アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

トラップ一家、映画と現実の間

2016年05月25日 | 生活
先日は「Climb Every Mountain」の伴奏させてもらったりしましたが、そのずっとずっと前からサウンド・オブ・ミュージックは大好きで、何度見たかわかりません。

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曲もいいし子どもたちはかわいいし、わくわくはらはらどきどき、映画の「お約束」もバランスよく詰まってて、最後はスリリングな脱出劇。

見て楽しむ立場からいえば、映画として出来がよければ中身がフィクションでもちっとも構わないわけですが、このミュージカル映画は「元(現実のトラップ一家)」がいると聞いてへーそりゃすごいなと思っていました。自分がコドモのころは、元がいるといってもそりゃ映画上の都合で作り事がいろいろ盛られているであろうことには特に関心がなかったわけですが、大人になるにつれて、いくらなんでもこれは現実と違うんだろうというところはいくつか気づいてきますよね。

たとえば、修道院に一時かくまってもらってから一家が逃げていくとき、追手が発車できないように修道女さんたちが車の部品をぶっこぬいているとか(!) マリアが来てから歌を教えてみんないきなり上手とか(^^;; そりゃありえん

ちょいとぐぐれば、最後あのような脱出劇はなくて、国境は列車で越えたとかいうことはわかります。でももっと詳細を知りたいなぁと思ってたので図書館で見つけて
「わたしのサウンド・オブ・ミュージック」(アガーテ・フォン・トラップ(*)、東洋書林)
(注、アガーテはトラップ一家の長女)
を借りてみました。

すると、ナチの青年とトラップ一家の長女との淡い恋愛がそもそもなかったとか…映画では時間が縮められて新婚旅行から帰ってきて即逃げたみたいな話になってますが実際にはその間に何年も経ってて子どもも二人新たに生まれているとか…まぁいろいろ違います。けどそのあたりは映画でありがちな整理もしくは脚色として、見るほうだって信用しないで(笑)見ていますよね。

むしろ、私はこの本を読んで、思った以上にちゃんと元ネタがあったというか、事実は小説より奇なりというふうに感じました。

二人目のお母さん(マリア)が家庭教師として修道院から派遣されたことは事実、到着時、彼女が珍妙な服装をしていて鞄とギターを持っていたことも事実、彼女が修道院で「問題児」だったことも事実、もうひとつ驚いたことには、お父さんが呼笛で子どもたちを集めたのも事実でした!!

あんなのこそ、映画的な脚色だと思ってしまいますけど…

もっとも、呼笛は映画で描かれていたような意味合いはなくて、お父さんは変に厳格な人だったりするわけじゃなくてちゃんと慕われていたし、音楽も教えてくれた(いっしょに楽しんでくれた)人なんですよね。ただ屋敷が広いからどなって呼ぶわけにもいかないってことで。

それと、映画では一家が屋敷から逃げ出すときに、執事が密告していたような雰囲気になっていますけど、これがまたびっくりすることに、長年いた執事はナチ党員だったのです。ただし、オーストリアが「併合」されたときに早速彼はトラップ一家に、自分はナチ党員であるから聞いたことは密告しなけりゃいけないので、食事のときの会話には留意するようにと伝えてくれたばかりか(←そんなのあり??)、いよいよ危なくなってきたときには、もう逃げないと本当にマズいということを教えてくれたのです。その結果、スレスレで国境封鎖前に脱出できたのですから、むしろ命の恩人ですね。

思うに、映画を作るときというのは、事実から最大限いろんなピースを借りてきて、それを自在につなぎ合わせて追加のフレーバー(ロマンスとかスリルとか)をトッピングするというのがセオリーなのでしょう。そういう意味でよくできた作品ですし、脚色があることくらいは一家も承知だったでしょうが…

この映画のことはとても嫌がっていたということです。国境を徒歩で越えたような演出などはともかくとして、最大の問題点はお父さんの描かれ方がダメダメだったことでしょう。それはとりわけ許せないことであったに違いありません。

この本の中には、そのあたりについてこのように書かれています。
「実名が使われているのに、わたしたちの生き様が正しく描かれていないのがわかったとき、わたしはミュージカルも映画も一度見たらもう、二度と見る気になれませんでした。わたしの大切な思い出を奪われたくなかったのです。」

ただし、このようにも書かれています。
「長年の間、わたしは多くの人々から、あのミュージカルや映画がどんなにすばらしい喜びや刺激を与えてくれたかを聞かされてきました。そしてやっと今、わたしは『サウンド・オブ・ミュージック』と仲直りすることができました。
「この映画を批判するわたしはいったい何様だというのだろう?」
長いこと、心の中にもやもやしたものをかかえてきましたが、わたしはやっと、映画の物語と自分の大切な思い出とを別々に考えられるようになったのです。細かいことは事実と異なっているとはいえ、『サウンド・オブ・ミュージック』の制作者は、わたしたち家族の人生を貫く精神には忠実でした。」

つまりこの映画がもたらしたものはマイナスにもプラスにも大きく、けれどマイナスというのは当事者に。プラスというのは全世界に。しかしこういうことはトータルプラスならよいって話ではないとすれば、ほんとに何といってよいかわかりませんが、全員ではないにせよトラップ一家の一部の人が、そのような気持ちの雪解けまで至ってくれたことはよかったなと思います。私としてはただこの映画との出会いに、そして国境封鎖前にトラップ一家が脱出できたことに感謝します。


(*) このアガーテさんは歌えて絵が描けて衣装が縫える多彩な人なのですが、語学の才能がありそうだということで、フランス留学の話が進められていたのです。ところが滞在先の都合でぽしゃり、その代わりに英語の通訳コースに通い、優秀な成績を修めたのでした。そののちアメリカへ逃げるのですから、これはほんとにすばらしい偶然でしたね。

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コメント (3)
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