カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第三十五景・緑色の思い出

2019-02-10 21:05:19 | 桜百景
たかあきは、初夏の家族と桜の狭間に関わるお話を語ってください。

 新緑の頃、家族で温泉旅行に行った。海が見える旅館に泊まってみんなでお風呂に浸かり、テーブル一杯に並べられたご馳走を美味しいねと食べて、とても楽しかった。だから、みんなが僕だけを残していなくなってしまった事がどうしても信じられないまま、喪服姿のまま僕は並木道を何度もみんなを捜して駆け抜けるのだ。
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骨董品に関する物語・日時計のペンダント

2019-02-09 21:04:46 | 突発お題

 最近引っ越した森の中の古い家には、たまに濃霧に紛れて妙な迷い人が訪れる。時代にそぐわない恰好をした奇妙なお客は大体うちの客間で一休みしてから帰って行くのだが、この前は日が翳って時間が分からないと困ったように丸いペンダントを掲げた男が現れたので、置き時計で時間を教えてやったら驚かれた。
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骨董品に関する物語・クリスタルガラスのインク壺

2019-02-09 21:02:45 | 突発お題

 昔はインク屋なる商売があって、樽に詰めたインクを背負って各家庭を訪問しては量り売りをしていたそうだが、まさか二十一世紀になってインク屋の訪問を受けるとは思わなかった。それでも深い青色に惹かれたので、たまたま空だった小振りのペットボトル一瓶分を購入したが、中々使い勝手が良かったので出来ればまた売りに来て欲しい。
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第三十四景・春の記憶

2019-02-09 21:01:10 | 桜百景
たかあきは、小糠雨の哀しみと桜の骸に関わるお話を語ってください。

 桜が咲く頃は大体において天気が不安定で、せっかく咲いた桜が寒空の雨に打たれて無残に散り急ぐことも珍しくない。珍しくないはずなのに、僕の桜の思い出と言えば殆どが淡い雲の浮かぶ薄青い空に映える薄紅色の霞が広がる穏やかで優しげな光景ばかりで、それは多分凄く幸せなことなのだと思っている。
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骨董品に関する物語・アイルランドのベリーク窯、ネプチューンシリーズのトリオ・その2

2019-02-08 23:15:42 | 桜百景

 海神の側近を助け、恩恵として祝い用食器を海神から借り受ける村があった。海神の気性の荒さを知っている村人は食器を大切に扱ったが、ある日不心得者が食器を村の外に持ち出して売ってしまった。やがて食器が高値で売れた不心得者が上機嫌で戻ると村は跡形も無く流されていた。
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骨董品に関する物語・雄牛の印章

2019-02-08 23:14:42 | 突発お題

「黒い雄牛……」
「何を言いたいかは大体理解したから黙れ」
「しかし黒い雄牛も鉄人の28番目も、現代では立派な骨董品だと思うが」
「アレは売り物じゃ無い」

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骨董品に関する物語・ガラスの印章

2019-02-08 23:13:16 | 突発お題

 彼は生涯でただ一人愛した妻の姿を印章に彫らせ、常に傍らに置いて封緘の証とした。ただ不満なのは、印章の女性を見たものが誰一人としてそれを彼の妻だと認識してくれないことだった。妻は確かに反っ歯で三白眼だったが、彼にとっては印章と瓜二つの美しい姿に見えていたのだ。
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第三十三景・積み木遊び

2019-02-08 22:09:02 | 桜百景
たかあきは、厳冬の故郷と桜の狭間に関わるお話を語ってください。

 小さい頃に積み木が欲しかったが高価すぎて買って貰えず、代わりにプラスチック製の平仮名と絵が描かれたブロックを貰った。ブロックはブロックとして散々遊べたので不満は無いが、以来、積み木は玩具で遊ぶ歳を遥かに過ぎても消えることの無い憧れの玩具となった。そして現在、旦那は私のお腹の子が遊ぶだろうと貰ってきた桜の廃材で不細工な積み木を作っている。
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骨董品に関する物語・マリンブルーのロザリオ

2019-02-06 21:11:46 | 突発お題

 聖母マリアが我が子を連れてヘロデ王の追っ手から逃亡している時、茂みに白いマントを掛けて休んだところマントが茂みに咲いた花と同じく青い色に染まったという伝承がある。染色を学ぶ友人が死ぬほど羨ましがったエピソードだが、お前がやっているのは藍染めだろうと突っ込みたい。
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骨董品に関する物語・コバルトブルーのロザリオ

2019-02-06 21:10:12 | 突発お題

 昔ある占星術師に聞いたのだが、サファイアは守護石として最強の存在らしく英国王室のエンゲージリングもダイヤではなくサファイアが使われている。ただし、最強はしばしは最凶に繋がるのが世の常で、サファイアの語源はサンプリア(悪魔の貴重品)だと言う説もあるそうだ。
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