高田馬場には以前、有名な広告塔があった。
スズヤと高田馬場駅
所在地:新宿区高田馬場4-6
Photo 1990.6 高田馬場駅前のFIビル屋上から撮影
写真でも分かるが、スズヤには大きな広告塔が載っていた。中央は扇形で、その両側は塔状。夜になるとネオンサインが点灯し、めまぐるしくそれらが動いて、ド派手だった。
上写真の一部
ダイヤ・買入、金地金・金融、質の文字が読み取れる。この他小さい字で、楽器、毛皮、骨董、株券、利息月3分より、の文字も見える。学生には金地金などは無縁なので、最初のうちはこれを正しく読めなかったりもした。
写真では判別しにくいが、扇形のネオンの根元あたりには、相撲取りと外人のグラマーなお姉さんの人形があり、なぜかそれが相撲の立ち合いのように睨み合っていた。しかも、この2体の人形は睨み合ったままグルグル回っていたような記憶がある。どうしてそんなものが質屋の広告塔として屋上に掲げられていたのかは謎だったが、早稲田の学生ならみんなが知っている高田馬場名物だった。ただ、広告塔は巨大だったが、足下にある質屋本体の建物は昔ながらの木造建築だったように思う。不釣り合いに巨大な広告塔がついた建物だった。
この写真は、先日記した設計課題を行うために、高田馬場駅周辺の全体像が見える場所を探して、FIビルの屋上にたどり着いて撮ったもの。今では多分無理なんじゃないかと思うが、当時は意外に簡単に屋上に出られて写真を撮ることもできたのだ。
JR山手線のホームから見ると正面にあり、山手線外回りの電車を待っていると、嫌でも目に入る広告だったが、当時は単に派手なネオンだなぁぐらいにしか思っていなかった。その頃も写真を趣味的に撮っていたので、ネオンが全部点灯する瞬間はあるのかなぁなどとは思っていたのだが、それぞれの広告塔の点滅サイクルが微妙に異なっていて、全点灯の瞬間はなかなかやってこず、そうこうする内に電車が来てしまうのだった。
今のように手振れ防止機構がカメラに付いているはずもなく、ホームで三脚を立ててじっくり撮るほどの興味がなかったこともあって、ネオンサインが点いた夜景は結局撮らずじまい。いつのまにか建物は建て替えられ、ネオンサインも無くなった。今となっては、あのド派手なネオンを撮っておかなかったことが後悔される。
スズヤ広告塔 直下からの見上げ
Photo 1990.6
広告効果が大きかったのか、今では5階建てのビルを新築したが、広告の重要性については、現在もかなり意識しているようで、新しいビルも屋根に水が流れ、滝のある意表をつく建物となっている。日中から夜にかけて水がずーっと流れているので、シャーッという音がし続けているのだが、終電の頃になると、照明が消えて水も止まる。ずっと聞こえていた音がやみ、あたりが少しだけ静かになると、ずっと水が流れてる音がしていたのかと改めて気づかされる。どうでもいいことだが、妙な存在感を今も持ち続けているお店である。
Tokyo Lost Architecture
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