よく見ているBlogやHPで、なぜか最近しばしば目にした建物。
旧東京市営清澄庭園店舗向住宅
所在地:江東区清澄3-3
建設年:1928(昭和3)
構造・階数:RC・2F
戸数 :計48戸
Photo 2006.9.9
旧東京市営清澄庭園店舗向住宅は、清澄庭園の東側に張り付くように建っている一連の建物(Google Map)。店舗向住宅は1階が店舗で2階が住居というもので、関東大震災復興事業の一環で建設されたものだという。建物の来歴については下記関連リンクにおよそ載っているようなので、私は省略。
今回は連続立面写真を合成して作ってみた。なぜかトラックがたくさん路上駐車してしまっていて、一階部分がかなり隠れてしまっているが、連続する様子はおよそわかって頂けるかと思う。
さてこの建物、6軒程度ずつが一つの建物になり、庭園の外縁に沿って長屋状に建ち並んでいる。当初は東京市営で賃借だったらしい。現在は都営というわけではなさそうなので、戦後あたりに払い下げかなにかになったのかも。だからかどうかわからないが、三階にプレハブで増築したり、ファサードをかなり改装したものも見られる。でも全体としてのまとまりがまだ十分あるのは貴重。
写真中央付近と、左方、そして左端の三ヶ所で建物が完全に途切れているが、これは近年になって取り壊されて、空地になった部分。歯が抜けたような部分がなければもっと連続性があって、見事だったのではないかと思われる。
一階は店舗としていろいろ改装されているので、当初の面影が残る部分は少ない。二階の窓も改変されているものが多いが、それでも縦長の窓が3つずつ並ぶ外観が残るものもいくつかある。また軒先やパラペットのラインが区分を越えて水平につながっており、これが全体に統一感をもたらしている。
一階と二階の間の壁面は店の看板を掲げるスペースだったのだろう。現在は商店の看板が付いている所は少ない。だが当初、様々な店舗の看板が掲げられている様は壮観だったに違いない。
それぞれの持ち主が改修を行っているため、色は一軒ごと少しずつ異なってバラバラだ。ただ全体にはややくすんだ淡い色が多く、多少のバラツキはあるが、一定の範囲内に収まっている。
この建物は一体的に建てられたため、基本的な構造が共通で、形のベースが揃っている。例えば間口が一定で規則的だし、窓も細かい部分は異なるが、大きさや位置は揃っている。軒先のラインや階高も全て一筋通っている。
一括して建物を建てるのでなく、別々に建てる場合でも、建物の規模や外観の要素を大体揃えるようにすれば、統一感は生まれるだろう。一階部分のデザインが店によって多少バラバラになるのは仕方ない。共通デザインを強制すると、生活感がなくなってしまうし使いづらかったりするので、むしろバラツキは許容すべきで、緩やかな共通デザインコードのほうが結局は良いのだろう。
この建物群は、片側二車線の比較的広い道に面している。路地や小道のような狭い場所に面しているのでなく、引きのある場所で見渡せるため、立面的に連続する一連の建物を眺めることができる。また庭園が背後に控えていて敷地の奥行きがあまり無いことは、高層建物への建て替えにつながらず、低層の長い街並みを存続させている。
建設の経緯なども考えると、やや特殊な例なのかもしれない。だがここには、街並みの一体感や連続性を創るにはどうすれば良いのかという問いに対する、いくつかのヒントがあるような気がする。
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