カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第四十二景・薄紅の贈り物

2019-02-19 20:56:49 | 桜百景
たかあきは、朝の友達と桜の髪飾りに関わるお話を語ってください。

 一年前、満開の桜並木を登校中に突風が吹いて友達の髪に桜の花弁が降り注いだ。友達は癖毛だったので絡み付いた花弁を取るのが大変だったが、淡いピンクが髪飾りのようだと仲間内で受けて友人は機嫌を直した。そして今年も一緒に同じ桜並木を登校中に、今度は突風と共に容赦なく毛虫が降り注いできた。
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第四十一景・桜葉の骨格

2019-02-18 23:58:35 | 桜百景
たかあきは、秋の故郷と桜の葉に関わるお話を語ってください。

 田舎の実家には大きな桜樹があって主に祖父が手入れをしていた。ある晩秋の日、祖父が落葉した桜葉を袋にまとめているのを見て、堆肥にするのかと尋ねると、桜葉は一年くらいでは組織が崩れないので堆肥にするのは向かないと言われた。だから逆に葉っぱの繊維だけを残すと綺麗な葉脈標本が出来るのだ。
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骨董品に関する物語・天文系のステレオグラム

2019-02-17 18:50:30 | 突発お題

 立体視で見える星たちはあんなにはっきりした姿をしているのに、指を伸ばすと即座に姿を消してしまうのが不思議で仕方なかった。すると父さんは、目に見えるものが全て触れるわけではないし、逆に目に見えず触れないものでも、確かにそこに存在するものだってあるんだよと言った。
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骨董品に関する物語・スカルペンダント

2019-02-17 13:50:37 | 突発お題

 ずっと昔、この辺一帯が火事になった時に祖父は僕の目の前で燃えましたと男は言った。神に愛されのるに相応しい聡明で家族思いな素晴らしい人でしたが、それでも焼け焦げて骨になったのですと薄く笑った男が立ち去った後には精巧な骸骨のペンダントが残されていた。慌てて周囲の人間に男の事を尋ねるが誰も知らないと言う。また、この地域が大火事に見舞われたことはなく、強いて言えば先の大戦中に空襲を受けた事がある程度だそうだ。
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骨董品に関する物語・ソーイングセット

2019-02-16 11:56:30 | 突発お題

「ふと思ったんだが、裸の王様を裸だと叫んだ子供に対してブチ切れた王様が子供やその親を厳罰に処した場合、愚か者は一体誰ということになるんだろう」
「そこまでややこしい事情は子供に聞かせる童話で云々しなくてもいいと思う。どうせ誰でもいずれは現実の理不尽を知る」
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第四十景・雪桜

2019-02-15 22:57:44 | 桜百景
たかあきは、粉雪の忘れ物と桜の幹に関わるお話を語ってください。

 冬のさなか、お祖母ちゃんが病室の窓から桜の花が見えるよと嬉しそうに指さした。視線を向けた先には雪化粧した桜の枝が付近の赤信号のライトに照らされてほんのり紅色に色付いた姿があった。綺麗だねと笑うお祖母ちゃんに私も笑いかけたが、結局お祖母ちゃんはその年の桜を見ないままいなくなった。
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骨董品に関する物語・青い毒薬瓶

2019-02-15 21:08:48 | 突発お題

 移ろい易い青色は死によってのみ、その美しさをこの世に留め置く事が出来る。死んだ硝子の瞳が示す青に魅せられた自分は持ち主の死によってそれを手にする事が出来る。お嬢さんは美しいが死んだ瞳の青には及ばない。などなど縛られた私の前でほざく男の与太話は私の後を追ってきた刑事さんの殴打と、隙を見て男が呷った青い瓶の中身によって止められた。
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骨董品に関する物語・アールヌーヴォーの印章

2019-02-14 20:53:02 | 突発お題

 爺さんが皆に惜しまれつつ大往生した時、俺は頭文字が同じという理由で優雅な印章を貰った。正直なところ使い所に悩んでいたら、最近切手を集め始めた弟が買ってきた大量の古い手紙に捺印されているのに気付いた。それは爺さんが書いた熱烈な恋文で、宛名は知らない女性だった。つくづく、俺が酒を飲める年になるまで爺さんが生きていなかったことが悔やまれる。
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第三十九景・風車のある光景

2019-02-14 20:48:50 | 桜百景
たかあきは、風の玩具と桜の幹に関わるお話を語ってください。

。その桜の幹には何故か風車がくくり付けてあって、風が吹くたびにカラカラと音を立てて回っていた。誰が何の為にそんなことをしたのか知る者はいなかったが、誰も風車に触らなかった。ある日、酔っ払いが風車を引き抜いて地面に叩き付けて踏みにじり、ばらばらに壊してしまったが、次の日には新しい風車が回っていて、以来酔っ払いは行方不明だという。
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第三十八景・消えた家族と桜餅

2019-02-13 23:21:13 | 桜百景

 昔から両親は僕に対して殆ど興味を持っていなかった。虐待もされず相応に手をかけて貰ったことは認めるが、それは親としての義務を果たしているだけだと思っていた。そんなある日、桜餅を頬張った直後、桜餅が好きだった今は写真すら残っていない双子の兄が僕の目の前で車に轢かれたのを思い出した。
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