル絵葉書集



https://www.instagram.com/p/COh5lqgl1j2/

 花組OGのべーちゃんこと桜咲彩花さんが、モンサンミッシェルからみた空と海の写真と共に、5日のライブ配信マチソワ観劇後のメッセージをインスタグラムにあげてくれています。「心の栄養と明日への活力」。エリザガラコンは、みりおちゃん、だいもん、Pちゃんと花組で一緒だった方々、宙組は同期で花組時代一緒だったキキちゃんが出演。こうして同じ画面をみていたことを共有できるのが配信のいいところですね。

 べーちゃん、15日と16日に博多座の越路吹雪さん40回忌コンサートに出演予定。福岡県が緊急事態宣言に追加される見通しとなったとの報で、どうなるのかすごく心配です。お稽古しているのに、直前に中止とか客席半分とかありえないです。無事に上演されることを祈っています。べーちゃん、もっと舞台に出てほしい。

越路吹雪40回忌コンサート『Après Toi~アプレ・トワ』
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/619588a92c2b25eb13563f6e51ea2dc5