アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

弘法筆を選ばず(リヒテル)

2018年04月15日 | ピアノ
らららクラシックでリヒテルを取り上げた回があったのだけど、そこで紹介されたリヒテルの言葉
「私は決してピアノを選ばない」
「悪いピアノはこの世にない 演奏者が悪い」

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…まさに「弘法筆を選ばず」ですね。優れたピアニストであっても、そういう人ばかりではないと思うのですが(マイピアノとマイ調律師を連れて歩くような人もいるでしょ)、リヒテルのポリシーなのか、あるいは弾き方の傾向によっても違うのか。

映像を見ると、ものすごいパワフルな弾き方で、なんでも「指をねじ込むように、鍵盤の下から指が突き出るようなイメージで弾け」と言ってたということなので、多少状態の悪いピアノでも「ねじ伏せる」ことができたのか…

でも「大きな音を大きく叩くことは誰にでもできる 美しく響くピアニッシモを弾くことが大事(そぎ落した芯の音を)」とも言っていたようなので、そういうときにピアノの状態が気にならなかったとは思えないんだけど。

リヒテルは日本が気に入って何度も来日してコンサートしてるんだけど、そのときに調律を担当した村上氏によれば、
最初はどういうのが好みかわからないから基本に忠実な調律をして、コンサート後リヒテルに「ピアノどうでした?」と聞いたら
「よかったよ でも私には易しすぎた(too easy)」といったとか。

それで、「もうちょっと重いのがいいのかな?」と想像して、
鍵盤の下の紙を一枚を取り除いた

そしたら次のコンサート後、弾き終わってすぐ大喜びでハグしてくれた、と。

ピアノの好み、あるじゃん(^^;;

「ピアニストにとってピアノを選ぶのは有害だ
心理的な重圧になる」

「私は調律師やスタッフを信じている」

「ピアノを愛するより音楽を愛するよ」

こんなことも言っていたとのことなので、ピアノの状態がどうでもいいというよりは、ピアニストはどのようなピアノが与えられてもそれをちゃんとコントロールすべき、ピアノについてどうこう言うより音楽に専念すべき、というようなポリシーだったのかも。

一方、ピアノの状態に左右されまくって、このピアノだと弾けないとかぐだぐだぐだ…いいまくる私としては、ただただリヒテルさんすごいとは思うんだけど。
そもそもピアノを弾くことよりピアノという楽器自体が好きなタイプだし趣味ピアノなので
これからも思う存分ピアノのえり好みをさせていただきたいと思っております(^^;;

ところで「鍵盤の下の紙一枚を取り除く」とどうして重い弾き心地になるのかって話だけど
この動画が参考になります→鍵盤の高さ調整-ピアノの修理・調律・再生

紙のところというのは、鍵盤パーツが乗っている「支点」のところの高さを調節してます。
これが低いと、鍵盤押し下げから底に着くまでの距離が短くなって、その短い距離のうちに加速してハンマーを押し上げないといけないので重く感じるのだと思いますが
こんな微妙なとこで影響されるんだよね…おもしろいよね

これが揃ってないピアノは超弾きにくいです。それとリヒテルさんにはtoo easyだったりする軽いのが好きです。弘法じゃないので筆を選びます。



(追記)
アルフレート・ブレンデルさんは真逆のこといってるらしい

「調律師の頼りなさと無関心は、多くの場合ピアニストの
無知に原因がある。

ピアニストは、ピアノのどんなところが良くないのか
はっきり感じとって、言葉に出すことができない。

多くのピアニストは、コンサート・グランドからどの程度の
ものを期待できるかということさえ理解していない。

まるでピアノ会社がその無知を利用して、時おり驚くほどの
欠陥が最初からあるものや、「歯並びの悪い」鍵をもった
楽器を発売しているような気がする。

こういう視点から見ると、「悪いピアノというものはない。
ただ悪いピアニストがいるだけだ」という説は、
ピアノ技術が衰えかけていることから注意をそらせようと
するピアノ販売者のモットーのように思われる。

A.ブレンデル著/岡崎昭子訳『楽想のひととき』(音楽の友社)」(「みんなの☆ピアノ選び」より)


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コメント (2)
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